当たり前の幸せを

紅蓮の焔

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一章 泡沫の夢に

33話 『人』

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 カチャカチャ……

 カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ…………

 誰も、何も話さない。喋らない。言葉を発しない。
 ずっと、暗い。
 静かで、あの時のような笑顔は既にそこには無かった。

「レ、レイくん! 今日は何か良い事あった?」

 ネネさん。多分、気を遣って話してくれている。
 だけど──、

「ネネさん、今日ね、ノリっちがテストと普通の授業を勘違いして体操服を持って来てたんだよ!」

 話そうとしても、レイカちゃんが先に話す。
 だから、僕が話す隙が無い。
 こうして、どこか避けられている気がする。
 違う。避けられている。
 何か話したくても、話させてくれない。
 それはそうだと思う。
 僕だって、レイカちゃんみたいに思ってたらその人を見たくもない。と、思う。

「ご馳走でした」

 立ち上がって、部屋に戻った。
 あまり居たくなかった。
 今はベッドの上で三角座りをしている。
 居心地が悪い。
 ……ダメだ。
 これじゃ、前と同じだ。
 しっかり前を向いて──…………出来ない……。
 出来るわけないじゃないか。
 ミズキさん……。
 ミズキさん……。
 ミズキさんが、幸せに、なってくれなきゃ……僕たちは、幸せにもなれない……。
 ミズキさん……、戻ってきて下さい……。
 お願いします……。
 僕じゃ、何も出来ない……。
 悪くしてしまうだけで、何も出来ない……。
 ……ミズキさんは凄いよ。誰とも仲良く出来て、なんでも出来て……気も配れて、僕には、到底無理だ。
 その、僕には到底無理な事もミズキさんは凄く簡単そうにこなしてしまう。すごい。凄すぎて、僕には絶対に無理。

「凄いな、ぁ……!?」

 ……まずい……。また、誰かに見られているような感覚が……。だけど、今は……どうでも良い。怖い……怖いけど……、気持ち悪いけど……なんか、どうでも良い。……その程度、どうでも良いや。どーでも良い。うん。ヤバい、今まで何思ってたんだろ。笑える。クッソ笑える。

「くっくっくっくっ……あーあ……もう、どーでも良い。あー、疲れた。もう嫌だ。何してんの俺? 馬鹿じゃね? 笑える」

 何? 関係修復? 知らね。どーでも良い。どーでもいい。なんで関係修復なんかしようとしてんの? わけわかんねーよ。何? ミズキの為? ざけんな。こっちはこっちで俺の人生があんだよ。誰かの為とか知らね。俺は俺の好きなように生きる。うん。どうせ皆いつかは死ぬんだよ。だったら楽しまなきゃ損だ。損ソンそん。誰かの為とか偽善、クッソ。クソだ。つまんねー。人生楽しく過ごさなきゃクソだ。誰かの目を気にするとか、誰かの為だとか、知らね。の事で俺の人生潰すんじゃねーよ。バーカ。あーあ、今までの俺の人生クソだな。クソクソ。何? あのクソな不良品。俺を傷つけてんじゃねーよ。大体アソコに居たやつ全員クソだな。クソ。ここに居る奴もクソだな。人の事ばっか考えて、何? アホか。アホの集団か。あー、ねむ。ねよ。どーせつまんねーし。だけど、あの不良品は、次会った時ブチ殺す。


※※※


 あ? どこだここ? 白黒じゃねーか。地面は白くて? 空は黒。向こうに金髪のガキ居るし。

「あ、レイ」

 誰だよお前。なんか、お前を見てるとイライラしてくるんだけど?

「レイ?」

 なんだろーな。どっかで会った。そうそう。どっかの家のベッドで寝てたろ。えーと? 何? あーなんか思い出しそー。………………ぁっ、そーだ。思い出した。んで、ここどこ? あと、お前はなんで居るんだよ。消えろ。

「レイ? 変、だよ?」

 うっせーな。殺すぞ。

「ねえ、レイ? 大丈夫?」

 手ぇ触んじゃねーよバカ。

「レイ、なんか、怖い、よ……?」

 黙れ。いい加減にしろよ。大体な、姉妹だかなんだか知らねーが俺に指図すんな。嫌いなんだよ。お前みたいなの。

「さ、指図、してない……」

 あ? なんだ? 俺が間違ってるか? ああっ!?

「ごめん、なさい……」

 分かりゃ良いんだよアホが。んで? その話し方、気持ち悪いからやめろ。普通に話せ。

「これが、普通……」

 んな訳ねーだろーが! それがふつーなら俺はどーなるんだよ! ああ!?

「やっぱり、レイ、だけど、違う……」

 知るかよ! だから、ふつーに話せって、言ってんだろうが!
 ……あ? なんだ? なんか、色が変わって……て、おい! 待てよ!

「怖いレイ……嫌い……」


※※※


「……あれ? 僕、いつの間に……」

 なんだか、頭が痛い。
 凄く痛い……。
 まだ、三時なんだ。
 じゃあ、大丈夫。
 だけど、目が冴えた。
 少し、外に出よう。
 眼帯……あれ? 着けたまま? おかしいな……。いつもは枕元に置いてるのに……。
 今日は、ミズキさんの『直葬』だ。これを、お葬式と呼んで良いのかは、よく分からない。でも、お葬式が無いお葬式がこれだから……やっぱり、よく分からない。
 お昼からだから、テストが終わってすぐに向かう事になっている。
 まだ少し泣き癖があるみたい。
 涙が出てきた。
 ミズキさん……。
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