復讐の慰術師

紅蓮の焔

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17章 もう、後戻りは出来ないから……

293話 出発し決行へ

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勧誘? お願い? も終わり、レンゼはとある集合住宅の部屋の前で壁に凭れて大きく溜め息を吐いた
「む? どうしたのかね?」
「いえ……なんでも。ただ──」
そう言いかけて首を振って項垂れる
「いえ、やっぱりなんでも……」
「お待たせしました。それでは行きましょう」
レンゼとレインの間に挟んだドアから白髪はくはつの女性が出てくる。ただ、客観的に見れば容姿端麗だが、声が小さ過ぎる分相手に伝わらない。それはレインにも適用されたようで首を傾げた
「どこに行くのだろうか?」
「いえ、もう出発みたいです」
「もう出発か……確か、人造人間ホムンクルス……だったかな? あのプライドとか言う少女もそう言っていたが……」
「今回はその親に当たる者達です。十分に注意して下さい。お願いします」
ほう……。と少し感心したように息を吐き、レインもゆっくりと立ち上がった
「では、行こうか。レンゼくん」
「……はい。終わらせましょう。全てを」
小さく頷き合うと階段の前で立ち止まり振り返っているサラの方へゆっくりと、しかし、しっかりと歩を進めた


同時刻、日が高く昇り少しずつ頂点に近付こうとしている頃、某デパートの中では騒ぎが起こって人の波が出入り口へ向かおうとしていた
「どうした? 何があったんだ」
その中で店を開いている一人の男が近くの男に声をかける
「それがですね……そこの男が人を殺したみたいなんすよ」
「こんな人目の付く所で?」
「はいっす──」
そう言うと同時に人の波が消え、話し掛けられた男は、ほら。と指を指す
その先には軍服を身に纏った男が二人と左手にナイフを持った男が一人、軍服を纏った内の一人は真紅の液体を金色こんじきの頭から滴らせ、もう一人はまだ経験が浅いのか、顔にシワが無く、拳銃を胸元から少し覗かせているにも関わらず涙を目に溜めて尻餅を着き、首を左右に振りながらナイフを持った男を見上げている
「止めるぞ。これ以上騒ぎを起こされたら客が二度と寄り付かなくなる。逃げ出したのが、見たのがこの階の奴らだけで良かった。行くぞ」
「は、はいっす!」
小さく頷くと男二人はナイフを持つ男へ走って行った
「おい! 何してんだお前!」
「あ? るせぇよ。クソが……」
走り出した男の方へ振り向くと右腕を前に突き出すように伸ばした。その手には拳銃が握られている

ダンッ!

「……あ、れ……?」
段々と動きが遅くなり、立ち止まると体を見回して何かを確かめる
「なんとも……ねえ?」
「……さて、聞かせてもらおうか。あのことを」
今度はナイフを軍服を着ている男にその切っ先を向ける
「お、俺は知らないッ! 本当だ! だっ、だからッ、頼む! 俺には明日結婚する妹が──」
「なら聞くが、明日、弟が出来るはずだった女の子をお前らはどうした? 明日、結婚するはずだった男をお前らはどうした? あの時、漸く家を建てれた奴を、明日を夢見た奴をお前らはどうした? 明日結婚する妹? ッザケンじゃねえ!」
倒れている男を跨いで座り込んでいる男の胸ぐらを掴んで切っ先を右眼の前に突き付ける
「てめぇの事なんざ知るか。てめぇは、てめぇらは人を殺した。ただ、身分が違う。住む場所が違う。お前らは自分の都合の為だけに何もしていない子供までも手に掛けたんだ……。いや、何もしてなくはない。実質、あの街で治安を護ってたのは子供達だ。その子供達をお前らは殺した。死ね。死ね死ね死ね……。死んで詫びろとは言わねぇ。いっそ苦しみ悶えて泣き叫べ。ただただ苦痛に悶えろ」
そう言い、右眼にナイフを突き刺す。刺された男は咄嗟に右目を閉じ、まぶたが切れ、両手でその腕を掴んで抵抗しようと試みるが、それと同時にナイフがゆっくりと横向きに回転する。切れた瞼がゆっくりと開かれ、血が流れ、眼球からドロッとしたゲル状の何かが切れ目とナイフの間から少しだけ出る
「ッァァアア…………ッッ!」
「おらおら、どうだ? 痛いだ──」
めろってさっきから言ってるだろうが!」
刺して笑みを浮かべている男の肩を掴む。撃たれた男はその場に倒れ寝息を立てていた。肩を掴んだのはその隣に居た男だ
「うっせぇ。お前は関係ない」

ダンッ

またもや銃声が鳴り響き男が撃たれる。男は何かに気付いたように体を見回して服を捲り上げた。男の腹には小さく、細い棒が刺さっていた。男の前には銃弾が一つ転がっている
「ッ……くそっ、なんだこれ! 取れねぇじゃねえか! 小さ過ぎて全然取れねぇ!」
「さて……じゃあ続きを──」
男は突然黙り込んで舌打ちをするとナイフを引き抜き、既に倒れている男の衣服でナイフに付着した液体を拭き取り胸元に仕舞う。じゃあな。そう言い残し、周りが茫然とそれを見守っている中、窓の方へ走って行き胸元から別の、拳銃のような物を取り出し窓を開けると引き金を引く。すると本来、銃口がある筈の箇所から何かが飛び出しワイヤーに繋がれている
それは隣の建物に突き刺さり男は窓から飛び降りる。キュルルル……と音を立てながら地面に着地する寸前で建物からそれが外れ、ワイヤーが縮んでいきそのまま走り去った
「……まずっ……急に、ねむ、け、がっ……」
事切れた人形のように死体の隣りに倒れ込んだ
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