復讐の慰術師

紅蓮の焔

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12章 放浪

174話 アーガイルから西の森で

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「ヒールゥ…疲れたな…」
「ナ~」
西に歩いて行く事数時間。どこかの森を西に突っ切っていた
「コンパス買ってて良かった~…」
軽いノリで歩いていると既に紅い斜光が辺りに反射して森は翠ではなく朱に染まっている中で風が吹いた
「ふぅ…そろそろ休憩するか…」
額の汗を拭って近くの木に凭れて座ると、鞄から水筒を取り出してゆっくり飲む

ゴクッ…ゴクッ…

「ぷは~!」
水筒の蓋を閉めて鞄の中に入れると一度伸びをして筋肉を軽くほぐすと立ち上がってコンパスを確認した
「よし。こうやって休憩出来るのもコンパスのお陰だなぁ…」
コンパスの素晴らしさを実感しつつ再び歩き出した


日も暮れて夜になり始めると、途端に寒くなり始めて身震いした
「今日はここで寝よっと…!」
新品の寝袋を鞄から取り出し、一度木に凭れて保存食、缶詰をナイフで切って開ける
因みにアーガイルに行く前に食べていた缶詰の蓋はどうしたかと言うと…石でかち割ってぱくぱくと摘んで食べていた


食事を済ませるとナイフを納めて小道具入れにコンパスを入れ、枕にして眠った


『何やってるの?』

ん? ああ、本読んでる

『ふーん…ね! 遊ぼ~よ~! 良いでしょ~?』

後で

『遊ばないと擽ってやる~!』

分かった分かった! だから落ち着けって!

……

…………

……………………

ニャ!

「いだっ!」
頭を引っ掛かれ、頭を押さえようにも寝袋が邪魔して上手く動けず、芋虫のようにくねくねとしていた
「何!? ヒールゥ俺に恨みでもあるの!?」
最近、強くなってきた引っ掻きに目尻に涙を溜めて落ち着いてから寝袋から出て頭をさすると手に赤い液体が付いた
「ヒールゥ…やり過ぎだよ…」
「ナ~」
(こいつ…最近俺への扱い雑になってなくない?)
頭の上で丸まっているそれを感じると頭からツーッと左目に垂れてきた
最初は眉毛で防御されたがすぐに突破してレンゼの左目に垂れてきた
「…やっぱりやり過ぎだ…」
血を拭って朝食を取ると大きく伸びをした
「え~と…」
鞄の中からコンパスを取り出して寝袋を入れると肩にかけて西に向かって歩き出した
「何も変わらねぇなあ…どこを見ても木ぃばかりだ…ハァ…」
溜め息を吐いて数時間歩いていると疲れ始め、休憩を取った
(色々名前変えてるけど…あの女が来ないとも限らないし…いや、でも最初の所で髪を赤コートで隠してたから多分…大丈夫…)

結果

ヒュッ!

後ろからナイフが飛んで来てコートを貫通して木に深く突き刺さった
「ん? …まさか…!」
「見付け…たわよ…あち…こち、で…名前を変えて…る様、ね…」
息を切らしながらレンゼを睨み付ける女を見て小さく悲鳴を上げた
「どうしたのかしら? 可愛い声出しちゃって…」
「ははは…」
ナイフを取り出してコートの端を斬って移動を可能にして女に向き直った
「そう言えばあんたの名前…聞いてなかったな…」
「スウゥゥゥウ…ハアァァァア…」
女は深呼吸をしてニコッと微笑んだ
わたくしはヴァニティー。冥土に持って行くには丁度良い名前でしょう?」
「生憎! 俺は死ぬ気は無い。でもここで逃しても殺られるのがオチだから…ここで殺る!」
ナイフを構えて睨み付けるとヴァニティーはフフッ…と笑った
「それはそれは…こちらとしても随分と容易に終わらせる事が出来そうなので楽しみです」
「こ、このヤロォオオオ~……!」
じかに自分が弱いと言われた事に腹を立てて引き攣った笑顔を浮かべた
「おやおや、怒っても良い事はありませんよ?」
「るっせ! 誰のせいだと思ってるんだ!」
更に怒ってナイフを大きく振って威嚇した
「可愛らしい威嚇ですね。まるでの様です」
その瞬間レンゼの顔から感情が消え、次の瞬間には物凄い怒りの形相を浮かべていた
「ブッ殺す!」
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