復讐の慰術師

紅蓮の焔

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12章 放浪

167話 特技

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「う…ごほっごほっ! うぅ…頭いたぁ…」
上体を起こすと辺りを見回した
木造の薄汚れた小屋の様な部屋で、キッチンと窓と今レンゼが寝ているベッド、そして椅子が2つあり、入口には布が掛けられ外から見えない様になっていた
「ヒールゥ…居る?」
「ヴニャアァァ…」
髪の間から出てきたヒールゥを感じるとベッドから降りて立ち上がった
「あ、起きたんだ」
立ち上がると同時に布が退けられ女性が入って来た
「こんにちは?」
「畏まらなくて良いのよ。大丈夫? 痛くない?」
女性が心配そうに声を掛けてくるとコクっと頷いて見せた
「でも風邪引いてるんでしょ? 村の人達はまだ2人が戻って来た事知らないから寝てても良いわよ。それともお腹空いた?」
「…大丈夫です。それよりコート知りませんか?」
ムミの父親に貰ったコートが見当たらないので聞くと女性は手を差し伸べてきた
その手を取るとベッドから立ち上がって女性と共に外に出た
「良いんですか? 外に出て…」
「皆怖がって外に出て来ないから」
「そうですか…」
それが嬉しくも、そして哀しくもなりレンゼは小さく唇を噛んだ
「ここで干してるの。返り血が付いてたから…」
「…怖くありませんか?」
「ううん。人殺しが悪い事なのは…分かってはいるんだけどね…それでも…助けてくれた人を邪険にするのはもっといけないわ…今日は泊まっていってね。お兄ちゃんも…落ち着いたら戻って来るだろうから…良ければ慰めてあげてね…」
ギュッと抱き締められ鼓動がトクン…トクン…と体に伝わってくる
「…分かりました」


そして日も暮れてくると入口の布が退けられ、マルクが中に入って来た
「あ、指揮官殿はお目覚めか?」
「私は指揮官では…て言うか、もう礼儀正しくする必要…ねぇか。俺は、指揮官じゃねぇよ…」
ベッドで寝そべっているレンゼを見付け、マルクは椅子を持って来てそれに座った
「あれ? あいつは?」
「女の人の、事か? あの人なら、少し外に、出てる…」
マルクはチラッと外を見て溜め息を吐いた
「そうか…ん? 指揮官殿はなんで俺って言ってるんだ? 女の子がそんな一人称じゃ好かれねぇぞ?」
マルクにピシッと指差すとマルクはビクッと体を震わせた
「1つ、言っておく。皆、勘違いしてるが…俺は男だ。分かったか? 確かに、俺の双子に、それは可愛い、天使みたいな、容姿の…鬱陶しい奴、が居るが、そいつは俺とは…別に旅に、出てるし…」
「…え? 男? いやいや、どこからどう見ても女だろ?」
「…証拠、見るか?」
「見せられる物なら見せてみろ」
レンゼは起き上がりベッドから降りてフラッと倒れそうになるとマルクが支え、倒れるのを防いだ
「無理するなって指揮官殿。意地張らなくても良いから」
「だから…ヤバっ…力、入らねぇや…悪いけど、ズボン脱がして確かめてくれ…」
(体力の限界が来たか…3日食べるの我慢したり川魚1匹食ってその後1日経って飯を食わして貰ったのは良いけどその分はダイヤと移動で使ったし…腹減った通り越して動けねぇ…)
再びベッドの上に寝転がされマルクは眉間を摘んで溜め息を吐いた
「指揮官殿…あんた確かに心は強いし可愛いよ? けどな、体は弱いわ男みたいな性格だと誰の嫁さんにもなれねぇぞ?」
「あ? 巫山戯ふざけんな…俺は、男だ…ただ、栄養不足なだけで…それ以外は、健全な17歳、だ…」
「そうかそうか…指揮官殿は17ね。後、栄養不足なら後で飯でも作ってやるよ。指揮官殿のお陰でいい特技身に着けたしな…」
マルクの言葉に火照った顔で疑問に思った
「特技って…?」
「あぁ、これだよ」
マルクがレンゼの前に腕を出して力を込める動作をすると、肘まで黒くなった
「…? なんで?」
「保って数分だけど体が丈夫に成るのは良いな。危険な目に遭っても彼女を護れる…因みにこれ出来たの指揮官殿のお陰だぜ? 帰る時に元に戻してくれたろ? あの時の感覚を覚えてそれを逆から試していったら出来たよ。意外と簡単なんだな…」
マルクの超人っぷりにレンゼは苦笑して目を瞑った
「少し…寝るよ…」
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