復讐の慰術師

11章 新たな生活

１４３話 進展？

次の朝…
（ふぁ～あ…）
欠伸を掻いて起き上がると違和感に気付いた
（あれ…なんで……アリサ！？）
驚き過ぎてベッドから転げ落ちると、再びレンゼの隣で寝ているアリサを無言で見詰めて状況を整理し始めた
【え～と…たしか昨日、そうそう！　やっと治ったんだよ！　後はゴーレム…神聖な儀式。土人形。エメス真理…何か繋がる筈…絶対に導き出してやる…！　恐怖も克服出来たんだぞ！　このまま正解も導き出してやる！】
レンゼはそこから窓を見詰める
鼠色の空がレンゼの行く先を暗く暗示している様にも感じられた
【神聖な儀式…神、聖なる、汚れの無い。土人形…土、捏ねる。エメス真理…本当の理】
思い付く言葉を羅列して見てもう～んと首を捻るだけだった
【１つずつ確かめていったらいつかは答えに辿り着くはずだ…！】
グッと小さくガッツポーズを取るとドアの方へ歩いて行く
（うっ…）
ドアノブに手を掛けようとすると体が震え始め、冷や汗がレンゼの頬を伝う
【アリサだけ特別か…！？】
振り返ってアリサを再び見ると、未だによだれを垂らして眠っていた
【お前17だろ…流石によだれ垂らすのは止めろよ…】
そう思っているとアリサが目を覚まし、咄嗟に窓の外を見詰め、アリサが起き上がると如何にも『今気付きましたよ』感を出しながら苦笑して手を振る
（おはよう）
まだ眠たいのかコクッ…コクッ…と首を上下させていた
（まだ寝てて良いよ）
するとアリサは再び布団の中に潜り込んで眠りに着いた
【…陽介、ありがとな…！　あの時は鬱陶しかったけど今になって思えばやっぱり聞いておけば良かった！】
雨が窓を打ち付け、触ると揺れているのが分かる
【神…聖なる…汚れの無い…う～ん…あ、そもそもゴーレムを造るって発想自体の原因から考えよ！
確か……うん？　あぁ…あれ？　あ…！　…う～ん…】
暫く首を捻って考え込んでいると『あ…』と声を漏らした
【そうそう。確か神みたいに人を造ろうとしたんだよ。人造人間ホムンクルスの発想自体もそこから来たんだった。忘れてたぁ…！　って言うか忘れて当然じゃないか…？　だって17年以上も前だし四捨五入したら約20年だし忘れて当然！　思い出した事が異常な位だよな！】
首を縦に振って頬を緩ますと再び考え込んだ
【神の真似…人を造る所から始まったんだろ…？　じゃあそもそも命が…それで魂が必要。それを入れる方法が分からないけど…それは後で考えるとして…前世では確か神の真似をして人間を造りたいと思っていると誰かがお告げ？　を聞いてどうのこうの……馬鹿げてるって思ってたけど今生は流石に馬鹿に出来ないな…う～ん…魔法？　何か唱えるんだっけ？　うん。そんな感じだった気がする】
頷いていると突然頭を撫でられ、ビクッと震わせてしゃがみ込み涙を浮かべる
（脅かすなよ…！　考え事してたんだぞ…！？）
顔を真っ青にしてブルブルと震えるレンゼを見てアリサは苦笑し、外を見て口を大きく開けた
レンゼが首を傾げると同時にアリサは慌てて部屋から走って出て行った
【一体何が…？】
レンゼはアリサの突然の行動に首を傾げるしか出来ずにいた


十数分後…
やっと戻って来たアリサは全身びしょ濡れでクシャミをした
（大丈夫…か？）
アリサはコクッと頷くと再びクシャミをして鼻水を啜り、紙に字を書いてレンゼに見せる
『お風呂に入って来る』
【風呂出来たんだ！？】
どの様な物なのか気になったレンゼは息を大きく吸って、アリサが部屋を出て行くと同時に鼻で笑った
【落ち着けよ俺…風呂って事はいつかは見れるんだから今見に行ってもアリサの…】
２年以上も前の事を思い出してカアッと顔を赤らめるとブンブンと首を振った
【集中集中…！　とにかく神聖な儀式を行った奴が土人形を捏ねて魔法を唱えつつエメスを彫る…やっぱり前世でも出来てそうなんだよなぁ…う～ん…】
レンゼが考え込んでいると既にアリサは風呂から上がり、タオルで髪を拭きながら戻って来ていた