復讐の慰術師

紅蓮の焔

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8章 計画前夜…月明かりの下で…

92話 帰宅

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ガチャ

「ただいま~」
「あ! おかえりなさいです!」
シンが元気よく走って来て、アベルに飛び付いた
「レンゼの状態はどうだ?」
「かなりよわっていま…」
アベルはそれを聞いて慌ててレンゼを寝かしている寝室へ走って入った
「レンゼ!?」
「そんなに慌ててどうした? グラトニーとか言うヤツでも見付けたのか?」
「は? あれ? なんで!?」
「落ち着け落ち着け、1度深呼吸してみろ。落ち着くから」
アベルの目の前ではベッドに座ってこちらに微笑むレンゼの姿があった
しかし驚いたのはそこではなく…
「だってここ! なんで傷治ってんの!? 幾らなんでも早すぎるだろ!?」
「う~ん…よく分からないんだがな? 最近どうしても身体が優れなくてなぁ。まあそれと同時に何故か自然治癒力は以前と比べて驚く程に増してる。精々半日あればあんな風穴が空いてたにも関わらずしっかり治る様にな」
「…もう分かった…お前は人間として見ちゃダメな奴だな…」
「あっさりと酷い事言うな!? …まあそれは置いておき…明日、殴り込みに行くんだろ? なら俺も行くわ」
伸びをしながらアベルへ目線を向けるレンゼに対して深い溜め息を吐くと問い掛けた
「なんで行くんだ? 2号達なら俺が「お前が助けるって? 一人でか? もしくはアイシスがいない所を見るとあっちにグリードかクラークがいるだろ? そいつとか? それでも相手の数は残り5人だろ? それにその中にそのグラトニー、ラスト、そして俺のロゼもそこにいる。だから安静にしておけって言われようが必ず行く。例え縛り付けられても何をされても行く。分かったか?」」
「あ、あのなぁ…こっちがどれだけ心配したのか分かって言ってんのかぁ?」
口をヒクつかせて米神に青筋を浮かべてグッと握り締めた拳をレンゼに見せる様に顔の隣に持ち上げてきた
「…知るわけないだろ? 心が読める訳でも無いのに~」
半目でからかう様に舌を出すと「あはは…」と笑みを浮かべながらアベルが拳に更に力を込めて隣に歩いて来た
「死にかけだった奴が何を言ってんだよ。大人しく寝てろよ」
「だからダメだ。それに…俺の妹もいる。絶対に行くぞ。折角の妹を取り戻せる機会チャンスなんだ。もう……取り戻して見せる。俺の家族に手は出させない。距離を置けば安全と思ってた…だけどそんな事は無かった…もう…あいつらは…アリサは…ロゼは…失いたく無い…」
自分の二の腕を力強く掴んで歯軋りさせるとアベルは拳の力を抜いた
「分かった…ただし! グラトニーは俺が殺る。良いな?」
「はあ? ロゼ以外全員殺すに決まってるだろ。全員俺が殺る」
「あのな? 誰を相手にしてたか知らねぇけどな、あんな死にかけだった奴があいつらに勝てるとは思えないな」
「あれは驚きの出来事が起きたからだ。エリクサー出てきたり、銃を隠し持たれてたり…」
「それはお前が気付かなかっただけだろうが。そんな事も気付かない様じゃ足手まといになるだけだ…残れ」
「ふざけるな? 試験の時どうだった? 全てを合格させた俺とお前とじゃ格が違うだろうが」
「は? 試験は試験、戦闘は戦闘だ。分かったか?」
「…だが「お前の妹も、2号も、アリサさんも、全員助けて来る。安心しろ」」
アベルがグッと親指を立てるとレンゼは勢いよく立ち上がった
その拍子に一瞬ふらついた
「だから言ってるだろうが、あの出血量…例え傷が治った所で血は戻らねぇだろうが、だから大人しく寝とけ」
「…少し、飯取りに行く。誰もいないんだ。盗んでも気付かれない…」
「例えそうだとしても俺が気にするわ! それに飯位なら俺が買いに行くから「何もかもされてんだ。少し位恩返しさせろ」」
レンゼが睨み付けるとアベルは嘆息した
「分かった分かった。なら…ほら、これで何か買って来いよ」
アベルはズボンのポケットから金貨を数枚、取り出してレンゼに手渡した
「そんなに恩返ししたいならそれで何か買って来い。そんなに多くなくても良い。1つでも良いだから…無理だけはするなよ? 最悪お前の分だけで良い。だから「分かったよ。心配すんな」」
はにかんで笑って見せると金貨を受け取り民家を出て行った
「行った…か…」
「いいんですか?」
「だって恩返ししたいって言ってんだから行かせば良いじゃねぇか」
それにシンは首を傾げたが「はい!」と元気よく返事をするとアベルはレンゼが出て行ったドアを見詰めた
(大丈夫だよな…あいつらは本部にいるって言ってたし…あいつにはその事は言ってない。大丈夫だな。うん。大丈夫の筈だ…)
そう願ってシンの頭を撫でた
「ほら、そろそろ寝ろ。明日、お姉ちゃんを連れて戻って来るから…な?」
そう言い、少し眠たそうにしているシンをベッドに寝かし付けるとリビングの椅子に座って金髪の少年を待ち始めた…
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