復讐の慰術師

紅蓮の焔

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3章 旅の始まり

26話 宿

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「寝るか…」
レンゼは1つしかないベッドに倒れて眠りこけた





「むにゃ…はっ!」
自分の声で目が覚め、シルビアは飛び起きた
「夢? それじゃあレンゼは!?」
キョロキョロと辺りを見渡すと自分の隣で寝ているレンゼを見て顔を紅潮させた
「な! ななななななな、なんでわわ私とレレ、レンゼがいい、一緒にねねね、寝てるの~!」
明らかに動揺して、レンゼから離れようとしてベッドから転げ落ちた
「ふぎゃ!」
「ん~?」
レンゼは起きると目を擦った
「おはお~…」
レンゼに挨拶されるとビシッと警戒して部屋の端まですぐに下がり、壁に背中を付けた
「お、おはよ~…」
警戒しながら言うとレンゼは起きて伸びをした
「それで…お前の家はどこなんだ?」
「な、なななななな…い、家!? もしかして…わ、私の事がす、すす、好きなの!?」
「は? 家まで送り届けるって約束だったじゃねえか」
「な、なぁんだ…」
ホッとして安心してシルビアはへなへなと崩れ落ちた
「そうだ、まだ飯食ってねぇ…」
レンゼは欠伸をしてドアに向かった
「この宿って朝飯でるのかな? 行こうぜシルビア」
「え? あ、うん」
意外と呆気なく終わったこの騒動?に少し驚きながらもやもやとした感じが心の中に残った
シルビアは荷物を持ってレンゼの後を追い掛けると他の宿泊客とぶつかってしまった
「っ~! いって~な~…」
「ご、ごめんなさい…」
「いや、良いんだよ。ただね? 俺はちいとばかし金を欲しいんだよ~。これの慰謝料として払ってくれるかな? 6万セシュル近く」
男がニヤニヤと笑いながら近寄る
「ほ、本当にごめんなさい…お金は…ありません…」
「お金無いのか~…だったらその身を売っても払って貰わなくちゃあなぁ! くくくく…」
シルビアが土下座をするが周りの宿泊客は全く助けようとしない
その中でレンゼは腹が減りすぎてテーブルに顔を埋めている
「ねえ~? どうするの~? 体売っちゃう?」

バシャン!

突然後ろからぶつかって体に掛かった水にイライラし出した
「ってぇなぁ…何してくれんだよ! こうなりゃ俺の部下に命令してお前ん所の宿を潰してやる! こう見えても俺は軍に所属している少佐なんだ! お前らごときすぐに潰せんだよ!」
男が自慢気に叫んで振り返りつつ手を払うと頭に何かがぶつかった
「誰だ!」
男が振り返ると端の方に立っている少年がいた
「あのさ~…人が体力使わずに朝飯待ってるのにさっきから五月蝿いんだよ。あのな~そんなに体を売れ売れって言うんならお前が自分の体を売れば良いだろ?」
「なんだ貴様! 俺を愚弄するのか!」
「別に愚弄するわけじゃないですよ。ただ貴方の為に言ってるんですよ? 少佐殿…」
「どの口が喋ってんだこのガキが!」
「おいおっさん! 誰がガキだって? ああ?」
少年がキレてテーブルを乗り越え男の前に歩いてきた
「なあ、今ならまだ許してやる。土下座しろ」
「誰がお前みたいなガキに土下座なんかするかバカかお前は!」
少年は深呼吸をした
「シルビア、少し下がってろ…」
「う、うん…ありがとう…レンゼ」
シルビアが後ろに下がるとレンゼは土の剣を男の横腹に思いきり叩き付けた
それを防御しようともせず男は立っている

ボロォ…

「なんだ…いい加減にしろよ? 俺をバカにするのも…今なら一生鉱山労働で許してやる。さ、土下座しろ」
「バカはお前だ。俺がなんのためにお前にさっきのを叩き付けたのか気付いてないのか?」
「るっせぇ!」
男が殴ろうと拳をレンゼに向かって伸ばすとレンゼは後ろに足を蹴った

ツルッ!

「バカか! ざまあみろ!」
「さっきから言ってるだろ? バカはお前だ」

ドゴッ!

男は突然腕に走った衝撃に驚いた
「何が?」
レンゼはそのまま手を床に伸ばし、後方回転して下がった
「そして…」
レンゼはすぐに男の足を蹴って転がすと土と水が混ざった床に魔術式を画いた
「この人を拘束するよ。良いよね? 許可は取らないけど…」
魔力を練り上げ魔術式に魔力を通すと男の下の床が形を変えて男を拘束した
「くそっ! 離せ! 離せ!」
「なあ? これでお前は俺に手を出せない…つまりこのままお前を殺すことも可能なんだぜ?」
「止めろ! 命令だ! この拘束を解け!」
男の言葉に嘆息した

ドゴッ!

「ははは…これはガキって言った分ね?」

ドゴッ!

「これは俺の仲間にけしかけた分ね?」

ドゴッ!

「そしてこれはさっき五月蝿くした分…」
レンゼが蹴り終わった時には男は気絶していた
「ねえお姉さん。こんな事してごめんね」
「え? い、いえ! こちらとしても迷惑していたのでお礼をしたい位です!」
「それじゃあご飯早く作ってくれ。あ~、腹へった…シルビア、待つぞ~」
「う、うん!」





数分後…
「お待たせしました!」
「やっと来た~…」
弱々しく歓喜の声を上げると目の前に置かれたスープとパン、そして水を頬張り始めた
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