復讐の慰術師

紅蓮の焔

文字の大きさ
上 下
27 / 315
3章 旅の始まり

25話 ラグブールでの初夜

しおりを挟む
「それで…どこで食うの?」
「…探してるのよ!」
2人が町を彷徨さまよっている内に夜になった
「なあ…もう周りの店が閉じ始めてるぞ?」
「ぐっ…どうして! どうして全然見付けられないの!?」
「え? 今まで沢山あったよ? 気付いて無かっただけだったのか…てっきりただ選んでるだけかと…すまんな」
更に落ち込んで背中を曲げる
「うぅ…」
「またいつかな?」
「それじゃあ宿を探しましょ!」
シルビアが指を指して言う
「今度は見付けたら言えば良いのか?」
「ええ! バンバン言ってちょうだい!」
「それなら…あそこに」
レンゼが指を指した先には窓からあかりの漏れた建物を指差した
「あそこって家じゃないの?」
「入口の所を見てみろ。看板が掛かってるだろ? なんて書いてある?」
「え~と…INNイン?」
「あの文字は宿屋って意味だ」
シルビアは感心した様にその看板を見ている
「インは看板、インは看板…」
そう呟きながらその建物に入って行った
中に入るとすぐにカウンターがあり、そこに若い女性が立っている
「いらっしゃい…2名様ですね。お一人様100セシュルになります」
「ほら払ってこい」
「ひゃ!」
レンゼに背中を押されてカウンターの前に来た
「は、はい! 200セシュル!」
「はい! ありがとうございます! では部屋に案内するのでこちらへ…」
「レンゼ~行くわ…どこに行ったのよ…」
シルビアは案内された部屋に荷物を置いて宿屋の外に出た
「レンゼ!」
「五月蝿いなぁ…」
「うひゃ!」
横から聞こえてきた声に驚いて振り向くとレンゼが立っていた
「お、驚かさないでよ…」
「ははは、ごめんね。戻ろうか」
「うん! て言うかあんたが笑った所初めて見たかも…」

ドゴッ!

シルビアが笑って中に入ろうとすると突然隣のレンゼから鈍い音がして振り向いた
「え? レンゼ? でも…なんで?」
混乱しているシルビアは突き飛ばされレンゼとの間に誰かが入った
「いった~…あれ? レンゼ? でもさっき……ひっ…」
レンゼとシルビアの目の前には後頭部を潰されたレンゼの姿があった
「痛いじゃない…人をこんな簡単に殺して良いと思ってるの?」
そう言うと赤い光に包まれて別の姿を形成した
「…あの時の…」
「あら、覚えてくれてたのね。嬉しいわ」
それは7年前にレンゼの前に姿を現したあの女性だった
「レ、レンゼ…あ、あの人…何?」
「知らない…だが昔から色々厄介な事をしてくる奴だ」
「自己紹介はまだだったかしら? 私の名前はラスト…宜しくね」
ラストは不気味な微笑みを浮かべて見せた
「シルビア…ごめんな、ここで死ぬかもしれん」
「え!? 嘘! ここで!? やだ~!」
「チッ…少し静かにしてくれ…」

ドスッ

「うっ…」
レンゼがシルビアの鳩尾に肘をぶつけると呻き声を上げて気絶した
「あら、良いの?」
「ここでこいつを逃がしてもどうせ殺すだろ?」
「ふふっ…そうかもね…」
暫く風が髪を冷たくなぜる
「はあっ!」
「ふっ」
レンゼが走って剣をラストに振るうとそれを右腕で防御して足を引っ掻ける
「ぐわっ!」
レンゼは倒れるとすぐに剣を取って起き上がろうとすると突然首にを突き付けられた
「そんなに興奮しないで…私は戦いに来たんじゃないの。貴方がどこにいるか確かめたかっただけ…」
ラストは腕を元に戻すとニコッと微笑んだ
「な、なんで殺さないんだよ…」
「貴方はまだ殺さないでおくわ。それが私達の願いであり上様の願いでもある、それじゃあまたね。覚えておいて…貴方は生かされてる。つまり用が無くなればいつでも消せるって事を…」
そしてラストはレンゼに背を向けて去って行った
そしてひと風吹くと石で鋪装されている地面に落ちている砂が舞い上がり一瞬、ラストが見えなくなるとその先にラストはいなかった
「…なんなんだ一体…」
レンゼは剣を持ってシルビアを担ぐと宿屋の中に入った
「すみません、部屋ってどこでしたっけ」
「こちらです。どうぞ…」
女性に案内されて部屋に向かった
「こちらです」
「ありがとうございます」
ペコリとお辞儀をすると部屋の中に入った
「…まだ…足りないのか…」
レンゼは部屋にあったベッドにシルビアを放るとぐっと拳を握り締め、ギリッと唇を噛んだ
(くそ! くそ…)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「話が違う!!」  思わず叫んだオレはがくりと膝をついた。頭を抱えて呻く姿に、周囲はドン引きだ。 「確かに! 確かに『魔法』は使える。でもオレが望んだのと全っ然! 違うじゃないか!!」  全力で世界を否定する異世界人に、誰も口を挟めなかった。  異世界転移―――魔法が使え、皇帝や貴族、魔物、獣人もいる中世ヨーロッパ風の世界。簡易説明とカミサマ曰くのチート能力『魔法』『転生先基準の美形』を授かったオレの新たな人生が始まる!  と思ったが、違う! 説明と違う!!! オレが知ってるファンタジーな世界じゃない!?  放り込まれた戦場を絶叫しながら駆け抜けること数十回。  あれ? この話は詐欺じゃないのか? 絶対にオレ、騙されたよな?  これは、間違った意味で想像を超える『ファンタジーな魔法世界』を生き抜く青年の成長物語―――ではなく、苦労しながら足掻く青年の哀れな戦場記録である。 【注意事項】BLっぽい表現が一部ありますが、BLではありません      (ネタバレになるので詳細は伏せます) 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2019年7月 ※エブリスタ「特集 最強無敵の主人公~どんな逆境もイージーモード!~」掲載 2020年6月 ※ノベルアップ+ 第2回小説大賞「異世界ファンタジー」二次選考通過作品(24作品) 2021年5月 ※ノベルバ 第1回ノベルバノベル登竜門コンテスト、最終選考掲載作品 2021年9月 9/26完結、エブリスタ、ファンタジー4位

慟哭の時

レクフル
ファンタジー
物心ついた時から、母と二人で旅をしていた。 各地を周り、何処に行くでもなく旅をする。 気づいたらそうだったし、何の疑問も持たなくて、ただ私は母と旅を続けていた。 しかし、母には旅をする理由があった。 そんな日々が続いたある日、母がいなくなった。 私は一人になったのだ。 誰にも触れられず、人と関わる事を避けて生きていた私が急に一人になって、どう生きていけばいいのか…… それから母を探す旅を始める。 誰にも求められず、触れられず、忘れ去られていき、それでも生きていく理由等あるのだろうか……? 私にあるのは異常な力だけ。 普通でいられるのなら、こんな力等無くていいのだ。 だから旅をする。 私を必要としてくれる存在であった母を探すために。 私を愛してくれる人を探すために……

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...