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第四章
三十一話
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この服はどうかな?
それともこっち?
ソアの服は露出が少なめなのが多くて、スカートも長いしであまり海に行く服っぽくないんだよなぁ……なんて思いながら、明日の旅行のために部屋で一人、こっそりと夜のファッションショーだ。
(そういえば、リオが水着の他にも服を手配させたと言って、さっき持ってきてくれたんだっけ)
私はもらった服の箱が積み上がって置いてあるソファの方を見た。
はっきり言って、とてつもない量の服である。
(旅行のためだけに、こんなに買ってくる必要ってある?)
渡された時は、箱からとんでもなく高そうな感じがして、まだ手も触れていなかったのだ。
でも、せっかく買ってくれたんだし、試しに一つ箱を開けてみた。
……うん、かなり薄い生地だな。
シルクみたいな手触りの白いドレス。
金色の刺繍に、高価そうな宝石が細かく服に縫い付けられていて、この部分だけでもすごい値段がしそう。
日本だったら万の前に丸が三つは付きそうな?
これぞセレブリティーってやつかしら。
で、これ来て船に?
潮風ですぐに傷みそうな気がしてならないのだが。
というか、どこの社交パーティに着ていくドレスかなって。
ソアの家も貴族だし、娘には普段着からすごい着飾らせるなぁとは思っていたけど、リオの家は想像以上だ。
(他の箱もまさかこんな感じだったら怖っ)
私は一度部屋の外へ出で、たまたま近くにいたリオ付きのメイドさんに声をかけた。
服の対応に困っていると伝えたら、開けるのを手伝ってくれて、服の組み合わせなどを色々とコーディネートをしてくれた。
「ソア様は少し華奢なお体なので、髪色ともマッチした白やピンクは映えそうでございます。ディナー時用のドレスがおそらく数枚はあるかと思いますが、それ以外はそこまで着づらい服ではないかと」
そう言って、鏡の前で色々と合わせてくれた。
そういえばこの服の中に、黒は一枚もないな。
日本にいた頃の私の私服は、結構黒コーデも多かったのだが。
「ダンシェケルト家の若い女性には、基本的に黒服を着せない習慣がございますね。喪に服す時は別ですが、特に男性経験のない女性は魔に魅入られやすいという強い言い伝えがありまして、ソア様にはご遠慮していただきたいと思います」
「そ、そうなんですね。それにしても、よく分かりましたね、その……経験がないことを」
男性経験の件は確かにその通りなんだけど、なぜ私の前世での彼氏いない歴=年齢がこのメイドさんに伝わっているのだ?
ソアの過去は私ですら知らないけども、おそらく清いお嬢さんだったとは思う。
「ソア様がつけていらっしゃる女神のメダル、そちらにかかっている魔法は、ダンシェケルト家の人間だからといって、みなが成就されるものではないのです。清く若い10代の男女が、女神に認められることで、その効果を強く発揮します。そして、その二人が結ばれることは、一族を繁栄させるためにとても重要な神事なのです。リオ様のお母様やご兄弟の奥様もメダルの所持はされていても、この誓いの魔法がかかった方はおりません」
「それって……」
リオの一族でも、私とリオの今の状態はかなり特殊なことだということか。
私はそんな凄そうなものに、自分でもよく分からないうちから勝手に選ばれてしまったのか?
一体なぜ……。
「ソア様はダンシェケルト家にとっても特別なのです。一族では成就する運命の相手は『メダルが選ぶ』とも言われておりました。ですので、メダルを偶然拾ったソア様を運命の相手として、リオ様は決行されたみたいですねぇ……」
リオがダンシェケルト家の息子として、とにかく務めを果たしたのだということは、まぁ理解できた。
だとしてもだ、その相手がなぜ私なんだ? 女神よ。
リオと本当の意味で結ばれたら、一体何が起きるのだ。
こ、こんなこと聞かされたら、今更やっぱりやめますなんて、絶対にできないじゃないか。
私がリオを好きになれなかった場合は、リオが魔法を解除するために自分を殺すようなことを言っていた。
その時の本当の意味を、今更ながらにやっと理解したんだ。
そのくらいこの誓いは、リオやこのダンシェケルト家にとって重要なことなのだと。
私はお喋りで中断していた旅行の準備を、再びメイドさんに手伝ってもらって、なんとか終わらせた。
そのあとにリオの部屋へと向かう。
ドアをノックして中へ入るも、部屋の中からは返事がなかった。
なのでベッドの方へ見に行くと、やはりリオはすでに寝ていた。
私はそばに寄って、リオのサラサラな黒髪をそっと撫でる。
まだあどけない顔をしたこの少年が背負うもの。
それを深く深く考えると、もはや寒気すらしてくるレベルだ。
リオと喧嘩して離れた時の、あの魔法の効力の強さは確かに本物だった。
あそこでリオが探し出してくれなければ、あの時私は森の中で死んでいたことだろう。
この先、私はリオやリオの一族と本当にうまくやっていけるのだろうか。
ただの日本の元女子高生に、きちんとこの少年を支えることなど、できるのだろうか。
そんな不安は尽きない。
が、ここまできたら彼を愛すより他にないのだろう。
今はまだ好きの範囲だが、自分にとってリオがこの世界で特別な存在なのは、たぶん間違いないわけで。
(※推し攻略キャラを除く)
私はリオの口にそっと口づけをして部屋を出た。
それともこっち?
ソアの服は露出が少なめなのが多くて、スカートも長いしであまり海に行く服っぽくないんだよなぁ……なんて思いながら、明日の旅行のために部屋で一人、こっそりと夜のファッションショーだ。
(そういえば、リオが水着の他にも服を手配させたと言って、さっき持ってきてくれたんだっけ)
私はもらった服の箱が積み上がって置いてあるソファの方を見た。
はっきり言って、とてつもない量の服である。
(旅行のためだけに、こんなに買ってくる必要ってある?)
渡された時は、箱からとんでもなく高そうな感じがして、まだ手も触れていなかったのだ。
でも、せっかく買ってくれたんだし、試しに一つ箱を開けてみた。
……うん、かなり薄い生地だな。
シルクみたいな手触りの白いドレス。
金色の刺繍に、高価そうな宝石が細かく服に縫い付けられていて、この部分だけでもすごい値段がしそう。
日本だったら万の前に丸が三つは付きそうな?
これぞセレブリティーってやつかしら。
で、これ来て船に?
潮風ですぐに傷みそうな気がしてならないのだが。
というか、どこの社交パーティに着ていくドレスかなって。
ソアの家も貴族だし、娘には普段着からすごい着飾らせるなぁとは思っていたけど、リオの家は想像以上だ。
(他の箱もまさかこんな感じだったら怖っ)
私は一度部屋の外へ出で、たまたま近くにいたリオ付きのメイドさんに声をかけた。
服の対応に困っていると伝えたら、開けるのを手伝ってくれて、服の組み合わせなどを色々とコーディネートをしてくれた。
「ソア様は少し華奢なお体なので、髪色ともマッチした白やピンクは映えそうでございます。ディナー時用のドレスがおそらく数枚はあるかと思いますが、それ以外はそこまで着づらい服ではないかと」
そう言って、鏡の前で色々と合わせてくれた。
そういえばこの服の中に、黒は一枚もないな。
日本にいた頃の私の私服は、結構黒コーデも多かったのだが。
「ダンシェケルト家の若い女性には、基本的に黒服を着せない習慣がございますね。喪に服す時は別ですが、特に男性経験のない女性は魔に魅入られやすいという強い言い伝えがありまして、ソア様にはご遠慮していただきたいと思います」
「そ、そうなんですね。それにしても、よく分かりましたね、その……経験がないことを」
男性経験の件は確かにその通りなんだけど、なぜ私の前世での彼氏いない歴=年齢がこのメイドさんに伝わっているのだ?
ソアの過去は私ですら知らないけども、おそらく清いお嬢さんだったとは思う。
「ソア様がつけていらっしゃる女神のメダル、そちらにかかっている魔法は、ダンシェケルト家の人間だからといって、みなが成就されるものではないのです。清く若い10代の男女が、女神に認められることで、その効果を強く発揮します。そして、その二人が結ばれることは、一族を繁栄させるためにとても重要な神事なのです。リオ様のお母様やご兄弟の奥様もメダルの所持はされていても、この誓いの魔法がかかった方はおりません」
「それって……」
リオの一族でも、私とリオの今の状態はかなり特殊なことだということか。
私はそんな凄そうなものに、自分でもよく分からないうちから勝手に選ばれてしまったのか?
一体なぜ……。
「ソア様はダンシェケルト家にとっても特別なのです。一族では成就する運命の相手は『メダルが選ぶ』とも言われておりました。ですので、メダルを偶然拾ったソア様を運命の相手として、リオ様は決行されたみたいですねぇ……」
リオがダンシェケルト家の息子として、とにかく務めを果たしたのだということは、まぁ理解できた。
だとしてもだ、その相手がなぜ私なんだ? 女神よ。
リオと本当の意味で結ばれたら、一体何が起きるのだ。
こ、こんなこと聞かされたら、今更やっぱりやめますなんて、絶対にできないじゃないか。
私がリオを好きになれなかった場合は、リオが魔法を解除するために自分を殺すようなことを言っていた。
その時の本当の意味を、今更ながらにやっと理解したんだ。
そのくらいこの誓いは、リオやこのダンシェケルト家にとって重要なことなのだと。
私はお喋りで中断していた旅行の準備を、再びメイドさんに手伝ってもらって、なんとか終わらせた。
そのあとにリオの部屋へと向かう。
ドアをノックして中へ入るも、部屋の中からは返事がなかった。
なのでベッドの方へ見に行くと、やはりリオはすでに寝ていた。
私はそばに寄って、リオのサラサラな黒髪をそっと撫でる。
まだあどけない顔をしたこの少年が背負うもの。
それを深く深く考えると、もはや寒気すらしてくるレベルだ。
リオと喧嘩して離れた時の、あの魔法の効力の強さは確かに本物だった。
あそこでリオが探し出してくれなければ、あの時私は森の中で死んでいたことだろう。
この先、私はリオやリオの一族と本当にうまくやっていけるのだろうか。
ただの日本の元女子高生に、きちんとこの少年を支えることなど、できるのだろうか。
そんな不安は尽きない。
が、ここまできたら彼を愛すより他にないのだろう。
今はまだ好きの範囲だが、自分にとってリオがこの世界で特別な存在なのは、たぶん間違いないわけで。
(※推し攻略キャラを除く)
私はリオの口にそっと口づけをして部屋を出た。
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