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第三章
三十話
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私はリオとアナを見送った後、明日の準備をしようと思い、馬を借りて一度学校の寮まで帰ってきていた。
その時、寮の女の子たちに初めてまともに話しかけられたが、そのほとんどがずっと休学していてどうしたのかと聞かれるものだった。
しかし、ここで『リオから逃れるため、夜中の森に一人で入って行ってしまい、意固地にも帰らずにいたら、誓いの魔法の影響で死んでしまうところでした』などという説明をしようものなら、寮生たちの心はまた疎遠になってしまうことだろう。
ここは無難な説明が妥当だな。
「長く体調を崩していて、婚約者の屋敷で療養させてもらっていたの……」
「あら、それは大変だったわね。婚約者って例のあの彼……?」
私はそうその……と、苦笑いして答えた。
声をかけてくれた何人かの生徒は、ほとんどが上の学年のようだった。
もしかしたら、前世の私の年齢の方が近いかもしれないななんて。
ずっと帰っていなかった私を、たまたま見かけた物珍しさから、話かけてくれただけかもしれないが、転生してからずっと、ソアの家族かリオの身内としかまともに話すことができなかったから、正直それだけでもかなり嬉しい。
旅行から帰ってきて、また復学することができたら、今度はもっと自分から話しかけてみようと思う。
私は必要な荷物をまとめると、またリオの家に戻った。
ルルムのリオの屋敷は、本邸と基本的な建て方がよく似ていて、とても動きやすい。
残念なことに、ここにはバラ園はないのだけども。
私は借りた馬さんを小屋に戻そうと馬小屋へ向かった。
すると、外に放牧され食事中のアナと目が合った。
どうやらリオはもう帰ってきているようだ。
「アナ、戻ってたのね」
『ええ、先ほどね。主人はあなたを探していたわよ。主人に出かけるって言ってなかったの? 早く行ってあげて』
私はそう言われ、慌てて屋敷の方に戻った。
エントランスホールに立っていたリオは、私に気がつくと、すぐに抱きしめてきた。
そしてこの場でおもむろに顔を近づけてきたので、私は学校での初日のことを思い出し「こんなところではダメ!」と拒否。
そうしたらば、少々リオの機嫌が悪くなってしまった。
その辺はホントにもう子供だなぁって。
「寮に行くなら、一言言ってけよ」
「だって、目と鼻の距離だし……クラークさんには出る時に伝えたんだけどね」
しかし、先ほどから彼の姿が見えないな。
部屋以外の屋敷では、必ずと言っていいほど、いつも私のそばに来るのに。
「ああ、今親に呼び出されて出てるみたいだな」
「リオの両親?」
「そう。色々と進めているんだろう」
「へぇ……色々とね」
ことの意味をよく分かってなさそうな私の返事に、リオは「ふっ」っと苦笑いをした。
「俺のように待つ気はないみたいで」
「……ん?」
それだけ言うとリオは急に黙り、私を自分の部屋まで手を引いて連れてきた。
リオの部屋に入ったところで、ドアも閉めず口を重ねられる。
せめて閉めてから始めてくれ。恥ずかしいんだ。
そして、これが始まると、リオはいつまでも止まらなくて長い。
私もリオのキスにはだいぶ慣れたみたいで、それなりに頑張って応えるのだけど、途中でやっぱり腰砕けになってしまう。
しかし、そこまでやってもリオは満足しないのか、抱き抱えられたまま、今日はソファの方に連れていかれた。
そこで二度目のキス。
「んん」と私の変な声が漏れるたび、リオの攻めもだんだんと強くなっていく。
こんなことばかり繰り返してたら、口の中がいつかふやけちゃうよ。
「で、結局リオはどこへ行って、一体何を買ってきたの? まだ教えてもらってないんだけど」
「行ってきたのは港。まぁ買ったものを見せるのは明日の方が都合がいいかな」
もしかしてそれ、水着じゃないよな?
まぁ、馬に乗ってまで遠出して、しかも男が一人でわざわざ買いにいくようなものでもないが。
リオならあり得そうだと思ってしまうのがまたな……。
「別に秘密にするつもりはねぇから言うけど、買ってきたのは船だ」
「は? 船?!」
「さすがに家には持って帰れないだろう?」
と、リオは苦笑いして言ってきたが、そりゃそうだ。
旅行のためだけに新品の船を購入たぁ、お金持ちの考えることは本当によく分からんね。
「わざわざ随分高い買い物を……」
「自分の持ってなかったから」
うん、学生で持ってる人の方が少ないと思うよ。
まさか、新品の自船でクルーズ旅行とはね。
私としてはちょっとした南方旅行の気分だったのに、随分と大がかりな話になってきちゃったな。
そんなことを思っていたら、今度はリオから数え切れないほど大量の水着が入った袋が渡されて、こやつ、やっぱりな……と思ったのだった。
その時、寮の女の子たちに初めてまともに話しかけられたが、そのほとんどがずっと休学していてどうしたのかと聞かれるものだった。
しかし、ここで『リオから逃れるため、夜中の森に一人で入って行ってしまい、意固地にも帰らずにいたら、誓いの魔法の影響で死んでしまうところでした』などという説明をしようものなら、寮生たちの心はまた疎遠になってしまうことだろう。
ここは無難な説明が妥当だな。
「長く体調を崩していて、婚約者の屋敷で療養させてもらっていたの……」
「あら、それは大変だったわね。婚約者って例のあの彼……?」
私はそうその……と、苦笑いして答えた。
声をかけてくれた何人かの生徒は、ほとんどが上の学年のようだった。
もしかしたら、前世の私の年齢の方が近いかもしれないななんて。
ずっと帰っていなかった私を、たまたま見かけた物珍しさから、話かけてくれただけかもしれないが、転生してからずっと、ソアの家族かリオの身内としかまともに話すことができなかったから、正直それだけでもかなり嬉しい。
旅行から帰ってきて、また復学することができたら、今度はもっと自分から話しかけてみようと思う。
私は必要な荷物をまとめると、またリオの家に戻った。
ルルムのリオの屋敷は、本邸と基本的な建て方がよく似ていて、とても動きやすい。
残念なことに、ここにはバラ園はないのだけども。
私は借りた馬さんを小屋に戻そうと馬小屋へ向かった。
すると、外に放牧され食事中のアナと目が合った。
どうやらリオはもう帰ってきているようだ。
「アナ、戻ってたのね」
『ええ、先ほどね。主人はあなたを探していたわよ。主人に出かけるって言ってなかったの? 早く行ってあげて』
私はそう言われ、慌てて屋敷の方に戻った。
エントランスホールに立っていたリオは、私に気がつくと、すぐに抱きしめてきた。
そしてこの場でおもむろに顔を近づけてきたので、私は学校での初日のことを思い出し「こんなところではダメ!」と拒否。
そうしたらば、少々リオの機嫌が悪くなってしまった。
その辺はホントにもう子供だなぁって。
「寮に行くなら、一言言ってけよ」
「だって、目と鼻の距離だし……クラークさんには出る時に伝えたんだけどね」
しかし、先ほどから彼の姿が見えないな。
部屋以外の屋敷では、必ずと言っていいほど、いつも私のそばに来るのに。
「ああ、今親に呼び出されて出てるみたいだな」
「リオの両親?」
「そう。色々と進めているんだろう」
「へぇ……色々とね」
ことの意味をよく分かってなさそうな私の返事に、リオは「ふっ」っと苦笑いをした。
「俺のように待つ気はないみたいで」
「……ん?」
それだけ言うとリオは急に黙り、私を自分の部屋まで手を引いて連れてきた。
リオの部屋に入ったところで、ドアも閉めず口を重ねられる。
せめて閉めてから始めてくれ。恥ずかしいんだ。
そして、これが始まると、リオはいつまでも止まらなくて長い。
私もリオのキスにはだいぶ慣れたみたいで、それなりに頑張って応えるのだけど、途中でやっぱり腰砕けになってしまう。
しかし、そこまでやってもリオは満足しないのか、抱き抱えられたまま、今日はソファの方に連れていかれた。
そこで二度目のキス。
「んん」と私の変な声が漏れるたび、リオの攻めもだんだんと強くなっていく。
こんなことばかり繰り返してたら、口の中がいつかふやけちゃうよ。
「で、結局リオはどこへ行って、一体何を買ってきたの? まだ教えてもらってないんだけど」
「行ってきたのは港。まぁ買ったものを見せるのは明日の方が都合がいいかな」
もしかしてそれ、水着じゃないよな?
まぁ、馬に乗ってまで遠出して、しかも男が一人でわざわざ買いにいくようなものでもないが。
リオならあり得そうだと思ってしまうのがまたな……。
「別に秘密にするつもりはねぇから言うけど、買ってきたのは船だ」
「は? 船?!」
「さすがに家には持って帰れないだろう?」
と、リオは苦笑いして言ってきたが、そりゃそうだ。
旅行のためだけに新品の船を購入たぁ、お金持ちの考えることは本当によく分からんね。
「わざわざ随分高い買い物を……」
「自分の持ってなかったから」
うん、学生で持ってる人の方が少ないと思うよ。
まさか、新品の自船でクルーズ旅行とはね。
私としてはちょっとした南方旅行の気分だったのに、随分と大がかりな話になってきちゃったな。
そんなことを思っていたら、今度はリオから数え切れないほど大量の水着が入った袋が渡されて、こやつ、やっぱりな……と思ったのだった。
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