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第二章
二十話
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リオが隣で寝ているから、私は寝られないかと思ったが、そんなことはなく。
朝まで熟睡していた。
起きた時にはすでにリオの姿はなかったけども、あやつはちゃっかりと置き土産をしていきおって。
着替えを持って来てくれたメイドさんに、首の辺りの赤みを指摘されたからすぐに分かった。
全く油断も隙もあったものじゃない。
それからも何度かリオからのアプローチはあったけど、「足が痛い」と言うとリオもすぐに引くので、それを利用してなんとかやり過ごした。
やっぱり、このままここにいるのは良くないなと思う。
そうこうしているうちに、リオの両親も帰ってきたので、私は挨拶をしたり一緒に食事をしたり。
両親が滞在していた間は、リオもかなり大人しくなっていた。
そしてリオのご両親は、やはりリオが学校に行かないことを気にしているらしい。
挫いた日から三日が経ち、今は私の足もだいぶ良くなっている。
私は動けない期間、例の小鳥さんにお願いし、ソアの両親と何度も手紙のやり取りをして、『あること』の手続きを進めてもらっていた。
それを今日の夕方、リオにきちんと伝えるつもりで彼の部屋まで訪ねる。
「はぁ? 別の都市の学校にいく?」
「うん、自分の能力のこととか、もっとちゃんと勉強しようかと思って。王都じゃなくて、山の向こうの。そっちで寮に入るの」
「そうか……わかった」
リオはそれだけ言うとすぐに黙ってしまった。
何を考えているのか分からないけど、思ったよりも淡白な反応で拍子抜け。
「それじゃあ……」
私は部屋を出ようとドアのノブに手をかける。
「ソア、忘れもの」
部屋を出ようとする私を、リオは両手で肩ごとぐっと引っ張り、上から顔を重ねる形でキス。
こんな忘れもの、した覚えないって。
そしてリオはなぜだか機嫌が良く、私の後ろから腕を回してくる。
「ソア、俺さ、明日誕生日なんだわ。だから祝ってくれる?」
「えっ、そうなの?! な、なんだ早く言ってよ。プレゼントとか……」
(そっかリオはもう16歳になるんだ……)
ソアの体は15歳でも、私の実際の年齢は18歳。
やはり年の差は感じている。
リオやソアの見た目は、日本人とはだいぶ違っていて、どちらかというと北欧とかヨーロッパの方たちに近い。
アジア人よりもずっと大人っぽく見えるから、つい忘れがちになるけど、そういう意味でも私がきちんとしなきゃと再認識させられた。
「プレゼントはやっぱ、おま……」
「明日! は色々と準備があって忙しいんだけど、頑張って時間作るからみんなでお祝いしようね! あ、夕方にはリペンドール家に帰るから!」
「ちっ……」
だから、あからさまに舌打ちすんな。
「じゃあ今夜は一緒に寝……」
「さて! 用事があるから、また明日ね!」
私はそう言い放ち、リオの腕を上手いことすり抜けて部屋をさっさと退室した。
そのまま馬小屋まで早足でかける。
「アナ! アナ!」
『あら、香桜いらっしゃい』
「アナ、私明日帰るんだ。今までありがとね」
リオの大事な白馬『アナ』に、私はお別れを言いにきた。いざサヨナラとなるとやっぱり名残惜しくなる。
アナには色んなことを話したり、いっぱいお世話になったから。
『そうなのね? 寂しくなるわ』
「またいつか遊びにくるから」
『でも、きっとリオとあなたの家に行くと思うわ。リオはあなたに夢中だもの』
アナの言葉に私は少し顔が赤くなる。
ここまで率直に『好き』を表してくる男性とは今まで出会ったこともなかった。
アナが言う通り、リオが私をすごく求めてくれているのは確かだ。
「あ、私……実は山の向こうの街で学生寮に入ることになったの。だからリオやあなたとはもう……」
私はリペンドールの家には休暇中しか帰らないつもりである。
だから、どれだけリオがソアの屋敷を訪ねても、私はそこにはいない。
『中々会えなくなるのね』
「うん」
アナは急にうーんと顔を傾けて悩んでいる様子が見られた。
そんなに私と別れるのが寂しい?
『香桜はリオのこと好きじゃなかったのかしら?』
「えっ……」
『だって嫌だから離れるんでしょう? 好きならここに住めばいいだけじゃない』
アナは不思議そうにそう尋ねてきた。
そっか、そっちか。
うまく説明できるかな。
「うーん、そういうことじゃないの。リオのことはたぶん好きな方だと思う。カッコいいとも思うし、ドキドキさせられることも沢山ある。でも、やっぱり私はこの世界の人間ではなくて、自立や個人の尊重を重視している国で育ったから、誰かに守られ続けて与えられるだけ、とかは基本的に受け入れられない。まぁ貴族の柄でもないしね」
私はなるべく自分の思っていることを正直に話してみた。アナに通じただろうか。
『そうなのね。でもそんな生き方も素敵だと思うわ』
「ありがとう! もう少し成長したら胸張ってアナに会いにくるから、それまで待っていてくれると嬉しい」
こちらこそ、ありがとうだよ、と言うアナに私は抱きついて、別れを惜しんだ。
一生のお別れじゃないから……また必ず会いにくるからと。
朝まで熟睡していた。
起きた時にはすでにリオの姿はなかったけども、あやつはちゃっかりと置き土産をしていきおって。
着替えを持って来てくれたメイドさんに、首の辺りの赤みを指摘されたからすぐに分かった。
全く油断も隙もあったものじゃない。
それからも何度かリオからのアプローチはあったけど、「足が痛い」と言うとリオもすぐに引くので、それを利用してなんとかやり過ごした。
やっぱり、このままここにいるのは良くないなと思う。
そうこうしているうちに、リオの両親も帰ってきたので、私は挨拶をしたり一緒に食事をしたり。
両親が滞在していた間は、リオもかなり大人しくなっていた。
そしてリオのご両親は、やはりリオが学校に行かないことを気にしているらしい。
挫いた日から三日が経ち、今は私の足もだいぶ良くなっている。
私は動けない期間、例の小鳥さんにお願いし、ソアの両親と何度も手紙のやり取りをして、『あること』の手続きを進めてもらっていた。
それを今日の夕方、リオにきちんと伝えるつもりで彼の部屋まで訪ねる。
「はぁ? 別の都市の学校にいく?」
「うん、自分の能力のこととか、もっとちゃんと勉強しようかと思って。王都じゃなくて、山の向こうの。そっちで寮に入るの」
「そうか……わかった」
リオはそれだけ言うとすぐに黙ってしまった。
何を考えているのか分からないけど、思ったよりも淡白な反応で拍子抜け。
「それじゃあ……」
私は部屋を出ようとドアのノブに手をかける。
「ソア、忘れもの」
部屋を出ようとする私を、リオは両手で肩ごとぐっと引っ張り、上から顔を重ねる形でキス。
こんな忘れもの、した覚えないって。
そしてリオはなぜだか機嫌が良く、私の後ろから腕を回してくる。
「ソア、俺さ、明日誕生日なんだわ。だから祝ってくれる?」
「えっ、そうなの?! な、なんだ早く言ってよ。プレゼントとか……」
(そっかリオはもう16歳になるんだ……)
ソアの体は15歳でも、私の実際の年齢は18歳。
やはり年の差は感じている。
リオやソアの見た目は、日本人とはだいぶ違っていて、どちらかというと北欧とかヨーロッパの方たちに近い。
アジア人よりもずっと大人っぽく見えるから、つい忘れがちになるけど、そういう意味でも私がきちんとしなきゃと再認識させられた。
「プレゼントはやっぱ、おま……」
「明日! は色々と準備があって忙しいんだけど、頑張って時間作るからみんなでお祝いしようね! あ、夕方にはリペンドール家に帰るから!」
「ちっ……」
だから、あからさまに舌打ちすんな。
「じゃあ今夜は一緒に寝……」
「さて! 用事があるから、また明日ね!」
私はそう言い放ち、リオの腕を上手いことすり抜けて部屋をさっさと退室した。
そのまま馬小屋まで早足でかける。
「アナ! アナ!」
『あら、香桜いらっしゃい』
「アナ、私明日帰るんだ。今までありがとね」
リオの大事な白馬『アナ』に、私はお別れを言いにきた。いざサヨナラとなるとやっぱり名残惜しくなる。
アナには色んなことを話したり、いっぱいお世話になったから。
『そうなのね? 寂しくなるわ』
「またいつか遊びにくるから」
『でも、きっとリオとあなたの家に行くと思うわ。リオはあなたに夢中だもの』
アナの言葉に私は少し顔が赤くなる。
ここまで率直に『好き』を表してくる男性とは今まで出会ったこともなかった。
アナが言う通り、リオが私をすごく求めてくれているのは確かだ。
「あ、私……実は山の向こうの街で学生寮に入ることになったの。だからリオやあなたとはもう……」
私はリペンドールの家には休暇中しか帰らないつもりである。
だから、どれだけリオがソアの屋敷を訪ねても、私はそこにはいない。
『中々会えなくなるのね』
「うん」
アナは急にうーんと顔を傾けて悩んでいる様子が見られた。
そんなに私と別れるのが寂しい?
『香桜はリオのこと好きじゃなかったのかしら?』
「えっ……」
『だって嫌だから離れるんでしょう? 好きならここに住めばいいだけじゃない』
アナは不思議そうにそう尋ねてきた。
そっか、そっちか。
うまく説明できるかな。
「うーん、そういうことじゃないの。リオのことはたぶん好きな方だと思う。カッコいいとも思うし、ドキドキさせられることも沢山ある。でも、やっぱり私はこの世界の人間ではなくて、自立や個人の尊重を重視している国で育ったから、誰かに守られ続けて与えられるだけ、とかは基本的に受け入れられない。まぁ貴族の柄でもないしね」
私はなるべく自分の思っていることを正直に話してみた。アナに通じただろうか。
『そうなのね。でもそんな生き方も素敵だと思うわ』
「ありがとう! もう少し成長したら胸張ってアナに会いにくるから、それまで待っていてくれると嬉しい」
こちらこそ、ありがとうだよ、と言うアナに私は抱きついて、別れを惜しんだ。
一生のお別れじゃないから……また必ず会いにくるからと。
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