19 / 46
第二章
十九話
しおりを挟む
ふわふわと安らぐ背中の感触。
ここは暖かくて心地良い。
私は今、寝ているのだろうか?
心配そうにしているリオの顔が近づくたび、口に柔らかい感触が増える。
これは私が見ている夢なのかな?
「ん……」
大きくて、でも優しい手が何度も私の顔を撫でた。
ハァとため息混じりの吐息が私の顔にかかり、また唇が重なる。
「ソア……」
まるで猫のような、綺麗な金色の目。
男性にしては前髪は少し長め、艶のある黒髪が顔にかかっていて、妙な色気を醸し出している。
まだ、あどけなさも残る少年の整った顔が、何度も何度も私の唇を奪った。
「……あれ?」
ちょっと夢にしてはリアル過ぎじゃない? と思った時にはすでに時遅し、軽いキスだったものが急に濃厚なキスへと変わっていって、思わず変な声が出る。
「リ……や、やめ……」
こういう時のリオは終始無言だ。
真顔で行為に及ぶリオの姿に、女である私の体は反応し、背筋がゾクゾクッとした感覚が止まらない。
これが恐怖ゆえのものなのか、それともまた別の何かの感情であるのか、今の私にそれをしっかりと見極める勇気はなかった。
まだ理性が働く私は、とにかく止めてもらおうと、手でリオの肩を押し返そうとするが、彼の体は微動だにしない。
舌が絡むキスは、思っていたよりもずっとイヤラしくて、つい全身に力が入ってしまう。
敏感になった体が動くたび、挫いた足が悲鳴をあげ、たまらず「いたっ!」と声が出たところで、やっとリオの動きが止まった。
「ごめん、抑えられなくなって……本当もう、帰ってこねーのかと思った。ちょっと頭冷やしてくるわ」
リオはそう言うと部屋を出ていった。
(私、あのあと……馬さんの上で気を失って……?)
自分の体を見てみると、雷鳥の突風で擦り傷を負った所はガーゼにより処置がされており、捻った足首には包帯が綺麗に巻かれていた。
誰かが手当てをしてくれたようだ。
(心配……かけたのかな)
私はとりあえず壁にかかっている時計を見た。
今はすでに夜中の2時を回っているようだ。
一体どのくらい寝ていたのだろうか。
そして自分の姿をよくよく見てみると、服が制服からネグリジェに変わっているではないか。
いや、きっと今回もメイドさんが……以下略。
(あれ? ポケットに入れてた『ソアの手紙』はどこに?)
私は手紙を探そうと慌てて起き上がろうとし、またもや足首の激痛で今度はベッドから落ちた。
「い……いた!」
一体自分は何をやっているのだろう。
私の落ちた音に気づいたのか、リオがまた慌てた様子で部屋へと戻ってきた。
「人が頭冷やしている間に、お前はなにやってんだよ! まだ歩くな!」
頭冷やすって、音がしてから部屋に来るの随分早くない?
ずっとドアの前にでもいたのか?
リオは床に座り込んでいた私を抱き抱える。
これはそう、俗に言う『お姫様抱っこ』だ。
私はびっくりしてリオの顔を見るも、彼の真剣になった顔があまりにも格好良くて、思わず赤面してしまう。
恥ずかしくなった私はあからさまに目を逸らした。
リオはそんな私の様子に「おや?」とわざとらしい笑みを浮かべる。
「やっと俺に惚れたか」
「ち、違う! から……」
そんなんじゃないから!
ちょっと不意打ちくらっちゃっただけで……。
それよりも早くおろしてほしい。
すると、リオは私を抱っこしたままベッドにストンと座った。
って、なんでそうなるねん!
私はたまらず、彼の上からずるずると足を引きずり逃げ出す。
これ以上は心臓が保たんのです。
「リオ、もしかして寝てないの?」
「ああ」
「少しでも寝なよ」
さぁ早く自分の部屋に帰るのじゃ。
私の精神安定のためにも。
「じゃあ隣で」
なんでだよ。
「自分の部屋でゆっくりすればいいのに」
「お前が気になって寝れねぇ」
足は捻ったけども、私は疲れていただけで別に普通に元気なんですよ。
まぁ実際かなり迷惑かけた自覚はあるけどね。
このベッド充分広いし、二人でも寝れなくはないが。
リオは私の横で仰向けにゴロンと転がる。
前髪が上がった顔は、なんつうかいつもと違い新鮮で、これはちょっと色気がやばいんでないかい?
(いやいや、違う違う。気のせい気のせい)
話題を変えねば……と!
「リオ……手紙見たの?」
「もちろん見た。お前のことは全部知りてぇ。好き過ぎか」
リオの言葉に私はまたもや赤面する。
今日はどうしたんだろう。
顔が熱い。
「正直、びっくりしたが……もしかして肩の文字ってお前の本名だったりする?」
「……うん」
「ふ~ん……まぁ名前とか前世とか、正直どっちでもいい。お前はお前」
……今日はもう顔の火照りが引きませんね。
素直に嬉しいと言えればいいのに。
自分のこの難しい性分よ。
「あれ? 手紙見つけたってことは、じゃあ手当てしてくれたり、着替えさせたのはまさか……」
「いや、それはメイド。馬から下ろす時にポケットから落ちたから見た」
「あ、そう」
(思ったより紳士)
「生肌見たら、寝ててもどんなに嫌がっても襲っちまうし」
全然違った。やっぱ鬼畜。
ここは暖かくて心地良い。
私は今、寝ているのだろうか?
心配そうにしているリオの顔が近づくたび、口に柔らかい感触が増える。
これは私が見ている夢なのかな?
「ん……」
大きくて、でも優しい手が何度も私の顔を撫でた。
ハァとため息混じりの吐息が私の顔にかかり、また唇が重なる。
「ソア……」
まるで猫のような、綺麗な金色の目。
男性にしては前髪は少し長め、艶のある黒髪が顔にかかっていて、妙な色気を醸し出している。
まだ、あどけなさも残る少年の整った顔が、何度も何度も私の唇を奪った。
「……あれ?」
ちょっと夢にしてはリアル過ぎじゃない? と思った時にはすでに時遅し、軽いキスだったものが急に濃厚なキスへと変わっていって、思わず変な声が出る。
「リ……や、やめ……」
こういう時のリオは終始無言だ。
真顔で行為に及ぶリオの姿に、女である私の体は反応し、背筋がゾクゾクッとした感覚が止まらない。
これが恐怖ゆえのものなのか、それともまた別の何かの感情であるのか、今の私にそれをしっかりと見極める勇気はなかった。
まだ理性が働く私は、とにかく止めてもらおうと、手でリオの肩を押し返そうとするが、彼の体は微動だにしない。
舌が絡むキスは、思っていたよりもずっとイヤラしくて、つい全身に力が入ってしまう。
敏感になった体が動くたび、挫いた足が悲鳴をあげ、たまらず「いたっ!」と声が出たところで、やっとリオの動きが止まった。
「ごめん、抑えられなくなって……本当もう、帰ってこねーのかと思った。ちょっと頭冷やしてくるわ」
リオはそう言うと部屋を出ていった。
(私、あのあと……馬さんの上で気を失って……?)
自分の体を見てみると、雷鳥の突風で擦り傷を負った所はガーゼにより処置がされており、捻った足首には包帯が綺麗に巻かれていた。
誰かが手当てをしてくれたようだ。
(心配……かけたのかな)
私はとりあえず壁にかかっている時計を見た。
今はすでに夜中の2時を回っているようだ。
一体どのくらい寝ていたのだろうか。
そして自分の姿をよくよく見てみると、服が制服からネグリジェに変わっているではないか。
いや、きっと今回もメイドさんが……以下略。
(あれ? ポケットに入れてた『ソアの手紙』はどこに?)
私は手紙を探そうと慌てて起き上がろうとし、またもや足首の激痛で今度はベッドから落ちた。
「い……いた!」
一体自分は何をやっているのだろう。
私の落ちた音に気づいたのか、リオがまた慌てた様子で部屋へと戻ってきた。
「人が頭冷やしている間に、お前はなにやってんだよ! まだ歩くな!」
頭冷やすって、音がしてから部屋に来るの随分早くない?
ずっとドアの前にでもいたのか?
リオは床に座り込んでいた私を抱き抱える。
これはそう、俗に言う『お姫様抱っこ』だ。
私はびっくりしてリオの顔を見るも、彼の真剣になった顔があまりにも格好良くて、思わず赤面してしまう。
恥ずかしくなった私はあからさまに目を逸らした。
リオはそんな私の様子に「おや?」とわざとらしい笑みを浮かべる。
「やっと俺に惚れたか」
「ち、違う! から……」
そんなんじゃないから!
ちょっと不意打ちくらっちゃっただけで……。
それよりも早くおろしてほしい。
すると、リオは私を抱っこしたままベッドにストンと座った。
って、なんでそうなるねん!
私はたまらず、彼の上からずるずると足を引きずり逃げ出す。
これ以上は心臓が保たんのです。
「リオ、もしかして寝てないの?」
「ああ」
「少しでも寝なよ」
さぁ早く自分の部屋に帰るのじゃ。
私の精神安定のためにも。
「じゃあ隣で」
なんでだよ。
「自分の部屋でゆっくりすればいいのに」
「お前が気になって寝れねぇ」
足は捻ったけども、私は疲れていただけで別に普通に元気なんですよ。
まぁ実際かなり迷惑かけた自覚はあるけどね。
このベッド充分広いし、二人でも寝れなくはないが。
リオは私の横で仰向けにゴロンと転がる。
前髪が上がった顔は、なんつうかいつもと違い新鮮で、これはちょっと色気がやばいんでないかい?
(いやいや、違う違う。気のせい気のせい)
話題を変えねば……と!
「リオ……手紙見たの?」
「もちろん見た。お前のことは全部知りてぇ。好き過ぎか」
リオの言葉に私はまたもや赤面する。
今日はどうしたんだろう。
顔が熱い。
「正直、びっくりしたが……もしかして肩の文字ってお前の本名だったりする?」
「……うん」
「ふ~ん……まぁ名前とか前世とか、正直どっちでもいい。お前はお前」
……今日はもう顔の火照りが引きませんね。
素直に嬉しいと言えればいいのに。
自分のこの難しい性分よ。
「あれ? 手紙見つけたってことは、じゃあ手当てしてくれたり、着替えさせたのはまさか……」
「いや、それはメイド。馬から下ろす時にポケットから落ちたから見た」
「あ、そう」
(思ったより紳士)
「生肌見たら、寝ててもどんなに嫌がっても襲っちまうし」
全然違った。やっぱ鬼畜。
24
お気に入りに追加
438
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる