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第四項

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 ここから一番初めの場面へと巻き戻る。
 私がこの自意識過剰の美少年ハナと一年間をセットで過ごし、進級時にクラス替えを期待するも、希望はバッサリと絶たれ、またハナと同じクラスになった高校二年の春だ。

「黙っていてごめん……でも本当なんだ」
 初めて出会った一年前の同じ季節、あの時よりはこの目の前の男とも、少しは意志を通わせるようにもなったであろうというこの時に、私は彼からとんでもない爆弾発言と現実を突きつけられた。

「あなたは美人だ、ここの理事長の娘でもある。だが一人娘、将来は伴侶を持ち、次の後継ぎを産まねばならない……あなたの母君のように。俺は小堂家の次男で、子どもの頃から花が婚約者だと養子に入るのだとずっと言われていた。だけど、そういうの嫌で避けてきたから、中学も公立に行った。高校からあなたと同じ所に入れられたけど……それからは分かるよね」

 ハナから聞かされた事実に、私は衝撃を受けたのだろう。
 何も言葉が出なかった。
 頭が真っ白になったのだ。
 ハナが私の婚約者? 
 子どもの頃からハナは知っていて……私は、何も知らされてなかった……なぜ。

「ハナのこと私は……ごめんなさい、分かりません、ごめんなさい」
 私は学校の裏門へと駆け出した。
 ハナから逃げたのだ。
 このまま現実からも逃げたかった。

 意味がわからない。
 意味がわからない。

 迎えの車の所にもこの学園にもいたくない。
 いてはいけない気がしてとにかく走った。
 走って走って……。

「クラス替えがダメだったどころの話じゃないじゃない……ハナはこれから一生私に付き纏うの?」
 私は落胆した。
 それはもうどん底に。
 ハナは美少年だ、頭も良い。
 女子からアタックされても断り続けていた。
 私といつもセットで……本当になぜだろうと思っていた。

 周りから見たら私はきっと恵まれているのだろう。
 だってどう見たってハナは高スペック……でも、何かが抜けている……何かが違う気がして、気持ちが悪かったのだ。
 その何かが何なのか、今の私にはわからない。
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