隠し村の狐神〜異類婚姻譚〜

みなみ抄花

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最終章

四十話

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 シンラは私を見つめる。
 人間離れした美しさと威厳はそのままに。
「ねぇ、志帆が異国に行く前に……ダメかな?」
 あ、そうか、しばらく会えなくなるんだ。
 それに……わかくさ村で揉めて、実はあれからシンラと一度もそういった行為をしていなかった。
 ここは隠し村からかなり距離があるので、シンラもそこまで頻回には出張に来れなかったし、それ以前に私が忙しすぎたせいもある。

「そ、その……もちろん良いのですけど、なんか久しぶりすぎて心の準備が……」
「大丈夫、俺の目を見て、志帆……」
 今は六畳しかない部屋のベッドの上。
 シンラに顎をそっと指で上げられ、ゆっくりと口を重ねられた。
 そしてシンラの舌が、私の中へと少しずつ入ってきて優しく絡む。
「んん……」
 シンラとの久しぶりのキスに、私の体はとにかく火照った。
 時間をかけ、じっくりと満たしてくる快感。
 それと同時に、私の息づかいも少しずつ荒くなっていった。
 自分でも、シンラに発情しているのがはっきりと分かる。
  
「ま、まって……人間の姿のシンラにちょっとまだ慣れなてなくて……その……いつもより動悸が……」
「あぁ、俺もだよ。志帆の私服は、神の家でも何度か見たけど、今のその短いヒラヒラした腰巻きは、本当に最高だから」
「これは、ミニスカートと言いましてね……んん」
 今度は少し激しめに口を重ねられた。
 快感が強くなった愛撫に翻弄され、だんだんと意識が朦朧もうろうとしてくる。
 そしてシンラの手は、いつの間にか私の太ももを掴み上げていて、今の自分がとても恥ずかしい格好をさせられていることに気づいた。
 自分の下半身に、シンラの綺麗な顔が近いのだ。
 そんなことを意識するだけで、体の中が勝手に疼く。
 先ほどからずっと、激しい動悸がおさまらない。
「この服の中のショーツは前から好き。すごくそそられるカタチをしているから……ほら、何かみて……」
「い、いちいち口に出さないでくださいっ」
 私はシンラに見られていた部分を、慌てて両手で隠した。
 が、手なんかすぐに外されてしまう。
「隠しちゃだ~め、でしょう?」
 自分の足の間から覗く、シンラの上目遣い。
 火照った頬と、まつ毛の長い綺麗なシンラの瞳が、異様な色気を醸し出していて、私の心はもう彼の虜である。

 最初の婚姻儀の時は、この神が本当に怖かった……それなのに、今シンラとこうなっているのが不思議でならない。
 だって、私の体はもうシンラなしでは居られないほどに、彼色へ染められている。
「人間の姿って不便かなって思ったけど、尻尾がないから意外と動きやすそうなんだよね。抵抗力が少なくて」
「ん?」
 ぽ~っとしてしまった私の頭は、入ってくるシンラの言葉も少ない。
 何が動きやすいのだろうとしばらく考えていたら、シンラの片手に握られている私のショーツが目に入った。
(うそ、いつのまに……)
「俺のが志帆の中に入ったら、尻尾がない方が動きやすそうだなってのこと。さて、今までの分とこれからお預けの分と……朝までいっぱいいっぱい愛してあげるから、今日は覚悟するんだよ?」
 そう言って、シンラは私の太ももにキスをしたあと、スカートの中に顔を埋め出した。
 
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