隠し村の狐神〜異類婚姻譚〜

みなみ抄花

文字の大きさ
上 下
29 / 41
第三章

二十九話

しおりを挟む
 体が筋肉痛。
 腰も痛いし、今日はもう動けない。
 シンラとの行為中に気を失ってから、どれだけ時間が経ったのかは知らないが、私は意識が戻っても布団から出れないでいる。
(ベニモモちゃんもあれから全然起きませんし……)

「奥方、大丈夫でございますか?」
「サノメ……全然大丈夫じゃありませぇん」
 お日様がだいぶ上がっているので、もう昼に近いのだろう。
 目が覚めたらすでにシンラの姿はなかったが。
「サノメ、シンラは……?」
「数時間前に燈倭とうわ様と村を見回りに……」
 本当になんて元気なんだろう。
 このままシンラに体を合わせていたら、私はいつか衰弱死しそうだ。
 そして、またトウワさんに要らぬ艶話をしているんでしょうね……あぁ、もう! 恥ずかしいったらない!
 
 私は体を綺麗に流した後、サノメの用意してくれた、かな~り久しぶりの食事をとっていると、昇降機の方で音がした。
 どうやら問題のシンラが帰ってきたようだ。
「志帆、起きたの?」
「……おそおうございます。おかげさまで体中がだるくてあちこちが痛いです」
 私はむすっとした表情をしてシンラの方を見た。
 シンラは少し照れながら、済まなそうな顔をしているが、私の辛さが本当にわかっているかは疑問だ。

「昨日は、志帆の体が良すぎで止まらなかった」
「なっ!」
 サノメがいる前で、恥ずかしげもなくそういうこと言うのは、本当にやめてください。
 私は昨晩のことを思い出して、シンラの顔をまともに見れず、思わず顔を背けてしまった。
 シンラはそんな私の様子を気にして横に座ってくると、今度は私の手の甲に自分の口に当てながら、上目遣いで顔を覗いてくる。
「ねぇ、志帆……本当だよ?」
「そ、そういうことが言いたいのではなくてですね……」
 だから、その顔はダメですってば。
 無駄に胸がきゅんきゅんしてしまうんです。
 そして、サノメは気を遣ってくれたのか、気づくともうこの場にはいなかった。

紅百べにももが起きない今しかないしさ。ご飯食べて体力つけて?」
「うぅ、ベニモモちゃんは当分起きないのでしょうか……」
 思ったより長く寝ているので、少し心配になってしまいます。
 シンラは私の腹に耳を当てて、中の様子を伺っている。
「……寝ているね。昨日のことで随分と消耗したようだ。まだエネルギーをうまく蓄えられないんだろう」
 シンラたちは基本的に山からエネルギーをとっているんでしたっけ?
 そこのコントロールが、ベニモモちゃんにはまだうまく出来ないのかもしれませんね。
 このまま寝かせてあげましょう。
 ベニモモちゃんが休んでいることで、ストッパーのないシンラの行動が気がかりではありますが。
 今も太ももの辺りで何かゴソゴソしていますし……。


 食事が終わっても、シンラは私の膝の上に頭を乗せながら、床の上で仰向けに横になっていた。
 そして、子どもみたいに甘えてくる。
「志帆、いい匂いがするね」
「……一応、体は流しましたから」
 シンラ、今日はもう出かけないのでしょうか。
 今のシンラは昨日と違って、なんか可愛いですけどね。
 昨晩は性欲にとめどない男性そのものでしたから、終わりが見えなくて少し怖かったです。
 実際、気を失うまで何度突かれたことか……うぅ、思い出したら恥ずかしくてシンラの顔が見れません。
「志帆ぉ、ご飯食べたら……さぁ」 
「……言っときますが、昼間から致しませんよ?」
「えぇー?」
 はい、前言撤回です!
 やはりシンラはシンラでした。

「志帆が途中で寝てしまったから、まだ物足りなかった……」
「あれだけ致して……信じられません……」
 ……性欲お化けかな?
 それとも狐神というのは皆、そういう感じなのでしょうか。
「人間の女をめとったら、みんな自分の階層から出てこなくなるわけだよねぇ……」
 ひゃぁ……やはり狐神は、みな性欲お化けなんですね。狐の神は恐ろしいです。
 
「ハァ、なんで志帆はこんなにエロいんだよ」
「別にエ、エロくなんか……!」
 服装だって今はきちんとしてますし、そんな破廉恥な格好していた覚えは……まぁ少し前に裸で床に四つん這いになっていたこともありましたが、とにかくいつもは露出をきちんと控えているはずです!
「……自覚ないの? 俺の目を見るたびに顔赤らめてさ、もう呼吸してるだけでエロいんだよ」
「息しているだけでエロいとか言われてしまったら、どうしょうもありませんよっ!」
 それに顔が赤くなってしまうのは、それもこれもシンラがとてつもなく綺麗だから……目が合うたびに無駄にドキドキしてしまうんです。
「どうもしなくて良いよ。奥さんがエロいとか最高……あぁ、もう我慢できない」
「ちょっ……もう昼間からダメですって!」
 たった二週間抑えただけで、普通こうなってしまうものなんですか?!
 この後の私は、シンラにパンツを取られまいと必死でした。
 もう、本当昼間から何をやっているんだかっ!
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初めから離婚ありきの結婚ですよ

ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。 嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。 ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ! ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

この度、運命の番に選ばれまして

四馬㋟
恋愛
※章ごとに主人公が変わるオムニバス形式 ・青龍の章: 蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。 ・朱雀の章: 美麗(みれい)は疲れていた。貧乏子沢山、六人姉弟の長女として生まれた美麗は、飲んだくれの父親に代わって必死に働き、五人の弟達を立派に育て上げたものの、気づけば29歳。結婚適齢期を過ぎたおばさんになっていた。長年片思いをしていた幼馴染の結婚を機に、田舎に引っ込もうとしたところ、宮城から迎えが来る。貴女は桃源国を治める朱雀―ー炎帝陛下の番(つがい)だと言われ、のこのこ使者について行った美麗だったが、炎帝陛下本人は「番なんて必要ない」と全力で拒否。その上、「痩せっぽっちで色気がない」「チビで子どもみたい」と美麗の外見を酷評する始末。それでも長女気質で頑張り屋の美麗は、彼の理想の女――番になるため、懸命に努力するのだが、「化粧濃すぎ」「太り過ぎ」と尽く失敗してしまい……

処理中です...