19 / 41
第二章
十九話
しおりを挟む
シンラが持ってきてくれたウィッグが綺麗に洗えたので、そのまま湯屋の端に干した。
外に出して、もし村の誰かに見られたら意味がないので、そこは念のために……ね。
「志帆、ついでにこのまま一緒に入るでしょう?」
「うん……」
久しぶりでちょっと恥ずかしいけれど。
これからシンラと夫婦でやっていくなら、これくらいは自然にできるようにならないとね。
一緒にお風呂に入るだけ……普通に普通に。
「せっかくだし、お互い洗いっこしようか」
ひぇ……シンラの一言で、いきなり入浴のハードルが上がりました。
洗いっこということは、私がシンラの体を洗うということですか?
つまり体を触るということですよね?
うーん……あ、でも背中や尻尾だけなら良いかもしれないです!
普段、世話になっている恩返しにもなりますし。
「よし! ならば私に任せてください!」
「えっ……志帆、本当に? まじで?」
「では、尻尾の方から失礼しますっ」
私は石けんをもって、シンラの後ろに回った。
うわぁ……シンラの尻尾、ちゃんと数えたらやっぱり九尾ある。
トウワさんの言っていたとおりだった。
いつもフサフサがいっぱいあるなぁとは思っていたけど、こうやって改めて見ると、本当に狐の神様なんだなぁと実感させられた。
(うーん、私ごときが狐神の象徴である尻尾を気軽に触って、本当に良いのでしょうか。今更ですが、少し不安になってきました)
でも、やると言ったからには、最後までやらないとね。
私は石けんを手でいっぱい泡立てたあと、シンラの尻尾を両手で一つずつ優しく洗っていった。
九尾もあるから、モタモタはしていられない。
けれど、私の指がシンラの尻尾に触れるたびに、なぜかビクッと反応して、あさっての方向へ行ってしまうのだ。
それを慌てて手で追いかけるのだけど、たまにバシッと顔や体に跳ね返ってくることもあって、つい変な声を上げてしまう。
(待って待って! なんでそんなに動くの?!)
仕方ないので、根本を少し強めに持って、片手で優しく撫でるように洗った。
「あのさ、志帆……俺もう我慢できないんだけど」
「へ?」
「その触り方……わざとやってるの?」
わざとって……?
頑張って普通に洗っているだけなんだけど。
……ん?
って、シンラさん、何で今そちらの方が臨海体制に……?
「尻尾の根本って、普通に性感帯なんだけど」
「えっ?! うそっ、そうなの? ごめん!」
ま、まじですか?
知らなかった……だって、私には尻尾がないから、そんなことになっているなんて、思ってもいなかったんですもの。
それなのに、めちゃくちゃ掴んだり揉み込んだりしてしまった。
「こうなった責任は、もちろん志帆が取ってくれるんだよね?」
綺麗な顔で意地悪ぽっく笑うシンラと、下の状態の強烈なギャップが、私の羞恥心に限界を与えて爆発しそう。
なんだか頭がクラクラしてきた。
シンラは尻尾にしたように、こちらにもお願いしますとか、美麗スマイルでとんでもないこと言ってきますし!
◇ ◇ ◇
そして、濃~い入浴の時間が終わり、私の疲労度はいつもにも増して上がっていた。
考えてみたら、朝からずっとフェイクファーを作り続けていて、体力的にもそろそろ限界なんですよね。
「湯屋では志帆に任せちゃったから、今度は俺の番ね? というわけで、お疲れの志帆にマッサージをしてあげよう」
「ありがたいけど……変なところは触らないでね」
「えー……分かった」
シンラが肩や背中を適度に揉んだり指で押してくれる。これけっこう気持ちいい。
少しずつ体の凝りがほぐれていく感じ?
体がポカポカしてきて、私は少し眠くなってきた。
「志帆、目がとろんとしてる」
「ひゃっ!」
シンラにいきなりお尻を強めに掴まれて、私は思わず声が出た。
ちょっとシンラさん!
さっきの「分かった」って言葉は、どこにいったんですか?!
「お尻のマッサージは結構ですっ!」
「これは、志帆が俺の尻尾をいっぱい触ってくれたから、そのお返しだよ」
「うぅ、だって知らなかったんだもん……本当ごめんなさい」
「別に嬉しかったから……それに言ったでしょう? 俺の体はどこでも触って良いって」
後ろから低めに出した声で耳元に囁かれたら、変に体がゾワゾワっとしてしまう。
最近のシンラってどうしてこう、私に甘いんだろう。
「……ん? 志帆も準備万端みたいだから、このまま後ろから始めちゃおっ」
そんな無邪気な顔をして、無邪気とは程遠いことをしないでください、神様。
外に出して、もし村の誰かに見られたら意味がないので、そこは念のために……ね。
「志帆、ついでにこのまま一緒に入るでしょう?」
「うん……」
久しぶりでちょっと恥ずかしいけれど。
これからシンラと夫婦でやっていくなら、これくらいは自然にできるようにならないとね。
一緒にお風呂に入るだけ……普通に普通に。
「せっかくだし、お互い洗いっこしようか」
ひぇ……シンラの一言で、いきなり入浴のハードルが上がりました。
洗いっこということは、私がシンラの体を洗うということですか?
つまり体を触るということですよね?
うーん……あ、でも背中や尻尾だけなら良いかもしれないです!
普段、世話になっている恩返しにもなりますし。
「よし! ならば私に任せてください!」
「えっ……志帆、本当に? まじで?」
「では、尻尾の方から失礼しますっ」
私は石けんをもって、シンラの後ろに回った。
うわぁ……シンラの尻尾、ちゃんと数えたらやっぱり九尾ある。
トウワさんの言っていたとおりだった。
いつもフサフサがいっぱいあるなぁとは思っていたけど、こうやって改めて見ると、本当に狐の神様なんだなぁと実感させられた。
(うーん、私ごときが狐神の象徴である尻尾を気軽に触って、本当に良いのでしょうか。今更ですが、少し不安になってきました)
でも、やると言ったからには、最後までやらないとね。
私は石けんを手でいっぱい泡立てたあと、シンラの尻尾を両手で一つずつ優しく洗っていった。
九尾もあるから、モタモタはしていられない。
けれど、私の指がシンラの尻尾に触れるたびに、なぜかビクッと反応して、あさっての方向へ行ってしまうのだ。
それを慌てて手で追いかけるのだけど、たまにバシッと顔や体に跳ね返ってくることもあって、つい変な声を上げてしまう。
(待って待って! なんでそんなに動くの?!)
仕方ないので、根本を少し強めに持って、片手で優しく撫でるように洗った。
「あのさ、志帆……俺もう我慢できないんだけど」
「へ?」
「その触り方……わざとやってるの?」
わざとって……?
頑張って普通に洗っているだけなんだけど。
……ん?
って、シンラさん、何で今そちらの方が臨海体制に……?
「尻尾の根本って、普通に性感帯なんだけど」
「えっ?! うそっ、そうなの? ごめん!」
ま、まじですか?
知らなかった……だって、私には尻尾がないから、そんなことになっているなんて、思ってもいなかったんですもの。
それなのに、めちゃくちゃ掴んだり揉み込んだりしてしまった。
「こうなった責任は、もちろん志帆が取ってくれるんだよね?」
綺麗な顔で意地悪ぽっく笑うシンラと、下の状態の強烈なギャップが、私の羞恥心に限界を与えて爆発しそう。
なんだか頭がクラクラしてきた。
シンラは尻尾にしたように、こちらにもお願いしますとか、美麗スマイルでとんでもないこと言ってきますし!
◇ ◇ ◇
そして、濃~い入浴の時間が終わり、私の疲労度はいつもにも増して上がっていた。
考えてみたら、朝からずっとフェイクファーを作り続けていて、体力的にもそろそろ限界なんですよね。
「湯屋では志帆に任せちゃったから、今度は俺の番ね? というわけで、お疲れの志帆にマッサージをしてあげよう」
「ありがたいけど……変なところは触らないでね」
「えー……分かった」
シンラが肩や背中を適度に揉んだり指で押してくれる。これけっこう気持ちいい。
少しずつ体の凝りがほぐれていく感じ?
体がポカポカしてきて、私は少し眠くなってきた。
「志帆、目がとろんとしてる」
「ひゃっ!」
シンラにいきなりお尻を強めに掴まれて、私は思わず声が出た。
ちょっとシンラさん!
さっきの「分かった」って言葉は、どこにいったんですか?!
「お尻のマッサージは結構ですっ!」
「これは、志帆が俺の尻尾をいっぱい触ってくれたから、そのお返しだよ」
「うぅ、だって知らなかったんだもん……本当ごめんなさい」
「別に嬉しかったから……それに言ったでしょう? 俺の体はどこでも触って良いって」
後ろから低めに出した声で耳元に囁かれたら、変に体がゾワゾワっとしてしまう。
最近のシンラってどうしてこう、私に甘いんだろう。
「……ん? 志帆も準備万端みたいだから、このまま後ろから始めちゃおっ」
そんな無邪気な顔をして、無邪気とは程遠いことをしないでください、神様。
1
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

初めから離婚ありきの結婚ですよ
ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。
嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。
ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ!
ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

この度、運命の番に選ばれまして
四馬㋟
恋愛
※章ごとに主人公が変わるオムニバス形式
・青龍の章:
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。
・朱雀の章:
美麗(みれい)は疲れていた。貧乏子沢山、六人姉弟の長女として生まれた美麗は、飲んだくれの父親に代わって必死に働き、五人の弟達を立派に育て上げたものの、気づけば29歳。結婚適齢期を過ぎたおばさんになっていた。長年片思いをしていた幼馴染の結婚を機に、田舎に引っ込もうとしたところ、宮城から迎えが来る。貴女は桃源国を治める朱雀―ー炎帝陛下の番(つがい)だと言われ、のこのこ使者について行った美麗だったが、炎帝陛下本人は「番なんて必要ない」と全力で拒否。その上、「痩せっぽっちで色気がない」「チビで子どもみたい」と美麗の外見を酷評する始末。それでも長女気質で頑張り屋の美麗は、彼の理想の女――番になるため、懸命に努力するのだが、「化粧濃すぎ」「太り過ぎ」と尽く失敗してしまい……


タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる