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第二章
十二話
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(シンラ、本当に戻ってきませんね……)
あれから私はずっと屋上で土いじりをしている。
サノメが一緒に手伝ってくれているけど、あのわかくさ村のガーデンのようにできるかは不安だ。
「……ま、まぁ、そもそもこの景観で、あのイングリッシュガーデンを再現するには無理がありますが……」
「奥方、いんぐりっしゅがあでんとは何ぞ?」
サノメは不思議そうにしていたが、異国の庭の様式の一つだと伝えると少しは納得していた。
この村から出たことがないサノメにとっては、世界や国際社会などと言った事情は未知すぎる話題だろう。
「私、仕事は事務ばかりでしたから、こういうの憧れていたんです。でも東京じゃ、庭付き一戸建てを借りたり買ったりは中々難しいですしね」
せいぜい植木鉢を買って、種や球根を植えたらベランダや室内に置くくらいである。
「ほう、奥方はとうきょうから来た女子でありましたか。やたら人の多い危険な場所だと聞いておりますゆえ」
「そう……かな。まぁ人が多いのは確かですけどねぇ」
しかし、サノメの両手で土掘りをしている姿、こうみると狐さんそのものですね。
とても可愛いらしいです。
猫の置物に対しては神妙な顔をしていましたけども、申し訳ないことに狐グッズは買ってなくてですね。
「奥方、これは土を固めて焼いた陶器のようです。材料を集めるので、ぜひ狐を作っていただきたく」
「え、この置物は私が作った作品ではなくて……挑戦してみても良いですけど、うまく作れるかどうか分からないですよ?」
サノメはそれでも良いと言っていた。
種や球根をある程度植え終えたら、下に戻って作ってみますかね。
焼き窯がどこにあるかは知らないのだけど、村の方にはあるのかな。
◇ ◇ ◇
数時間ほど熱中していたら、だいぶ日が傾いていた。
ある程度キリの良いところまで進んだので、屋上の作業はもう終いにしようと、サノメと二人で下へ降りる。
サノメがいたから、昇降機を使用できた。
「サノメ……シンラが結界の入口が消えたと言っていましたけど、こんなこと過去にもあったんですか?」
「サノメが生きている間には聞いたことがありませぬ。そもそもあの入口は人間をこちら側に引き込むための場所ですゆえ、単純に人間世界との契約が切れたことを指すかと」
人間を隠し村に引き込むための……まぁシンラは全国を回っていましたし、狐神は出入り自由ですものね。妖狐は分からないけども。
今さらだけど、隠し村ってどんな感じの村なんだろう?
そういうことも私は全然知らないんですよね。
なんせ、ここを出て行ってはいけない決まりになっているもので……。
「人との契約が切れると、どうなるの?」
「どうもしませぬ。天変地異が起きるとか」
「えっ、それは……」
全然どうもしなくない。
天変地異って相当な危機ですよ?
「こちら側は異界なので、とくに問題もなく……」
「でも、向こうは?」
「分かりませぬ。火山噴火か大地震、かたや病の蔓延など、ただ神が守ってやれないだけで」
「そんな……」
そういえば、シンラたちの守っている範囲ってどのあたりなんだろう。山梨県のY山限定なのだろうか。
「狐神も万能ではないので、契約の切れた場所で起こる超自然的なことはどうにもできませぬ。ただ、神羅様と爽翠様はすでに嫁御を娶られておられるので、あと百年くらいは大丈夫かと思います。しかし、奥方お二人が何らかの理由で死去した場合は、おそらくその場で断ち消えとなるでしょう」
それって、私たちが存在することの責任がかなり重大になってくるんですけど……。
下手に怪我もできないじゃないですか!
あれから私はずっと屋上で土いじりをしている。
サノメが一緒に手伝ってくれているけど、あのわかくさ村のガーデンのようにできるかは不安だ。
「……ま、まぁ、そもそもこの景観で、あのイングリッシュガーデンを再現するには無理がありますが……」
「奥方、いんぐりっしゅがあでんとは何ぞ?」
サノメは不思議そうにしていたが、異国の庭の様式の一つだと伝えると少しは納得していた。
この村から出たことがないサノメにとっては、世界や国際社会などと言った事情は未知すぎる話題だろう。
「私、仕事は事務ばかりでしたから、こういうの憧れていたんです。でも東京じゃ、庭付き一戸建てを借りたり買ったりは中々難しいですしね」
せいぜい植木鉢を買って、種や球根を植えたらベランダや室内に置くくらいである。
「ほう、奥方はとうきょうから来た女子でありましたか。やたら人の多い危険な場所だと聞いておりますゆえ」
「そう……かな。まぁ人が多いのは確かですけどねぇ」
しかし、サノメの両手で土掘りをしている姿、こうみると狐さんそのものですね。
とても可愛いらしいです。
猫の置物に対しては神妙な顔をしていましたけども、申し訳ないことに狐グッズは買ってなくてですね。
「奥方、これは土を固めて焼いた陶器のようです。材料を集めるので、ぜひ狐を作っていただきたく」
「え、この置物は私が作った作品ではなくて……挑戦してみても良いですけど、うまく作れるかどうか分からないですよ?」
サノメはそれでも良いと言っていた。
種や球根をある程度植え終えたら、下に戻って作ってみますかね。
焼き窯がどこにあるかは知らないのだけど、村の方にはあるのかな。
◇ ◇ ◇
数時間ほど熱中していたら、だいぶ日が傾いていた。
ある程度キリの良いところまで進んだので、屋上の作業はもう終いにしようと、サノメと二人で下へ降りる。
サノメがいたから、昇降機を使用できた。
「サノメ……シンラが結界の入口が消えたと言っていましたけど、こんなこと過去にもあったんですか?」
「サノメが生きている間には聞いたことがありませぬ。そもそもあの入口は人間をこちら側に引き込むための場所ですゆえ、単純に人間世界との契約が切れたことを指すかと」
人間を隠し村に引き込むための……まぁシンラは全国を回っていましたし、狐神は出入り自由ですものね。妖狐は分からないけども。
今さらだけど、隠し村ってどんな感じの村なんだろう?
そういうことも私は全然知らないんですよね。
なんせ、ここを出て行ってはいけない決まりになっているもので……。
「人との契約が切れると、どうなるの?」
「どうもしませぬ。天変地異が起きるとか」
「えっ、それは……」
全然どうもしなくない。
天変地異って相当な危機ですよ?
「こちら側は異界なので、とくに問題もなく……」
「でも、向こうは?」
「分かりませぬ。火山噴火か大地震、かたや病の蔓延など、ただ神が守ってやれないだけで」
「そんな……」
そういえば、シンラたちの守っている範囲ってどのあたりなんだろう。山梨県のY山限定なのだろうか。
「狐神も万能ではないので、契約の切れた場所で起こる超自然的なことはどうにもできませぬ。ただ、神羅様と爽翠様はすでに嫁御を娶られておられるので、あと百年くらいは大丈夫かと思います。しかし、奥方お二人が何らかの理由で死去した場合は、おそらくその場で断ち消えとなるでしょう」
それって、私たちが存在することの責任がかなり重大になってくるんですけど……。
下手に怪我もできないじゃないですか!
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