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てくてく(てくてく)

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「女の子の服買って来い、っていわれてもなー」

 朝食の後、オレと鐵也は、母さんにいわれて買い物に出ていた。

 鐵也は、前、オレん家に来たときに置いてった私服、シャツにスラックスというラフな衣装。

 オレは、更に適当で、ジャージの上下に、野球帽、そして、首のチョーカー。

 ……何でジャージなのかって?

 仕方ないじゃん、男の時の服、全部ブカブカだし、女の子の服、他にないんだから!

(カチャカチャカチャカチャカチャカチャ)

「うー、慣れない……」

「あまりチョーカーを触るとかえって目立つぞ?」

「そうなんだけどさー」

 原因作ったのは鐵也じゃん、と責める気はないけど。

 理不尽。

 とか思ってたら。

「あら、鐵也くん、こんにちは」

「こんにちは」

 知り合いらしきお婆さんさんに挨拶されて、鐵也が笑顔で返礼してる。

「変わった髪色の外人さんだねえ」

 お婆さんは、エルフ耳のことは気にならないらしい。

 というか、これも母さんの精霊の仕業。

 不思議な電波を出して、意識改変で「ちょっとヘン」以上の感想を抱かせないようにしてるらしい。

 昨日、大騒ぎにならなかった理由はわかったけど。

 ……本当にいいのかな、それ?

「鐵也くんと外人のお嬢ちゃんは、これからデートかい?」

「ええ、オレのヨメです」

「そうかいそうかい、最近は恋人さんをそう呼ぶんだねえ」

「いえ、そういうわけでは……」

 鐵也とお婆さんがほのぼのと会話してる。

 うん。

 この紳士な少年が格闘やベッドの上だとアレほど猛々しいとは誰が予想できるだろうか。

 ははは。

 ん?

 何でそんな馬鹿みたいなこと考えてるのかって?

 そりゃあ。

 確かに、ヨメなんだけど、他の人の前で、改めてヨメっていわれるのがさ。

 何だか、ものすごく恥ずかしいというか、ムズムズするというか。

「ミレイ、照れてるのか?」

「……そーなんだけどさー」

 鐵也、鐵也、旦那様、頼むから、オレ、私、ヨメの痴態をいちいち観察、指摘しないでほしい。

 ものすっごく顔が熱くなるから。

 ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇

 学校より、更に2つ向こうの駅にあるアパレルショップの奥。

 女性下着売り場。

 方や、一面に並ぶブラ、ブラ、ブラ。

 方や、一面に並ぶショーツ、ショーツ、ショーツ。

 それも、子供ブラや子どもパンツじゃない。

 フリルやシースルー入の普通にエロいのばかり。

「……、……、……」

「さて、……どれにしようか」

「何で、鐵也平気なのさっっ?!」

「何で、恥ずかしがってるんだ?」

 正視できず思わず鐵也の裾を引いたら、逆に不思議そうに問われた。

「だって、……一昨日まで男だったし」

「あんなに昨日シたのに?」

 あーはいはい、確かに昨日、鐵也の、幼馴染(♂)のオチンポでメス落ち散々させられましたとも。

 膣内にたくさん出されて、体中弄られて、嬌声上げまくって、母さんにまでソレ見られてて……。

 ストップ、とりあえず、ストップ。

 とにかく。

 でもね。

 ソレとコレは別なんだって。

 昨日だって、下着も制服も着せてもらってばっかりだったし。

 自分で着たのは、このジャージくらい。

 男が、女の着替え覗いてるかのような。

 何だか、もの凄く悪いことしてる気がする。

「気にするな。これからずっとオマエ、女なんだから、しかもサイコーの」

「……(ぼっ)」

 鐵也の不意の一言に、再び頬から火が吹き出す。

「それにしても、何でそんなに慣れてんだよ?」

「そりゃあ……」

 何かをいいかけて、鐵也が視線を反らす。

 ……ん?

 何をいいかけたんだろう?

 でも、まあ、だいたい想像はつく。

「確かに、鐵也なら、女の子いくらでも寄ってくるだろうし」

 前に、可愛い子に幾度となく、言い寄られてるのを見たことがある。

 そんな環境なら、女の下着くらい、見たことなくても、案外、平気なんだろうな。

「いや、まあ、その、……向こうから迫られて、つい、その場限りでな」

「そっか」

 ……ん?

 待て、……何の話だ?

 ……えーと。

「もしかして、女性経験、豊富?」

「いや、豊富というか、……8人程度だが」

 鐵也が焦りながら指で数え、答えてくる。

 いや、マジか。

「……ミレイ?」

「いや、まあ、オレへの告白前のことだし?」

 オレが気にするようなことじゃない。

 だから、自分でも、不思議だと思う。

 何で、オレは、頬を膨らませてるんだろう。

 何で、オレは、怒ってるんだろう。

 何で、私は、涙が出てくるんだろう。

「……っ」

「え?」

 鐵也が突然、抱き寄せてきた。

 な、なになにっ?

「浮気して、すまなかった。でも、オレには、オマエが一番なんだ」

 な、何を……、そんなスケコマシの定番文句みたいな言葉で。

「すまない」

 ぎゅっと抱きしめながらいわれたって。

「……」

 その。

「……うん」

 鐵也をぎゅっと抱きしめ返す。

 鐵也が嘘を吐いてないことはわかってるし。

 私も鐵也を苦しめたいわけじゃない。

 だから。

 ……許すことにした。

 私たちは、そのまま、数分ほど、抱きしめあっていたのだった。



 しかし、それにしても、8人かあ。

 ……後で、どんな人だったのか、聞いてみよっと。(好奇心)
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