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まさか俺たちが敵地でくつろいでるなんて誰も思ってねえだろうな!
しおりを挟む厳かな教会の壇上には歴々がたち並び、その瞳には一様に鋭い眼光を浮かべている。
大司教ウォルムスは今まさに断罪されようとしていた。
理由は魔王の聖女誘拐を補助したという疑いがあるからだ。
だがそれはただ至極理不尽なこじつけだった。
入国した時点で初めてウォルムスは魔王と会ったというのに、それがあらかじめ仕組まれていたことなど、道理がひっくり返っても起きるはずがない。
クソ、クソ何で俺が……!
心中では罵詈雑言を吐くウォルムスだが、外面ではただただ手を握り締めることしかできない。
ここで文句を言えば、入念に異端審問が行われ、身体中を穴だらけにされた上、火あぶりで処刑されないからだ。
「して、ウォルムス……。此度の件どうやって責任を取るつもりだ」
「そ、それは……」
教皇はウォルムスに向けて、事実上の死の宣告を告げるが、彼はそれに答えることが出来ない。
周りの枢機卿以上の階位の聖職者たちがそんな彼を嘲るように笑みを浮かべ始めた。
ウォルムスが屈辱と絶望に捕らわれ始めると、教皇は口を開いた。
「自分で決められぬようなら、私が沙汰を下そう」
弛緩した空気から一転、場に緊張が走る。
「ウォルムス貴様には、手を貸した魔王の討伐を命じる。魔王の配下たちに次々と我ら教会の軍が打破され、もう大司教以上の者しか出向くものがいないのだ」
「そ、そんな……」
ウォルムスは膝から崩れ落ちそうになる。
教皇の裁定は一番ひどいものだった。
負けるとわかっているだろう場所に派遣する。それがどんな悲惨な結果を生むことかウォルムスは知っていた。
良くてボロボロになっての戦死、悪くてみせしめ拷問の果てに悶死。
どう転んでも最悪な結末しか用意されていない。
普通に処刑される方が100倍ましだ。
「きょ、教皇わたしは……」
「大司教は奮い立たれておられる。お前ら出陣の準備をして差し上げろ」
ウォルヌスが普通の処刑にしてくれと懇願しようとすると教皇が無慈悲にそう言い放ち、黒子たちが現れ、彼は絶望した顔でひきづられていく。
―|―|―
一方、魔王の拠点に派遣され戦死されたと思われている教会の聖職者たちは――。
「まさか派遣された俺たちが敵の拠点で晩酌させてもらってるなんて、誰も思ってねえだろうな!」
――敵地の異教徒たちと和気藹々と晩酌していた。
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