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温泉ダンジョン
しおりを挟む「温泉ダンジョン。 温泉スライムしか出ないとても安全なG級ダンジョン……」
「G級ダンジョンなんてあったのね」
俺が読み上げると、アリサが真顔でそういう。
「へえ、良さそうですね。僕スライム好きなんですよ」
「ははは!お前が好きな物を言うなんて珍しいな」
ちょうど背後にいた望月さんと谷崎さんの反応は悪くないしここでいいだろう。
---
旅館の男女別の脱衣所を降りていくと、人の膝あたりまである大きめのスライムたちが温泉の周りでふよふよと動いているのが見えた。
「すごいわね! 美肌効果あるわしいわよ、このスライム!」「かわいい!」
竹でできた仕切りの向こうから女性陣の黄色い歓声が聞こえてくる。
スライムたちは女性陣からは好評のようだ。
「大丈夫かこいつら、変なところに入ってこないよな」
谷崎さんがおっかなびっくり近づいていくのを皮切りにと、我々もスライムに近づいていくことにする。
「あ、スライムが逃げていく」
俺が近づくとスライムたちは怯えているのか、プルプル震えて逃げていってしまった。
無理強いをするのは良くないし、身体を洗って普通に風呂を堪能するか。
「ふふふ、かわいいな。君はヨシミ、君はクロケット、君はライデンだね」
身体を洗っていると望月さんがスライムに名前をつけて愛で始めた。
「触らなくてもいいんですか?」
「ふふふ、伊藤さん。僕は本当に好きなものに接触したくないんですよ。触れてしまうと僕の穢れが移ってしまいますからね」
率直な疑問を口にすると難儀な答えが返ってきた。
前からなんとなく感じていたが不器用な人のようだ。
そんな彼の後ろからスライムが近づいて行った。
「あっ」
望月さんと感動的な接触を果たすかと思ったら、短い触手を使って彼をペチペチと叩き始めた。
後からヨシミ、クロケット、ライデンも交じって叩き始める。
「も、望月さん!?」
「いいんだ。僕はこれでいいんだ。フヒヒヒ」
なんだか幸せそうだし、放って置こう。
「おお、スライムマッサージか、面白そうだな」
身体を洗い終わって、湯船に浸かると、スライムマッサージと書かれた敷居の向こうから谷崎さんの声が聞こえてきた。
「リンパがあるからそんなところまでやるのか……。おお!!」
ギリギリ、ガンガンととてもマッサージをしているとは思えないような音が聞こえてくると谷崎さんの喝采が上がる。
「すごいぞ! これはすごいぞ! あの頃の俺が戻ってくる! 戻るぞ、マキコおおおおおおおおおお!!!」
音が激しくなると奥さんの名前を絶叫する谷崎さんの声が聞こえてきた。
一体中で何が起こってるんだ。
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