かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

カジノ

「待て。仕事終わりになんでカジノに来てるんだ。明日も早いはずだろうお前」

「阿倍野協会長が突然姿を消して、宇野副協会長がカジノにいるに違いないって言って飛び出して行ったのよ」

「カジノに？　惨敗伝説の宇野がカジノに……」

　新協会長がことの経緯を聞いた瞬間、めちゃくちゃ険しい顔になった。
　先ほどの誘惑するような雰囲気が一気に消えたところを見ると、重大なインシデントが今現在発生してるようだ。

「おう、あんたらこいつの連れか？」

　声を掛けられ、そちらを見ると、白スーツを着た恰幅のいい男とぐったりした壮年の男を運んでくるコワモテの若男たちの姿が見えた。

「この男、さっき小切手で3億賭けて遊んだんやが、ことここに及んだ瞬間払えん言うて泣きついてきて弱っとるんや。どうにかしてくれんか」

　確か政府主導で進めたカジノなので、目の前の男たちもちゃんとした堅気の人間のはずだが、そう言う彼の姿からはその筋の人間の雰囲気が出ている。
　それにしてもアリサたちの話からするとカジノに入ってからそこまで立っていないはずなのに、スッた金額がとんでもない。
　見る限り若い男たちに運ばれている宇野副協会長は赤ら顔なので、酔った勢いで思いつくままの金額を賭けて、負けたと言うところだだろうか。
　賭け事において、アリサよりもひどい人は初めて見た。

「三億など払えるわけがありません。今回の件は事故ということにしていただけませんか？」

「流石に虫が良すぎるやろ。有ってもこのまま払うか、カジノで巻き返すかよ」

　男はにべもなくそういうと、親指でカジノの方を指さした。