11 / 99
トップ攻略者
しおりを挟む完徹でハイになっていた大火に回復魔法を使うと、雑事をすまして、S級ダンジョン「羅生門」に向かった。
東京郊外ということで、森林が目立ち、いつものようにビル街の群れに紛れるように存在しているダンジョンばかりに行ってるので新鮮な気分になる。
ダンジョンを話し合い場所に選んだので、あわよくば攻略もと考えていると思っていたので、待ち合わせ場所にガチガチの攻略隊ではなく剣道さんしかいないのは意外だった。
「初めまして、剣道さん、ダンプロの伊藤と申します。今日はよろしくお願いします。よろしければこちらを」
剣道さんは俺から差し出された名刺を受け取ると、礼儀正しく自分の名刺を差し出してくれた。
割とダンジョン攻略者は名が売れた人でも名刺を持ってなかったりすることが多いのだが、トップということもありそういうところもちゃんとしているらしい。
「こちらこそよろしく頼む、伊藤殿。早速無作法ですまないが私はじっとしているのは落ちつかなくてね。ダンジョンで体を動かしつつ、話し合いをしてもらってもいいだろうか?」
「いいですよ」
どれだけ攻略する腕があるのか見つつ、話し合いをしたいということだろう。
剣道さんサイドは最初からこちらを勧誘しにきているため実力の上限の確認は必要なことだし、俺としてもできれば配信の約束を取り付けたいので剣道さんの機嫌を損ねることはしたくないので、拒否をするという選択はない。
「一つ質問なんですが、ダンジョンに潜るにしては人が少ない気がするのですが、何か理由が」
「伊藤殿がいれば魔力を温存する必要はないから、彼らは必要ない。私とあなたがいればこの話し合いはそれで十分」
ーーー
ダンジョンに入ると特にセーブする理由もないので体に強化をかける。
「伊藤殿、それは?」
「身体能力を強化する光魔法です」
「そんな隠し玉がまだ。それにこれは……」
そう目を剥いて言うと、剣道さんは俺の体を凝視する。
強化をすると体から放出される魔力の圧が濃くなって、ダンジョンの空気中の魔力と差ができ、俺の周囲だけ歪んでいるように見えるため、それが物珍しいのだろう。
「見た目は異様ですが、特に触れてどうにかなると言うものではないのでお気になさらず」
「すまない。魔力の圧があまりに常軌を逸したものだったから我を忘れていた。風来坊の多い攻略者たちもそれを見れば伊藤殿を畏れ敬うレベルだ。同じくアスカちゃんを理解する同志としては鼻が高いな」
「攻略者トップの剣道さんにそこまで言ってもらえるなんて、毎日ダンジョンに入ってる甲斐がありましたね」
若干剣道さん言葉に後半に不穏な響きがあったが、誇張表現か何かだと思っておく。
アスカファンだとは聞いてはいるので、感情が昂った故だろう。
アスカさんを利用するようでなんだか悪いがアイスブレイクに、アスカさんの話題を広げさせてもらうことにする。
「昨日のアスカさんの配信はご覧になられましたか」
「昨日は仕事があったのアーカイブになったがもちろん見たとも! 昨日のアスカちゃんもやはり至高だった!!」
アスカの話題を振ると落ち着いた感じの振る舞いからは、想像できない勢いで食いついてきた。
まるで別人のようだ。
「見たか! あの大胆でありながらも隠しきれていない彼女の可憐さを!! 愚物を燃やし、火に照らされる彼女の美貌を!! ああ!! 結婚したい!!!」
剣道さんは矢継ぎ早に囃子立てるようアスカさんのことを褒めちぎると求婚し始めた。
ファンだとは聞いていたがここまでのものとは思っても見なかった。
というよりも口調は違うが求婚するこの姿勢に既視感がある。
「もしかして剣道さんは、ライブチューブで『アスカに人生を捧げたい』という名前で活動されてる方でしょうか」
「そうだが」
やはり推測通り剣道さんはアスカガチ恋ニキだった。
34
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説

劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。
阿吽
ファンタジー
クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった!
※カクヨムにて先行投稿中
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる