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第四話 森の中
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毎晩の口付けも、慣れたら何の感情も抱かなくなった。彼の荒い息遣いを感じないようにして、やり過ごす。そんな日々を繰り返していた時だった。彼が胸の膨らみに触れた。
「ルエット、そろそろ……いいよね?」
全身の毛が逆立つようなおぞましさを感じて、私は力を込めて突き飛ばした。油断していたのか、彼は突き飛ばされ、ベッドの端で項垂れている。私は無我夢中で逃げ出した。行く宛などないのに、私は走り続けた。森の奥深くまで走り、息を潜めて朝が来るのを待った。
朝日が木々の隙間から差し込み、ようやく辺りの様子が見えてきた。ひとまず森を歩いていると、高く唸る声が聞こえた。恐る恐る様子を伺うと、幼い魔獣が横たわっていた。どうやら脚に傷を負っているようだった。不憫に思った私は回復魔法を使った。傷はみるみるうちに消えていった。
「きゅうっ」
深い傷でなくてよかったと安堵していると、可愛らしい鳴き声が聞こえた。先程助けた幼い魔獣のものだった。
「……もしかして、ついてきてって言ってる?」
「きゅううっ」
返事をしているような鳴き声に、私は魔獣の後をついて行くことにした。魔獣に食われるかもしれないという恐怖はあったが、森を抜けて彼に会うことの方が怖かった。
森を進んでいると、魔獣が走り出した。その先には、成獣がおり、私に対して唸り声を上げた。幼い魔獣が慌てた様子で、成獣の周りをぴょんぴょんと跳ねながら鳴き声を上げた。状況を説明しているのだろうか。暫くして、成獣が小さく唸ったかと思うと、近付いてきた。恐怖に身を固くしていると、成獣が頭を下げた。まるで感謝をしているようなしぐさに、襲われずに済んだと安心した。緊張が解けたせいか、お腹がぎゅるると鳴った。
「あ、あはは……。おなか、すいちゃった……。ねえ魔獣さん、人間でも食べられる木の実ってありますか?」
試しに聞いてみると、魔獣が歩き出した。数歩歩いて、こちらを振り向き一鳴きする。これは、付いて来いということだろう。私は大人しく付いて行くことにした。暫く歩くと、開けた場所に辿り着いた。大きな木には果実が実っており、食べてみると瑞々しく甘かった。
「魔獣さん、ありがとう!」
私は魔獣に感謝して果実を二個ほどいただいた。それから、一息吐く。
「これから、どうしよう……。もう街には帰れないし……」
満腹になったせいか眠気に襲われて、大きく欠伸をする。一晩中走っていたせいで、身体は悲鳴を上げていた。森の奥まで来ているし、この辺りで休もう。彼に見つからないように祈りながら、眠りについた。
つづく
「ルエット、そろそろ……いいよね?」
全身の毛が逆立つようなおぞましさを感じて、私は力を込めて突き飛ばした。油断していたのか、彼は突き飛ばされ、ベッドの端で項垂れている。私は無我夢中で逃げ出した。行く宛などないのに、私は走り続けた。森の奥深くまで走り、息を潜めて朝が来るのを待った。
朝日が木々の隙間から差し込み、ようやく辺りの様子が見えてきた。ひとまず森を歩いていると、高く唸る声が聞こえた。恐る恐る様子を伺うと、幼い魔獣が横たわっていた。どうやら脚に傷を負っているようだった。不憫に思った私は回復魔法を使った。傷はみるみるうちに消えていった。
「きゅうっ」
深い傷でなくてよかったと安堵していると、可愛らしい鳴き声が聞こえた。先程助けた幼い魔獣のものだった。
「……もしかして、ついてきてって言ってる?」
「きゅううっ」
返事をしているような鳴き声に、私は魔獣の後をついて行くことにした。魔獣に食われるかもしれないという恐怖はあったが、森を抜けて彼に会うことの方が怖かった。
森を進んでいると、魔獣が走り出した。その先には、成獣がおり、私に対して唸り声を上げた。幼い魔獣が慌てた様子で、成獣の周りをぴょんぴょんと跳ねながら鳴き声を上げた。状況を説明しているのだろうか。暫くして、成獣が小さく唸ったかと思うと、近付いてきた。恐怖に身を固くしていると、成獣が頭を下げた。まるで感謝をしているようなしぐさに、襲われずに済んだと安心した。緊張が解けたせいか、お腹がぎゅるると鳴った。
「あ、あはは……。おなか、すいちゃった……。ねえ魔獣さん、人間でも食べられる木の実ってありますか?」
試しに聞いてみると、魔獣が歩き出した。数歩歩いて、こちらを振り向き一鳴きする。これは、付いて来いということだろう。私は大人しく付いて行くことにした。暫く歩くと、開けた場所に辿り着いた。大きな木には果実が実っており、食べてみると瑞々しく甘かった。
「魔獣さん、ありがとう!」
私は魔獣に感謝して果実を二個ほどいただいた。それから、一息吐く。
「これから、どうしよう……。もう街には帰れないし……」
満腹になったせいか眠気に襲われて、大きく欠伸をする。一晩中走っていたせいで、身体は悲鳴を上げていた。森の奥まで来ているし、この辺りで休もう。彼に見つからないように祈りながら、眠りについた。
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