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黄櫨染の香り
しおりを挟む僕は蝶だった。うっとりとするほど甘い香りに誘われて、美しく咲く小さな花に出会った。彼女は隣に咲く派手で毒々しい花とは違い、慎ましやかで内に秘めた美しさをもっていた。僕は一目で恋に落ちた。
彼女のことが知りたくて。僕は彼女を調べることにした。知らないことは調べる。僕は両親からそう教わってきた。僕はあらゆる手を使って彼女について調べた。僕が惹かれたあの香りは彼女の部屋で焚いているアロマの匂いだった。
彼女を知れば知るほど、彼女に惹かれていった。彼女は神々しく輝いている。天皇にしか着ることの許されない黄櫨染だって、彼女にこそ相応しい。
僕の中に新たな欲が生まれていた。彼女に触れたいという欲だ。神に触れるなど冒涜だというのに。欲望はどんどんと大きくなり、胸を圧迫し始めた。彼女を見る度に苦しくて、辛くて、僕は。
「お願い、します。僕を助けて……神様」
僕は彼女の手首を掴んでいた。縋るように吐き出した声に、彼女が振り返る。彼女は恐怖に引き攣った顔をしていた。
Fin.
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