ヤンデレ小話

柊原 ゆず

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ごちそう

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 僕の恋人である紅葉は鬼だ。見た目は人間そっくりで、八重歯が口を開くとキラリと光る。角は長い時を経て消失し、代わりに毛髪が固くになったらしい。確かに、髪の毛は一本一本が太めだが、剛毛だと言われると納得できてしまうレベルだ。
 人間を襲って食べていた鬼の祖先は、生きるために人間との共存を選んだらしい。というのも、人間側が鉄砲などを使い、鬼の数を減らしてきたためだ。人間の肉は格別というだけで、元々鬼は人間以外にも動物の肉を食べて生きてきた。人間で言えば牛肉のようなもの、らしい。彼女の祖先は人間を口にすることを止め、隠れるように紛れるように人間に溶け込んでいったのだ。人間が鬼を見分けるのは最早困難となったが、彼女達鬼はその違いが分かるらしい。曰く、殺人を犯し食人に走る者には鬼が多いのだと言う。

「鬼の血が滾るのかもね。人間って滅茶苦茶美味しいみたいだし。でも私は食べたくないなあ」

 紅葉は他人事のように言い、僕が作った唐揚げを口に入れた。

「うん、美味しい。樹、また料理の腕上げた?」
「まあね」

 紅葉の顔が綻ぶ。そんな彼女を見ていると作った甲斐があるなと思う。





 彼女の喜ぶ顔が見たい。だから今日も僕は包丁を握る。彼女にはごちそうを食べてもらいたいからね。目の前に転がる若い女をどう調理しようか、僕はわくわくしながら考えるのだった。

Fin.
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