ヤンデレ小話

柊原 ゆず

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女神さまに捧げる

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 自分のことはよく理解しているつもりだ。
 私は魔法使い。たいていのことは魔法で解決できた。私の魔法は不可能を限りなく可能にできる。これは間違いなく私自身の才能に依るものだ。
 それから外見。光を受けて絹糸のように輝く黄金の髪。瑠璃色の瞳は硝子玉のよう。すれ違う女性はみな声を漏らす。
 自信家だと蔑む人間もいるだろうが、これは私の経験から得た事実だ。私は人とは違う、才に溢れた魔法使いであり、人々の注目を集めるのはいつでも自分であった。私は神に愛されし神子なのだと、そう信じて疑わなかった。
 これは全て過去の話だ。ある一人の女性に出会い、私の世界はガラガラと音を立てて崩れ落ちることとなった。
 全ての光を吸い込んで輝いているような漆黒の髪。燃えるような赤い瞳は見ているだけで身も心も焼き尽くされてしまいそうだ。彼女の握る杖が踊るように動くと、魔法が生み出される。それは私のものよりも精巧で、鮮やかで、美しい。
 完敗だった。だが不思議と悔しさはなかった。女神のような彼女に敵うはずがないのだ。
 女神は残酷なほどに平等に人間を扱う。誰も彼女の心を犯すことなど出来はしない。





 けれど私は見てしまった。彼女が男と抱き合う様を。頬を赤らめ、男の首に腕をまわす彼女を。熱の孕んだ瞳はただ一人に向けられている。
 許せなかった。何故あの男なんだ?あの男は女神には相応しい相手では到底ない。あの男で良いならば、私の方がいい。そうに決まっている。
 私は図書館に足を運ぶ。薬だ。薬を作ろう。あの男ではなく私にあの情熱的な瞳が向くように。薬を作ることくらい、私ならば造作もないはずだ。先程の絶望が嘘のように、今の私は希望に満ちていた。分厚い本の重みが気にならないほどに。

Fin.
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