ゆめみるちゃいろのけむくじゃら 2

cha

文字の大きさ
上 下
16 / 22

ゆめであおうね

しおりを挟む
 スレイズがホブゴブリンを倒した頃の中核都市チャイブでは、クエストを終えたベルベティーンたちがギルドでミーティングをしていた。

 「俺たちのパーティーにスカウトが来た」
 「スカウト? 一体どこから?」

 すぐさま質問したのはパトリシア。
 このパーティーはミーティングをすることが滅多になかった。
 そのため、集合した時から首を傾げていた彼女だが、他のメンバーもスカウトという言葉を聞くと、首を傾げた。

 ベルベティーンたちが所属するギルドは王都のギルドに次に大きい。小さいギルドから散々スカウトされていたが、ベルベティーンのパーティーそれを全て断っていた。
 
 つまりこのスカウトは今いるギルドより大きなところから来たものということになる。
 
 「まさか…………王都のギルドから?」
 
 エリィサがそう尋ねると、ベルベティーンはフヒっと笑った。

 「そうだ。しかも、強者ばかりが揃う、ウルフハウルからだ」

 狼遠吠えウルフハウル
 そのギルドは王都を拠点にしている大規模ギルドの1つである。
 実力者が揃うそのギルドでは、彼らを筆頭に様々なモンスターの討伐を行っていた。
 そして、そのウルフハウルとライバル関係にあるのが…………。
 
 「ウルフハウル…………シルバーローズじゃないのよね?」
 
 パトリシアが言ったギルド、銀薔薇シルバーローズ
 このギルドはウルフハウルとはまた違った特徴を持っており、品があるギルドとして知られていた。チーム戦が得意とするこのギルドは、ウルフハウルとライバル関係にあり、対立することがしばしばあった。

 「シルバーローズ? んなわけないだろ。来ても断ってやるよ、あんなところ。ウルフハウルの方が強いやつらばっかりいるんだ。俺はそっちの方が断然にいい。お前らもそうだろ?」

 ベルベティーンがメンバーたちに聞くと、メンバーたちはうんうんと頷く。

 「それにシルバーローズのやつらはどうにも性に合わない。この前、クエストでかは知らないが、|《この都市》にやってきているやつを見かけたんだがよ…………ちょっと触っただけで骨がぽきっと折れそうなやつばかりだったぜ」
 「それ、私も見た」

 ベルベティーンに続き、エリィサも話していく。

 「なんだか戦闘を知らなさそうなやつらばっかりだった…………兄貴みたいに体がへにょへにょしてそうだったもん」
 「まぁ、ともかく俺たちはそんなか弱そうなギルドではなく、強者がそろうギルドに誘われたんだ」

 ベルベティーンはメンバー全員の顔をゆっくりと見て、そして、言った。

 「ウルフハウルに移籍するか?」
 「「「おぉー!!」」」

 メンバーは両手を天高く上げ、喜びの声を叫んだ。



 ★★★★★★★★



 そして、ウルフハウルの移籍が決まったその夜。
 私、パトリシアはベッドの上にいた。隣にいるのはベルベティーン。

 「ねぇ、本当はシルバーローズからもスカウトが来ていたんじゃないの?」
 「…………ああ、来ていた。お前、シルバーローズあっちに行きたかったのか?」
 「そんなわけないでしょ」

 私は窓の外を見る。そして、あの女のことを思い出していた。
 家から1歩も出れないナターシャあの女

 私はそんな彼女が————————大嫌いだった。

 いつも誰かに手を差し伸べてもらって。
 いつもヘラヘラした顔を見せて、ベルベティーンやスレイズたちをたぶらかして。
 私が嫌っているのを分かって、それでも笑顔で話しかけてきて。

 あの女はいつも、この世で一番の幸せ者のように笑っていた。

 本当にウザかった。憎かった。
 だから、私はスレイズ思いの人を取ってやった。あの絶望した顔は、本当に見ものだったわ。
 
 最近はそんなスレイズも捨ててやった。使い物にならないし、ベルベティーンの方が力を持っていたし。
 ベルベティーンは私の手を取り、手の甲にキスをする。
 
 「最近ではウルフハウルの方が力を持っているって言うじゃないか。噂によると、王族とのつながりもあるらしいな」
 「そうなの?」

 それはいいことを聞いた。
 次は王子様を手に入れることにしましょ。

 私は力も権力も地位も全て手に入れて、あの女よりもずっと幸せになるの。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

くものいと

cha
絵本
生きることへの感謝のおはなしです。

ちっちゃなめだかのくろももいろしろ

cha
絵本
めだかのさんきょうだいがおぼえてゆくよ ごめんなさい ありがとう あいしてる

ぽぽみんとふしぎなめがね

珊瑚やよい(にん)
絵本
 ぽぽみんが「いいなぁ〜」っと思ったおめめに変身するお話です。ほら子供ってすぐ人のモノほしがるでしょ?  0才から3才の子供向けの絵本です。親子で読んでいただけたら幸いです。  わーい!! おかげさまでアルファポリスの絵本コンテストで奨励賞を頂きました!! 読んでくださった皆さんありがとうございます。  いつか津田健次郎さんが読み聞かせして下さらないかな♡♡♡   《誕生秘話》  漫画『呪術廻戦』が大好きで、その中に『ナナミン』というニックネームのキャラクターがいらっしゃいます(本名 七海建人)。  ナナミンって口に出すとリズミカルで言いやすいし、覚えやすいし、響きもいいのでお得満載だと思ったの。そこから『みん』をとりました。というか私が個人的にナナミンが大好き。  『ぽぽ』はなんとなく子供が言いやすそうだから。  ちなみにぽぽみんのシッポの柄とメガネのデザインもナナミンからきています。さあくんの名前とデザインは……ほら……あれですね。ナナミンの先輩のあの方ですね。この絵本はオタクママの産物。  カタツムリは以前娘が飼っていたカタツムリの『やゆよ』。  消防車は息子が好きな乗り物。  魚は以前飼っていた金魚の『もんちゃん』のギョロ目を参考にしています。  ぽぽみんの頭の形は、おやつに娘が食べていた大福です。大福を2回かじるとぽぽみんの頭の形になりますよ。今度やってみて。アイディアってひょんな事から思いつくんですよ。  体のデザインは私が難しいイラストが描けないので単純なモノになりました。ミッフィちゃんみたいに横向かない設定なんです。なぜなら私が描けないから。  そんなこんなで生まれたのが『ぽぽみん』です。  

いたずらてんしとうれしいのほし

戸波ミナト
絵本
いたずらてんしはうっかり弓矢でサンタさんをうちおとしてしまいました。 サンタさんは冬の国にプレゼントを届けに行くとちゅうです。 いたずらてんしはいたずらのおわびにプレゼントくばりをてつだいます。

ゆめみるちゃいろのけむくじゃら 1

cha
絵本
みんなの・・そばにいるよね いたずらで かわいい・・けむくじゃら・・

ちーちーのだいぼうけん

cha
絵本
ちーちーねこのぼうけんげき

スライムのおしごと

バナナ男さん
絵本
スライムのお仕事はとっても大変! そんなスライムさんの一日を書いてみました・:*。・:*三( ⊃'ω')⊃

ちびりゅうたちの だましえ ふゆもの そうぞろえ

関谷俊博
絵本
ふゆもの…です…。

処理中です...