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異世界と少年と私
お仕事鑑定
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「静かに! それでは団長から一言お願いします」
今日は朝からレズリーとロワーズが私に鑑定をさせるために騎士達を集めている。北の砦に密偵がいないかを調べるためだけど、北の砦にいる騎士団関係者は文官や使用人も含めると千人以上もいる。
一人ずつ鑑定していると、騎士たちから聞こえるヒソヒソ話が耳に届く。
「あれが団長の愛人か?」
「銀髪と聞いたが、フードのせいで顔が見えないな」
「胸は結構あるんじゃねえか?」
「あんなに腰が細いのに子が産めるのか?」
「もう子はいるらしい」
「団長のか?」
「そうじゃないのか?」
これって、勝手に変な噂が独り歩きをしているよね。ロワーズと偽装愛人契約をしたのは確かだけど、こんな短時間で適当な噂が広まっているとは思わなかった。
レズリーが声を上げる。
「おい! そこ! 団長が話しているのにお喋りとは余裕だな。そんなに余裕があるなら訓練場を五十周回れ!」
噂話をしていた兵士二人が、ギクッとした顔でレズリーに恐る恐る尋ねる。
「五十周……ですか?」
「なんだ? 出来ないのか?」
「い、いえ。走ってきます!」
ここの訓練場は結構広いので、その周りを五十周はきつそうだ。
慌てながら、騎士の二人が走り出すと他の団員たちが呟く声が聞こえる。
「副団長も鬼だよな」
「五十周って……夕方まで掛かるぞ」
レズリーが口を開いた騎士たちを名指ししながら言う。
「お前らも走って来い! 早く行かないと百周にするぞ」
「「「「はい」」」」
口を開いた数人の騎士が、列から離れ走り出す。レズリーも中々厳しいね。騎士って、やっぱり体育会系なのかな?
とりあえず、今、走り出した騎士たちを鑑定する。鷹の目スキルのおかげで、遠くにいる人の鑑定可能になっていた。
彼らは特に問題無さそうだけど……また性病になっている騎士がいる。こちらはコンドームとか無いし、性病の知識もないのだろう。まぁ、コンドームだって全ての性病を妨げられるわけではないんだけどね。避妊も100%な訳じゃないしね。
そういえば、こちらの世界は避妊薬とかあるのだろうか? ハインツが言うに、性病は魔法で治療可能らしいけど……もっと詳しく聞こうとしたけど、なぜか話を逸らされたんだよね。
レズリーが笑顔で振り向きながら尋ねる。
「エマちゃん、ごめんね。ああいう噂をしないよう厳しく注意していくから。それで、鑑定のほうは順調?」
「今、ランニングに行った騎士たちは問題ありませんが、こちらのリストをどうぞ」
性病に掛かった騎士たちのリストをレズリーに渡す。
「あ、ああ。治療させておくよ。ったく……何処の娼館に行っているんだ、あいつらは」
「えと……提案ですが、娼館自体に治癒師を向かわせればいいのではないのですか?」
「ああ、確かに」
「私が行ってもいいですよ」
「い、いや、治癒師を送る」
レズリーがなぜか慌てながら私が行くことを拒否する。別に、治療目的で娼館に行くだけなのに、なんでこんなに焦るんだろう?
とにかくレズリーが今日にでも娼館に治癒師を送ってくれるという。根本から解決すれば、しばらくは性病のことを考えなくてもいいはず。
残りの騎士を次々に鑑定していく。この場に集まった騎士は、下級騎士が多く、中級騎士と上級騎士は数人程度だった。レズリーは主に下級騎士を鑑定しているが、一人では時間内に終わりそうもないので私も手伝っている。
下級騎士の状態に連続で【二日酔い】と出る。
何? 昨日飲み会でもしたの? 二日酔いがやけに多い。
二日酔いたちに特に問題ある人はいなかったが、一人だけ胃癌と表示されていた者がいた。
それからしばらくして、私が担当するこの場に集められた騎士たちの鑑定がすべて終わった。密偵はいなかったけど、レズリーに声を掛ける。
「レズリーさん、全て終了しました。こちらが結果になります」
「エマちゃん、この胃癌って何かな?」
レズリーが、私が渡した紙を見ながら眉間に皺を寄せた。
どうやら、胃がんの存在がよく分かってないようだったので、軽く説明する。
「胃に悪いものができています。たぶん、今は症状などは出ていない軽いもののようですが、早い段階で治したほうがいいと思います」
「そうなのか……うむ」
レズリーが難しい顔をしたので、首を傾げる。
「どうしましたか?」
「いや、治癒師にどう説明しようかと考えていてね」
確かに、胃癌を知らないのなら説明には困るかも。私も別に医者じゃないから、詳しくは知らないけど、治癒魔法は使える。それならば――
「それなら私が治しましょうか?」
「エマちゃんが……?」
「必ず治るかはお約束できません。胃癌についての知識は専門家ではないので。後、彼に直接触れないといけないのですが、私が治癒を使うと露見せずにできるか心配です」
「直接触るのか……うーん、団長が許すかな? 俺も嫌だしね」
なんの話? さらに難しい顔になったレズリーに困惑した顔で尋ねる。
「……治療のためですけど?」
「うん。少し保留だね。また後で連絡するよ」
「分かりました」
胃癌は確か症状がでにくいんだよね。父が胃カメラを受けた事あったのだが、その時の医者がそんな事を言っていたと父が漏らしたのを覚えている。確か若いと進行も早いと言っていた。治療できるなら早いに越したことはないけど、レズリーの連絡を待つとするか。
その後、休憩のお茶を飲み再び訓練場へと戻る。
午後からは訓練と称して別の騎士たちが集められる。その中には、上級騎士も午前の部よりも多くいる。
鑑定を頑張るか……。
問題なし。問題なし。性病。問題なし。
ん? ああ、密偵がいらっしゃったね。
今日は朝からレズリーとロワーズが私に鑑定をさせるために騎士達を集めている。北の砦に密偵がいないかを調べるためだけど、北の砦にいる騎士団関係者は文官や使用人も含めると千人以上もいる。
一人ずつ鑑定していると、騎士たちから聞こえるヒソヒソ話が耳に届く。
「あれが団長の愛人か?」
「銀髪と聞いたが、フードのせいで顔が見えないな」
「胸は結構あるんじゃねえか?」
「あんなに腰が細いのに子が産めるのか?」
「もう子はいるらしい」
「団長のか?」
「そうじゃないのか?」
これって、勝手に変な噂が独り歩きをしているよね。ロワーズと偽装愛人契約をしたのは確かだけど、こんな短時間で適当な噂が広まっているとは思わなかった。
レズリーが声を上げる。
「おい! そこ! 団長が話しているのにお喋りとは余裕だな。そんなに余裕があるなら訓練場を五十周回れ!」
噂話をしていた兵士二人が、ギクッとした顔でレズリーに恐る恐る尋ねる。
「五十周……ですか?」
「なんだ? 出来ないのか?」
「い、いえ。走ってきます!」
ここの訓練場は結構広いので、その周りを五十周はきつそうだ。
慌てながら、騎士の二人が走り出すと他の団員たちが呟く声が聞こえる。
「副団長も鬼だよな」
「五十周って……夕方まで掛かるぞ」
レズリーが口を開いた騎士たちを名指ししながら言う。
「お前らも走って来い! 早く行かないと百周にするぞ」
「「「「はい」」」」
口を開いた数人の騎士が、列から離れ走り出す。レズリーも中々厳しいね。騎士って、やっぱり体育会系なのかな?
とりあえず、今、走り出した騎士たちを鑑定する。鷹の目スキルのおかげで、遠くにいる人の鑑定可能になっていた。
彼らは特に問題無さそうだけど……また性病になっている騎士がいる。こちらはコンドームとか無いし、性病の知識もないのだろう。まぁ、コンドームだって全ての性病を妨げられるわけではないんだけどね。避妊も100%な訳じゃないしね。
そういえば、こちらの世界は避妊薬とかあるのだろうか? ハインツが言うに、性病は魔法で治療可能らしいけど……もっと詳しく聞こうとしたけど、なぜか話を逸らされたんだよね。
レズリーが笑顔で振り向きながら尋ねる。
「エマちゃん、ごめんね。ああいう噂をしないよう厳しく注意していくから。それで、鑑定のほうは順調?」
「今、ランニングに行った騎士たちは問題ありませんが、こちらのリストをどうぞ」
性病に掛かった騎士たちのリストをレズリーに渡す。
「あ、ああ。治療させておくよ。ったく……何処の娼館に行っているんだ、あいつらは」
「えと……提案ですが、娼館自体に治癒師を向かわせればいいのではないのですか?」
「ああ、確かに」
「私が行ってもいいですよ」
「い、いや、治癒師を送る」
レズリーがなぜか慌てながら私が行くことを拒否する。別に、治療目的で娼館に行くだけなのに、なんでこんなに焦るんだろう?
とにかくレズリーが今日にでも娼館に治癒師を送ってくれるという。根本から解決すれば、しばらくは性病のことを考えなくてもいいはず。
残りの騎士を次々に鑑定していく。この場に集まった騎士は、下級騎士が多く、中級騎士と上級騎士は数人程度だった。レズリーは主に下級騎士を鑑定しているが、一人では時間内に終わりそうもないので私も手伝っている。
下級騎士の状態に連続で【二日酔い】と出る。
何? 昨日飲み会でもしたの? 二日酔いがやけに多い。
二日酔いたちに特に問題ある人はいなかったが、一人だけ胃癌と表示されていた者がいた。
それからしばらくして、私が担当するこの場に集められた騎士たちの鑑定がすべて終わった。密偵はいなかったけど、レズリーに声を掛ける。
「レズリーさん、全て終了しました。こちらが結果になります」
「エマちゃん、この胃癌って何かな?」
レズリーが、私が渡した紙を見ながら眉間に皺を寄せた。
どうやら、胃がんの存在がよく分かってないようだったので、軽く説明する。
「胃に悪いものができています。たぶん、今は症状などは出ていない軽いもののようですが、早い段階で治したほうがいいと思います」
「そうなのか……うむ」
レズリーが難しい顔をしたので、首を傾げる。
「どうしましたか?」
「いや、治癒師にどう説明しようかと考えていてね」
確かに、胃癌を知らないのなら説明には困るかも。私も別に医者じゃないから、詳しくは知らないけど、治癒魔法は使える。それならば――
「それなら私が治しましょうか?」
「エマちゃんが……?」
「必ず治るかはお約束できません。胃癌についての知識は専門家ではないので。後、彼に直接触れないといけないのですが、私が治癒を使うと露見せずにできるか心配です」
「直接触るのか……うーん、団長が許すかな? 俺も嫌だしね」
なんの話? さらに難しい顔になったレズリーに困惑した顔で尋ねる。
「……治療のためですけど?」
「うん。少し保留だね。また後で連絡するよ」
「分かりました」
胃癌は確か症状がでにくいんだよね。父が胃カメラを受けた事あったのだが、その時の医者がそんな事を言っていたと父が漏らしたのを覚えている。確か若いと進行も早いと言っていた。治療できるなら早いに越したことはないけど、レズリーの連絡を待つとするか。
その後、休憩のお茶を飲み再び訓練場へと戻る。
午後からは訓練と称して別の騎士たちが集められる。その中には、上級騎士も午前の部よりも多くいる。
鑑定を頑張るか……。
問題なし。問題なし。性病。問題なし。
ん? ああ、密偵がいらっしゃったね。
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