68 / 82
異世界と少年と私
罠
しおりを挟む
朝、目が覚め天井を眺める。
(んー、青い)
この部屋は天井までこんなに青かったんだ。
ベッドの両隣を見れば、子供たちはまだ寝ていたので静かに起きて瞑想をする。
ドドン
『瞑想のレベルが上がりました』
アナウンスのタイミングは相変わらず邪魔だけど、瞑想の集中力は前よりも途切れない。
シオンとアイリスがまだ眠そうな目を擦りながら起きると、リリアが部屋を訪れる。
「皆様、おはようございます」
「リリアさん、おはようございます」
リリアの後ろからはアンと初めて見るメイドがカートを押しながら入ると、朝食の準備を始めた。私の誓いが間違っていないのならば、リリアは侍女なので目上の者や客人にはお茶は入れるが配膳や水仕事は基本やらないという。それぞれの役割がちゃんとあるらしい。
リリアが初めて見るメイドの紹介をする。
「こちらはメイドのデイジーです。この部屋の担当になりますので以後お見知りおき下さい」
「よろしくお願いします、デイジーさん。私はエマで、こちらがシオンとマークです」
「エマ様。シオン様。マーク様。よろしくお願いいたします」
綺麗なお辞儀をしたデイジーを鑑定するが、特におかしい点はない。普通のメイドだ。
リリアが苦笑いしながら言う。
「エマ様、私たちのことは呼び捨てでお呼びください」
「私は短期で滞在させて頂いている身です。呼び捨てだとなんだか命令しているみたいで、正直苦手で……」
これは本当だ。私は確かにロワーズの客人という立場だけど、誰かを顎で使うような立場ではない。
「困りましたね。分かりました。それでも、人前では出来るだけ呼び捨てでお願いします。ロワーズ様の威厳にも関わりますので」
「あ、そうですよね。努力します」
ロワーズの威厳、そういう風に捉えられるのか……それならば郷に入れば郷に従えで私も努力しなければ。
朝食を終え、リリアがアンとデイジーを下がらせると持っていた布袋を開ける。
「ロワーズ様よりマーク様のお着替えの替えをお持ちしました。マークくんでよろしいのですよね?」
ああ、リリアの固有スキルでマークが女の子ってこと分かったのかな? 考えてみれば、いやらしいスキルだよね。相手の全身スキャンって……。
「はい、男の子で大丈夫です」
「かしこまりました」
リリアはそう言うとアイリスに服とマントを試着させる。相変わらず、サイズがピッタリだ。アイリスのマントの色もマントは私たちとお揃いだ。
「似合っているよ」
「お、おう。リリアさん、ありがとう……」
照れながらお礼を言うアイリスも新しい服に顔が綻んでいる。
リリアは満足そうな顔をするとその後、部屋を退室した。今日の予定は特に無い。
スキルを報酬で金貨二百枚ある。平民の一家族の二十ヶ月分ということだったけど、私たちはほぼ何も物が無いので……これからはもっとお金は必要になるだろう。
(お金を稼ぐ仕事か方法を早く考えないと……)
それにはスキルを鍛えないといけない。魔法も便利だし威力も強いのだけど……いざとなった時に使える魔法以外のことも鍛えたい。子供たちにも自分の身を守る力をつけさせたい。
やらないといけないことは多い――
「ん?」
ゴソっとドアの付近で音が聞こえた。誰かいるの? 不用心にドアは開けたくないけど、ドアの傍で少し大きな声で尋ねる。
「誰ですか?」
返事がない……それなら開ける必要ないでしょ。無視しよう。
野営地の件もあるから、一応侵入なんてされた時のために罠を仕掛ける。
水魔法で鳥黐をイメージして粘り気の強い液体をドアの前に撒き仕掛けておく。魔法はほんと便利だ。イメージしたら大抵の物は創造可能だ。
アイリスが床に撒かれた鳥黐を見ながら尋ねる。
「これ、なんだ? ベタベタするぞ」
「あ、触らないでね。これは、元々は鳥を捕まえるための罠よ。不届き者が入ってきたら嫌でしょう?」
「ドアの前にいる奴か? あれは多分……」
アイリスが何か言いかけたけど、おやつ用のクッキーを出しているのを見てそちらに気を取られたようで話が中断する。まぁ、誰であろうコソコソせずにノックすればいいだけの話でしょ?
(んー、青い)
この部屋は天井までこんなに青かったんだ。
ベッドの両隣を見れば、子供たちはまだ寝ていたので静かに起きて瞑想をする。
ドドン
『瞑想のレベルが上がりました』
アナウンスのタイミングは相変わらず邪魔だけど、瞑想の集中力は前よりも途切れない。
シオンとアイリスがまだ眠そうな目を擦りながら起きると、リリアが部屋を訪れる。
「皆様、おはようございます」
「リリアさん、おはようございます」
リリアの後ろからはアンと初めて見るメイドがカートを押しながら入ると、朝食の準備を始めた。私の誓いが間違っていないのならば、リリアは侍女なので目上の者や客人にはお茶は入れるが配膳や水仕事は基本やらないという。それぞれの役割がちゃんとあるらしい。
リリアが初めて見るメイドの紹介をする。
「こちらはメイドのデイジーです。この部屋の担当になりますので以後お見知りおき下さい」
「よろしくお願いします、デイジーさん。私はエマで、こちらがシオンとマークです」
「エマ様。シオン様。マーク様。よろしくお願いいたします」
綺麗なお辞儀をしたデイジーを鑑定するが、特におかしい点はない。普通のメイドだ。
リリアが苦笑いしながら言う。
「エマ様、私たちのことは呼び捨てでお呼びください」
「私は短期で滞在させて頂いている身です。呼び捨てだとなんだか命令しているみたいで、正直苦手で……」
これは本当だ。私は確かにロワーズの客人という立場だけど、誰かを顎で使うような立場ではない。
「困りましたね。分かりました。それでも、人前では出来るだけ呼び捨てでお願いします。ロワーズ様の威厳にも関わりますので」
「あ、そうですよね。努力します」
ロワーズの威厳、そういう風に捉えられるのか……それならば郷に入れば郷に従えで私も努力しなければ。
朝食を終え、リリアがアンとデイジーを下がらせると持っていた布袋を開ける。
「ロワーズ様よりマーク様のお着替えの替えをお持ちしました。マークくんでよろしいのですよね?」
ああ、リリアの固有スキルでマークが女の子ってこと分かったのかな? 考えてみれば、いやらしいスキルだよね。相手の全身スキャンって……。
「はい、男の子で大丈夫です」
「かしこまりました」
リリアはそう言うとアイリスに服とマントを試着させる。相変わらず、サイズがピッタリだ。アイリスのマントの色もマントは私たちとお揃いだ。
「似合っているよ」
「お、おう。リリアさん、ありがとう……」
照れながらお礼を言うアイリスも新しい服に顔が綻んでいる。
リリアは満足そうな顔をするとその後、部屋を退室した。今日の予定は特に無い。
スキルを報酬で金貨二百枚ある。平民の一家族の二十ヶ月分ということだったけど、私たちはほぼ何も物が無いので……これからはもっとお金は必要になるだろう。
(お金を稼ぐ仕事か方法を早く考えないと……)
それにはスキルを鍛えないといけない。魔法も便利だし威力も強いのだけど……いざとなった時に使える魔法以外のことも鍛えたい。子供たちにも自分の身を守る力をつけさせたい。
やらないといけないことは多い――
「ん?」
ゴソっとドアの付近で音が聞こえた。誰かいるの? 不用心にドアは開けたくないけど、ドアの傍で少し大きな声で尋ねる。
「誰ですか?」
返事がない……それなら開ける必要ないでしょ。無視しよう。
野営地の件もあるから、一応侵入なんてされた時のために罠を仕掛ける。
水魔法で鳥黐をイメージして粘り気の強い液体をドアの前に撒き仕掛けておく。魔法はほんと便利だ。イメージしたら大抵の物は創造可能だ。
アイリスが床に撒かれた鳥黐を見ながら尋ねる。
「これ、なんだ? ベタベタするぞ」
「あ、触らないでね。これは、元々は鳥を捕まえるための罠よ。不届き者が入ってきたら嫌でしょう?」
「ドアの前にいる奴か? あれは多分……」
アイリスが何か言いかけたけど、おやつ用のクッキーを出しているのを見てそちらに気を取られたようで話が中断する。まぁ、誰であろうコソコソせずにノックすればいいだけの話でしょ?
192
お気に入りに追加
1,221
あなたにおすすめの小説
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる