ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。

トロ猫

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異世界と少年と私

現れたヒロイン?

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「次は調理班の下働きの威勢のよい元気な子供だが……鑑定に違和感がある」

 レズリーがやや悩みながら報告する。

「判断はエマの鑑定の後ですればよい。連れて来い」

 ロワーズの指示で外にいた騎士に連れてこられたのは、泥まみれの本当に元気な子供だった。

「お前ら離せって、触んなよ! おい! 聞いてんのかよ!」

 床に寝転んで全身で抵抗するその子供を騎士が抑えるが、結構な力で暴れている。あまりの大声にハインツの隣で寝ていたシオンが起きてしまう。
 ロワーズが暴れる子供の襟をつまみ持ち上げ言う。

「おい。小僧、静かにしろ。何もなければすぐに解放する」
「それ、嘘だろ! 離せよ」
「嘘でない。騎士の名に約束する」

 ロワーズが子供を連れて来た騎士に退室するように命令すると子供は不貞腐れたように言う。

「……分かったよ」

 ロワーズの手を払い、地面に座り込んだ子供を鑑定する。

マーク(アイリス・オスロー)
年齢:8
種族:人族
職業:黒騎士団調理班下働き
魔力(5)1 
体力2
スキル:言語、短剣(作法3)
魔法属性:水(光)
魔法:生活魔法、水魔法 (光魔法)
ユニークスキル:(聖女の癒し)
称号:(光の愛し子)

 まず女の子なのね。
 今日は、一日中鑑定したから目が疲れたのかなぁ……聖女って見えるんだけど。もう一度確認する。うん、ユニークスキルに聖女って表示されてある。
 泥と垢まみれでこちらを睨むアイリス? マーク? を凝視する。ちょっと想像していた聖女とは違うけど、とても澄んだ晴れた空のような瞳が印象的な子だ。
隠匿されてるけれど、聖女の癒しを調べる。

聖女の癒し――万病、欠損部分を癒し再生。死者は蘇生不可。術者の魔力により左右される。

 ああ、これは隠匿したいだろうね。あれ? どうやって隠匿してるんだろう? 服意外に唯一ある首元の麻で編んだ、二つのコインの付いた粗末なネックレスにコインを鑑定する。

隠匿と偽造のネックレス――ステータスの隠匿と偽造が可能。魔力の補充が必要。
良品
価格相場:金貨100枚

 生産地は表示されないが、価格はなんと金貨100枚。金貨の価値が分からないけど、高額なのは分かる。粗末な作りなので誰もこのネックレスが高価な物とは思わないよね。誰かがこの子のためにこのネックレスを調達したのだろうけど……それなら相当裕福だろうに、どうして男の子に変装して下働きをしているのだろうか? 疑問はたくさんなんだけど……
 さて、ロワーズたちになんて説明しようか。こちらを見つめるロワーズとレズリーの視線が痛い。嘘は言わずにできるだけ穏便でいこう。

「この子は……密偵ではありません」
「鑑定に時間がかかってたようだが?」

 ロワーズからジト目を向けられながら指摘をされる。鋭いな。
でも、この鑑定結果は勝手に私が話すものではないと思う。この状況はあくまでも密偵を探すためにあるのだ。騎士の性病? あれはただのお節介です。
 まだ異世界に飛ばされて二週間しか経ってないのに魔法、騎士、魔物、密偵、猫人族、それから聖女……いろいろと濃いな。ほんと濃い。

どろだらけだよ。ぼくがキレイにするね」
 大人たちが目を離した隙にいつの間にかシオンがアイリスの横で洗浄の魔法を掛けていた。綺麗にされて出てきたのは、泥で分からなかったアイリスの可愛らしい顔だった。凄いヒロインの顔だ。周りに凝視され顔を赤くしたアイリスがシオンの手を軽く払う。

「勝手に何すんだよ!」

 逃げ出そうとしたアイリスをレズリーが捕まえ、まじまじと顔を覗く。

「女の子みたいな顔だね。エマちゃん、俺の鑑定した時に違和感のあった理由は何か分かった?」

 それが理由で連れてこられたんだった……予想するにこのネックレスの所為が大きいけど単純に同じ魔力のレベルでもアイリスの魔力がレズリーより高いのだと思う。ハインツの魔法授業によると、同じレベルでもピンキリがあるらしいが、ステータスを見ても良く分からない。
これは、アイリスの魔力のことは言うしかないな。

「単純にレズリーさんより魔力が高いからです。それで、見えない部分があったみたいですね」

 アイリスがビクッと肩を動かし、レズリーの眉間に皺が寄る。

「この子供が? レベルはいくつなんだ?」

 そう尋ねたレズリーにジト目を向ける。この場は、アイリスのレベルやスキルを暴く場ではない。密偵を探す場だ。

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