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異世界と少年と私
積もる疑問
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外の護衛に呼びかけるとすぐにディエゴが返事をした。
「どうされましたか?」
「えっと……侵入者です」
急いでディエゴたち護衛が天幕の中になだれ込み、侵入者の無残な姿に目を見開き同時に驚きの声を出す。
ディエゴが土魔法でグルグルコンクリート詰めにされ地面に横たわるバロンの顔を確かめる。
「こいつは、ハインツ殿の顔に似ているが、どういうことだ?」
今、バロンの顔はいろんな汁だらけ。正直ハインツには微塵も似てないと思う。触りたくないけど、バロンの顔に付いた紙のようなものを取ると……もっと汚い本当の顔が露わになる。醜悪に歪む表情に無精ひげには涎が付着している。シオンの視界を急いで隠す。
ディエゴがすぐにもう一人の護衛に指示を出す。
「誰だコイツ! ロワーズ様に伝令を。ハインツ殿の安否確認もしろ」
護衛の一人が天幕から飛び出すと残ったディエゴと目が合う。
「俺は、今日騎士をクビになりそうだな」
「私も最初はハインツさんだと思いましたので、変装自体はそう簡単に見破れるものではなかったですよ」
実際に私だってバロンが「あなた」って言葉を選ばなかったら、違和感も覚えずに鑑定もしていなかったと思う。
そんな話をしていると、すぐにロワーズとレズリーが天幕へ到着した。コンクリート詰めの侵入者を見てジト目でこちらを見るロワーズの視線が痛い。
「大丈夫ですよ! ちゃんと生きてますから」
いいことを言ったつもりだったけど今度はレズリーにもディエゴにもジト目で見られる。
レズリーが言うにはハインツは天幕の外で下女と騎士の従者が揉め始めたのを仲裁していたのを見掛けたらしい。
「足止めでだろうな。ディエゴ、外にいる騎士と共にハインツ殿が仲裁していた二人を捕縛しろ」
レズリーがディエゴに指示を出すと、すぐに天幕を出発した。
ロワーズがコンクリート詰めをコンコンとノックしながら尋ねる。
「この拘束は一体どうなっている?」
「外しましょうか?」
「いや、しばらくこのままで良い。どうせ、この男もセラール聖国の密偵であろう?」
私が返事する前にシオンがコクコクと頷くと、ロワーズが一瞬笑顔になり咳払いをして私と目を合わせ無言で確認する。
「はい。セラール聖国密偵のバロンという名の男です。シオンを狙っていました」
「シオンをか? 何故だ? 分からないな」
私もそこが分からない。私たちはただの迷子で国同士のいざこざなんて関係ないはずだ。
「銀髪の子供がいたので、ついでにと単独行動をした可能性もあると思う」
レズリーがバロンの使った変身のスクロールを嫌そうな顔をしながらスクロールを鑑定しているようだ。
「他の者も捕らえねばならない。しかし、変身のスクロールに結界石か……随分と魔道具を使っているな」
「団長、聖国はそんなに魔道具が豊富でしたでしょうか? 俺が覚えている限りこんな下っ端だろう密偵が簡単に持てる物ではないかと」
レズリーが訝しげな顔で尋ねるとロワーズがため息を吐く。
「今はまず、残りの密偵の捕縛だな。頭を使うのは後だ」
「どうされましたか?」
「えっと……侵入者です」
急いでディエゴたち護衛が天幕の中になだれ込み、侵入者の無残な姿に目を見開き同時に驚きの声を出す。
ディエゴが土魔法でグルグルコンクリート詰めにされ地面に横たわるバロンの顔を確かめる。
「こいつは、ハインツ殿の顔に似ているが、どういうことだ?」
今、バロンの顔はいろんな汁だらけ。正直ハインツには微塵も似てないと思う。触りたくないけど、バロンの顔に付いた紙のようなものを取ると……もっと汚い本当の顔が露わになる。醜悪に歪む表情に無精ひげには涎が付着している。シオンの視界を急いで隠す。
ディエゴがすぐにもう一人の護衛に指示を出す。
「誰だコイツ! ロワーズ様に伝令を。ハインツ殿の安否確認もしろ」
護衛の一人が天幕から飛び出すと残ったディエゴと目が合う。
「俺は、今日騎士をクビになりそうだな」
「私も最初はハインツさんだと思いましたので、変装自体はそう簡単に見破れるものではなかったですよ」
実際に私だってバロンが「あなた」って言葉を選ばなかったら、違和感も覚えずに鑑定もしていなかったと思う。
そんな話をしていると、すぐにロワーズとレズリーが天幕へ到着した。コンクリート詰めの侵入者を見てジト目でこちらを見るロワーズの視線が痛い。
「大丈夫ですよ! ちゃんと生きてますから」
いいことを言ったつもりだったけど今度はレズリーにもディエゴにもジト目で見られる。
レズリーが言うにはハインツは天幕の外で下女と騎士の従者が揉め始めたのを仲裁していたのを見掛けたらしい。
「足止めでだろうな。ディエゴ、外にいる騎士と共にハインツ殿が仲裁していた二人を捕縛しろ」
レズリーがディエゴに指示を出すと、すぐに天幕を出発した。
ロワーズがコンクリート詰めをコンコンとノックしながら尋ねる。
「この拘束は一体どうなっている?」
「外しましょうか?」
「いや、しばらくこのままで良い。どうせ、この男もセラール聖国の密偵であろう?」
私が返事する前にシオンがコクコクと頷くと、ロワーズが一瞬笑顔になり咳払いをして私と目を合わせ無言で確認する。
「はい。セラール聖国密偵のバロンという名の男です。シオンを狙っていました」
「シオンをか? 何故だ? 分からないな」
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「銀髪の子供がいたので、ついでにと単独行動をした可能性もあると思う」
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「団長、聖国はそんなに魔道具が豊富でしたでしょうか? 俺が覚えている限りこんな下っ端だろう密偵が簡単に持てる物ではないかと」
レズリーが訝しげな顔で尋ねるとロワーズがため息を吐く。
「今はまず、残りの密偵の捕縛だな。頭を使うのは後だ」
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