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異世界と少年と私
リリアの魔法教室
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目を開け天幕を眺める。何時くらいだろうか? 起きて身支度をして日課のコピーも済ませる。コルセットを締めるのに手伝いはもう必要ない。自分自身を締める方法を、土魔法を使って練り上げた。棒がふたつあればなんとでもなる。決して他人には見せることはできないが。
最近、恒例になっていたシャッフルダンスはお休みにして集中力を高めるために瞑想をする。昔、自分磨きのためにヨガ教室に三ヶ月ほど通ったことがあったが失敗に終わった。三十歳を超えると何故か自分磨きに走り始める。持続性というものはとっても難しい。結局は仕事の激務で徐々にヨガ教室から足が遠のいた。それなのにバカなのか……その後も数ヶ月、月謝だけ払った。そんな過去の自分にお仕置きがしたい。
「今はヨガの時間、今はヨガの時間」
邪念を払うように瞑想に集中する。ヨガの中で瞑想が一番好きだった。絨毯の上に座り、肩の力を抜いてリラックスした目を閉じたまま腹式呼吸をする。頭を空にして、意識を呼吸だけに集中する。息を吸って……吐いて……
ドドン
『瞑想を覚えました』
ちょっと、アナウンスめっちゃ邪魔!
◇◇◇
瞑想を無事に終了、シオンを起こし身支度をさせる。一生懸命準備するシオンに穏やかな気持ちになる。よし、朝食をして魔法の練習だ。今日は水魔法を教えてもらうことになっている。ハインツの案内で先日と同じ練習場へ向かうとリリアの姿があった。
「エマ様。本日は僭越ながら、私が水魔法の指導をさせていただきたいと思います」
「リリア先生ですね。よろしくお願いいたします」
「よろしくおねがいします」
遅れてシオンがリリアに挨拶をする。ハインツはまた後で迎えに来ると、練習場から退散した。
「うふふ。じゃあ生活魔法の水を出すのと同じ要領で丸い水球を出せるかしら?」
「こうですか?」
リリアに指示されたと通り丸い水の玉を出す。
「お上手ですね。それではその玉に少しずつ魔力を注いで、大きくして回してください」
大きくなった水の玉を回転させる。ぽよよんとしたその動きは水風船のようだ。
ドドン
『水魔法を覚えました』
これだけで水魔法を取得したの? 喜んだのも束の間、隣で水の玉を回転させるのに悩むシオンが唸る。
「うーん。うーん」
「シオン、水風船を回す感じだよ」
「みずふうせん?」
「ボールみたいなぽよぽよした玉だよ」
水風船が何か分からなかったシオンは、ボールを回すイメージを固めた水の玉をクルクルと回転させることに成功する。シオンの肩がビクッとしたので、鑑定すればちゃんと水魔法が生えていた。リリアが拍手しながら誉めてくれる。
「やはり、お二人とも覚えが早いですね。これが水球《ウォーターボール》です。普通に出す時は、【水よ、球体となりて、我の前へ 水球】と唱えます。攻撃の時には【水よ、球体となりて、敵を撃て 水球】と詠唱します」
リリアが攻撃の水球を放つと勢いよく飛んでいき、練習場に備えられていた的に命中した。
「おお、当たりましたね」
「エマ様とシオン様は通常使う詠唱は必要ないようですので、実際にご自分のイメージでやっていただくのが良いかと思います」
自分のイメージか……水球とジェット噴射をイメージして水魔法を打つ。
【水球】
手から勢いよく発射した水球は思ったより攻撃力があり、そのまま的に当たると半分を破壊してしまった。やば、壊してしまった。リリアがやや引いたように笑う。
「大丈夫ですよ。的はまだありますから……シオン様もどうぞ」
シオンは水鉄砲のような小さな水球を数発出した。的には当たらなかったが土弾と同じイメージで撃っているのだろう。リリアも素晴らしいと拍手しながらシオンを褒める。
「それでは、次に参ります。【水よ。壁を作り、敵の攻撃を防げ 水壁】」
リリアの前に渦巻く水壁が突然現れる。土壁もだけど、水壁もなかなかの迫力だ。モーゼができそうだモーゼが。
それではどうぞとリリアに言われたのだが、水壁のイメージがモーゼ以外浮かばない。流石にモーゼはやらないよ。あ、滝のイメージならできそうだ。
【水壁】
水球よりも魔力が抜け、大音量の水音とともに目の前には滝の壁がそびえ立つ。壁を見上げリリアが嘆く。
「な、この大きさ、それにこの水の量……」
「ちょ、ちょっと大きいの出し過ぎましたね」
しまった……その辺の小さな滝をイメージするべきだった。滝といえばナイアガラの滝のイメージが出てきてしまった。作り上げた水壁から滝の水が吹き出し、辺りの地面をびちゃびちゃにしたので水壁を終了する。
ドドン
『水魔法の操作が上がりました』
ああ、そうですか。ステータスを確認するが、操作に関しての表示はなかった。リリアが不安そうに尋ねる。
「エマ様……魔力は大丈夫でしょうか?」
「え? は、はい。巨大な滝を想像してしまって」
「すごいおととみずだったね」
「じゃあ、次はシオンの番だね」
シオンはなかなか水の壁のイメージが浮かばず、シャワーのような壁ができた。自分のシャワーの壁を見ているシオンの表情が暗かったので、気にしなくても大丈夫だよと声を掛ける。
「あせらなくとも、練習すればシオンも大きな壁ができるから」
「……うん」
しかし……真冬に水遊び。もうすぐ四十歳の私は寒がりさんなのだ。夏でも色々温めておきたいのよ。腰とか。身体が若返っても、まだ気持ちが追い付いていない。水浸しを見ると寒い雰囲気がする。
「この水浸しはどう処理すればいいですか?」
「魔力を帯びた水はきちんと消すことができますから、大丈夫ですよ」
いろいろと水浸しになった地面の水に消えろと念じると私の粗相はすぐに消えた。どうやら生活魔法の水は消せないが、水魔法の水は消せるらしい。一安心だが、不思議だ。
そういえば、こんなに大音量を出しているのに騎士が駆けつけてこないのは何故だろう? リリアに疑問を尋ねれば、練習場には防音が施されているらしい。天幕を鑑定で確認すれば、確かに防音付きだと出てくる。
「凄いですね」
「それに、ロワーズ様の命によりこの時間帯には騎士は近づかないよう命令されております」
そうなのか。だから護衛の騎士も中まで付いてこないのか。騎士達は森かトーナメント場で訓練しているらしい。
「それでは、次に参りましょう」
リリアが楽しそうに言う。その後は水弾と水刀や水矢を次々と習い、その日の水魔法講座を終了した。
正直、水球と水弾の違いが良く分からなかったけど、リリアには合格点を頂いたので良しとする。
最近、恒例になっていたシャッフルダンスはお休みにして集中力を高めるために瞑想をする。昔、自分磨きのためにヨガ教室に三ヶ月ほど通ったことがあったが失敗に終わった。三十歳を超えると何故か自分磨きに走り始める。持続性というものはとっても難しい。結局は仕事の激務で徐々にヨガ教室から足が遠のいた。それなのにバカなのか……その後も数ヶ月、月謝だけ払った。そんな過去の自分にお仕置きがしたい。
「今はヨガの時間、今はヨガの時間」
邪念を払うように瞑想に集中する。ヨガの中で瞑想が一番好きだった。絨毯の上に座り、肩の力を抜いてリラックスした目を閉じたまま腹式呼吸をする。頭を空にして、意識を呼吸だけに集中する。息を吸って……吐いて……
ドドン
『瞑想を覚えました』
ちょっと、アナウンスめっちゃ邪魔!
◇◇◇
瞑想を無事に終了、シオンを起こし身支度をさせる。一生懸命準備するシオンに穏やかな気持ちになる。よし、朝食をして魔法の練習だ。今日は水魔法を教えてもらうことになっている。ハインツの案内で先日と同じ練習場へ向かうとリリアの姿があった。
「エマ様。本日は僭越ながら、私が水魔法の指導をさせていただきたいと思います」
「リリア先生ですね。よろしくお願いいたします」
「よろしくおねがいします」
遅れてシオンがリリアに挨拶をする。ハインツはまた後で迎えに来ると、練習場から退散した。
「うふふ。じゃあ生活魔法の水を出すのと同じ要領で丸い水球を出せるかしら?」
「こうですか?」
リリアに指示されたと通り丸い水の玉を出す。
「お上手ですね。それではその玉に少しずつ魔力を注いで、大きくして回してください」
大きくなった水の玉を回転させる。ぽよよんとしたその動きは水風船のようだ。
ドドン
『水魔法を覚えました』
これだけで水魔法を取得したの? 喜んだのも束の間、隣で水の玉を回転させるのに悩むシオンが唸る。
「うーん。うーん」
「シオン、水風船を回す感じだよ」
「みずふうせん?」
「ボールみたいなぽよぽよした玉だよ」
水風船が何か分からなかったシオンは、ボールを回すイメージを固めた水の玉をクルクルと回転させることに成功する。シオンの肩がビクッとしたので、鑑定すればちゃんと水魔法が生えていた。リリアが拍手しながら誉めてくれる。
「やはり、お二人とも覚えが早いですね。これが水球《ウォーターボール》です。普通に出す時は、【水よ、球体となりて、我の前へ 水球】と唱えます。攻撃の時には【水よ、球体となりて、敵を撃て 水球】と詠唱します」
リリアが攻撃の水球を放つと勢いよく飛んでいき、練習場に備えられていた的に命中した。
「おお、当たりましたね」
「エマ様とシオン様は通常使う詠唱は必要ないようですので、実際にご自分のイメージでやっていただくのが良いかと思います」
自分のイメージか……水球とジェット噴射をイメージして水魔法を打つ。
【水球】
手から勢いよく発射した水球は思ったより攻撃力があり、そのまま的に当たると半分を破壊してしまった。やば、壊してしまった。リリアがやや引いたように笑う。
「大丈夫ですよ。的はまだありますから……シオン様もどうぞ」
シオンは水鉄砲のような小さな水球を数発出した。的には当たらなかったが土弾と同じイメージで撃っているのだろう。リリアも素晴らしいと拍手しながらシオンを褒める。
「それでは、次に参ります。【水よ。壁を作り、敵の攻撃を防げ 水壁】」
リリアの前に渦巻く水壁が突然現れる。土壁もだけど、水壁もなかなかの迫力だ。モーゼができそうだモーゼが。
それではどうぞとリリアに言われたのだが、水壁のイメージがモーゼ以外浮かばない。流石にモーゼはやらないよ。あ、滝のイメージならできそうだ。
【水壁】
水球よりも魔力が抜け、大音量の水音とともに目の前には滝の壁がそびえ立つ。壁を見上げリリアが嘆く。
「な、この大きさ、それにこの水の量……」
「ちょ、ちょっと大きいの出し過ぎましたね」
しまった……その辺の小さな滝をイメージするべきだった。滝といえばナイアガラの滝のイメージが出てきてしまった。作り上げた水壁から滝の水が吹き出し、辺りの地面をびちゃびちゃにしたので水壁を終了する。
ドドン
『水魔法の操作が上がりました』
ああ、そうですか。ステータスを確認するが、操作に関しての表示はなかった。リリアが不安そうに尋ねる。
「エマ様……魔力は大丈夫でしょうか?」
「え? は、はい。巨大な滝を想像してしまって」
「すごいおととみずだったね」
「じゃあ、次はシオンの番だね」
シオンはなかなか水の壁のイメージが浮かばず、シャワーのような壁ができた。自分のシャワーの壁を見ているシオンの表情が暗かったので、気にしなくても大丈夫だよと声を掛ける。
「あせらなくとも、練習すればシオンも大きな壁ができるから」
「……うん」
しかし……真冬に水遊び。もうすぐ四十歳の私は寒がりさんなのだ。夏でも色々温めておきたいのよ。腰とか。身体が若返っても、まだ気持ちが追い付いていない。水浸しを見ると寒い雰囲気がする。
「この水浸しはどう処理すればいいですか?」
「魔力を帯びた水はきちんと消すことができますから、大丈夫ですよ」
いろいろと水浸しになった地面の水に消えろと念じると私の粗相はすぐに消えた。どうやら生活魔法の水は消せないが、水魔法の水は消せるらしい。一安心だが、不思議だ。
そういえば、こんなに大音量を出しているのに騎士が駆けつけてこないのは何故だろう? リリアに疑問を尋ねれば、練習場には防音が施されているらしい。天幕を鑑定で確認すれば、確かに防音付きだと出てくる。
「凄いですね」
「それに、ロワーズ様の命によりこの時間帯には騎士は近づかないよう命令されております」
そうなのか。だから護衛の騎士も中まで付いてこないのか。騎士達は森かトーナメント場で訓練しているらしい。
「それでは、次に参りましょう」
リリアが楽しそうに言う。その後は水弾と水刀や水矢を次々と習い、その日の水魔法講座を終了した。
正直、水球と水弾の違いが良く分からなかったけど、リリアには合格点を頂いたので良しとする。
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