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異世界と少年と私
騎士の練習
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今日も昨日と同じように早朝に目が覚める。
日本にいた時は毎晩夜更かし梟だったが、早寝早起きの健康生活も悪くない。外からは騎士たちの声が聞こえる。すでに活動してる者が多く賑やかだ。
転移した時に着ていたインナー、Tシャツ、それからジーンズを洗浄《クリーン》した後にコピーをした。ダウンジャッケットはなぜかコピーできなかった。鑑定をしたら、耐寒付与がされていた。魔道具扱いってことかな? 確かに非常に温かった。残りのコピーでハンドクリームとクッキーを三箱まとめてコピーした。
「エマ様、シオン様。おはようございます」
「アンもおはよう。今日もありがとう」
アンにも私のことはエマと呼んでほしいと言ったが、拒否されてしまう。
今日の朝食は、甘くないパンケーキにソーセージを包んだピッグ・イン・ザ・ブランケッツだ。付け合わせには、グリッツに豆とオークの煮込み。やっぱり全ての味付けは塩味が中心だが、ソーセージとオークのエキスが染みていて美味しい。朝食終わりにコピーをしていたハンドクリームをアンに準備してもらった瓶に詰め渡す。
「このような高価な物は受け取れません」
「高価な物ではないのよ。本当に。ただ、お世話になっているお礼なので受け取ってくれたら嬉しい。ね?」
「でも、私だけ頂いても」
「大丈夫。ちゃんとリリアさんとハインツさんにも準備しているから」
それならとアンがハンドクリームを受け取ってくれる。その後、私の服に興味を持っていたリリアにはコピーした服を、ハインツには何が喜ばれるか分からなかったので……とりあえず小分けにしたクッキーを渡すことにした。
「こんな、ふんだんに綿が使用された服を頂くなんて……」
リリアも綿製の服は高価だと遠慮した。正直、渡している物は小分けにしたクリームと私の古着だ。こっちのほうが申し訳ない気分だ。
「ここは、エマ様の好意を無碍にせずにお礼の品をいただきましょう。贅沢に砂糖が使用されているのでしょう、こちらの菓子も大変甘い香りがします。とても美味しそうでございます」
ハインツが袋に入れたクッキーを受け取りながら礼を言う。
「これはシュガークッキーといって、クッキーの外側にも砂糖が散りばめられてるんですよ」
「それはそれは、楽しみですね」
喜んでくれたようでよかった。リリアは服を研究して再現したいと私のジーンズを見ながらうっとりしていた。どうやらこの国にはデニム生地はないようだ。アンもハンドクリームの香りが好きだと嬉しそうに言う。クリームがなくなったらまた詰め替えてあげよう。天幕を去る寸前、ハインツが思い出したかのように振り向く。
「そうでした。本日から数日の間、野営地にて騎士の総合訓練が行われます。少し騒がしくなりますのでご了承ください」
今までも、騎士の朝の訓練は聞こえていたけれど、朝食後は静かになっていた。昨日から騎士の人数が多いなと思っていたら、そういうことか。
「分かりました。今日は一日、天幕に待機していたほうがいいですか?」
「もしよろしければ、訓練をご覧になりますか? 本日は、新人のトーナメント試合でございます」
見ていいの? シオンは、剣と魔法の試合と聞いて目をキラキラさせていたので見学したいのだろう。
「可能なら見学してもよいでしょうか?」
「ロワーズ様に確認させていただきますが、問題はないかと思います」
その後、見学の許可が無事された。
試合までシオンと灯《ライト》で遊んでいたら、ハインツとリリアが迎えに来た。シオンとお揃いのマントを羽織り、試合会場へと向かう。
マントの内ポケットには財布の収納袋《アイテムバッグ》を入れ、その中には小分けにした飴とクッキーを入れた。財布にエコバッグの収納袋を入れることはできなかったので、少し嵩張《かさば》るが、エコバッグを二つとも折りたたみにしてドレスの中のポケットに入れた。
十数分ほど歩いて、試合のある訓練場へと着いた。雪道に苦戦していたシオンは途中から私が抱っこした。
「案内の騎士に声を掛けますので、こちらでお待ちください」
ハインツが騎士と話している間、練習場をシオンと一緒に見渡す。野外に準備されていた広範囲に及ぶ練習場の地面は雪が降ったはずなのに綺麗に整備されていた。
「わぁ」
たくさんの騎士がいるのを見てシオンが小さく声を上げる。
「シオン、大丈夫?」
「うん。アニメでみたきしさんがいっぱい」
「そうだね」
ハインツと共に戻って来た騎士二人を紹介され軽く挨拶を済ませたら、観戦用のタープへと案内された。リリアはお茶の準備、ハインツはロワーズに到着を知らせるために離れたので、タープの中に準備されていたベンチにシオンと座った。先ほど紹介された騎士の二人はどうやら護衛……か見張りのために共に側に残る。大丈夫ちゃんとここでジッとしているから。騎士の二人を鑑定する。
カルロス
年齢:十九
種族:人族
職業:黒騎士団騎士
魔力2 体力4
スキル:言語、 長剣、短剣、索敵、戦闘、俊足、殺気、 防御、精神耐性
魔法属性:土
魔法:生活魔法、土魔法
ディエゴ
年齢:二十一
種族:人族
職業:黒騎士団騎士
魔力2 体力5
スキル:言語、長剣、短剣、 弓、 索敵、戦闘、俊足、 殺気、 防御、房中術、精神耐性
魔法属性:風
魔法:生活魔法、風魔法
称号:百人斬り
騎士の二人を凝視してしまったのか、ディエゴに軽くウィンクをされる。二十一歳のウィンク、眩しいわ。百一人目の標的になりたくないので、ウィンクは無視する。
日本にいた時は毎晩夜更かし梟だったが、早寝早起きの健康生活も悪くない。外からは騎士たちの声が聞こえる。すでに活動してる者が多く賑やかだ。
転移した時に着ていたインナー、Tシャツ、それからジーンズを洗浄《クリーン》した後にコピーをした。ダウンジャッケットはなぜかコピーできなかった。鑑定をしたら、耐寒付与がされていた。魔道具扱いってことかな? 確かに非常に温かった。残りのコピーでハンドクリームとクッキーを三箱まとめてコピーした。
「エマ様、シオン様。おはようございます」
「アンもおはよう。今日もありがとう」
アンにも私のことはエマと呼んでほしいと言ったが、拒否されてしまう。
今日の朝食は、甘くないパンケーキにソーセージを包んだピッグ・イン・ザ・ブランケッツだ。付け合わせには、グリッツに豆とオークの煮込み。やっぱり全ての味付けは塩味が中心だが、ソーセージとオークのエキスが染みていて美味しい。朝食終わりにコピーをしていたハンドクリームをアンに準備してもらった瓶に詰め渡す。
「このような高価な物は受け取れません」
「高価な物ではないのよ。本当に。ただ、お世話になっているお礼なので受け取ってくれたら嬉しい。ね?」
「でも、私だけ頂いても」
「大丈夫。ちゃんとリリアさんとハインツさんにも準備しているから」
それならとアンがハンドクリームを受け取ってくれる。その後、私の服に興味を持っていたリリアにはコピーした服を、ハインツには何が喜ばれるか分からなかったので……とりあえず小分けにしたクッキーを渡すことにした。
「こんな、ふんだんに綿が使用された服を頂くなんて……」
リリアも綿製の服は高価だと遠慮した。正直、渡している物は小分けにしたクリームと私の古着だ。こっちのほうが申し訳ない気分だ。
「ここは、エマ様の好意を無碍にせずにお礼の品をいただきましょう。贅沢に砂糖が使用されているのでしょう、こちらの菓子も大変甘い香りがします。とても美味しそうでございます」
ハインツが袋に入れたクッキーを受け取りながら礼を言う。
「これはシュガークッキーといって、クッキーの外側にも砂糖が散りばめられてるんですよ」
「それはそれは、楽しみですね」
喜んでくれたようでよかった。リリアは服を研究して再現したいと私のジーンズを見ながらうっとりしていた。どうやらこの国にはデニム生地はないようだ。アンもハンドクリームの香りが好きだと嬉しそうに言う。クリームがなくなったらまた詰め替えてあげよう。天幕を去る寸前、ハインツが思い出したかのように振り向く。
「そうでした。本日から数日の間、野営地にて騎士の総合訓練が行われます。少し騒がしくなりますのでご了承ください」
今までも、騎士の朝の訓練は聞こえていたけれど、朝食後は静かになっていた。昨日から騎士の人数が多いなと思っていたら、そういうことか。
「分かりました。今日は一日、天幕に待機していたほうがいいですか?」
「もしよろしければ、訓練をご覧になりますか? 本日は、新人のトーナメント試合でございます」
見ていいの? シオンは、剣と魔法の試合と聞いて目をキラキラさせていたので見学したいのだろう。
「可能なら見学してもよいでしょうか?」
「ロワーズ様に確認させていただきますが、問題はないかと思います」
その後、見学の許可が無事された。
試合までシオンと灯《ライト》で遊んでいたら、ハインツとリリアが迎えに来た。シオンとお揃いのマントを羽織り、試合会場へと向かう。
マントの内ポケットには財布の収納袋《アイテムバッグ》を入れ、その中には小分けにした飴とクッキーを入れた。財布にエコバッグの収納袋を入れることはできなかったので、少し嵩張《かさば》るが、エコバッグを二つとも折りたたみにしてドレスの中のポケットに入れた。
十数分ほど歩いて、試合のある訓練場へと着いた。雪道に苦戦していたシオンは途中から私が抱っこした。
「案内の騎士に声を掛けますので、こちらでお待ちください」
ハインツが騎士と話している間、練習場をシオンと一緒に見渡す。野外に準備されていた広範囲に及ぶ練習場の地面は雪が降ったはずなのに綺麗に整備されていた。
「わぁ」
たくさんの騎士がいるのを見てシオンが小さく声を上げる。
「シオン、大丈夫?」
「うん。アニメでみたきしさんがいっぱい」
「そうだね」
ハインツと共に戻って来た騎士二人を紹介され軽く挨拶を済ませたら、観戦用のタープへと案内された。リリアはお茶の準備、ハインツはロワーズに到着を知らせるために離れたので、タープの中に準備されていたベンチにシオンと座った。先ほど紹介された騎士の二人はどうやら護衛……か見張りのために共に側に残る。大丈夫ちゃんとここでジッとしているから。騎士の二人を鑑定する。
カルロス
年齢:十九
種族:人族
職業:黒騎士団騎士
魔力2 体力4
スキル:言語、 長剣、短剣、索敵、戦闘、俊足、殺気、 防御、精神耐性
魔法属性:土
魔法:生活魔法、土魔法
ディエゴ
年齢:二十一
種族:人族
職業:黒騎士団騎士
魔力2 体力5
スキル:言語、長剣、短剣、 弓、 索敵、戦闘、俊足、 殺気、 防御、房中術、精神耐性
魔法属性:風
魔法:生活魔法、風魔法
称号:百人斬り
騎士の二人を凝視してしまったのか、ディエゴに軽くウィンクをされる。二十一歳のウィンク、眩しいわ。百一人目の標的になりたくないので、ウィンクは無視する。
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