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本編
旅の道中
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王都から出て数時間後、馬車が急停止をした。何事かと驚いていると外から冒険者の声がする。
「よーし、今回の旅の初魔物だ。前衛の数人で狩ってくれ」
え? 魔物?
窓の外をラジェと覗くが何も見えない。
爺さんが読んでいた本から顔を上げ言う。
「心配するでない。この通りは小物の魔物が出やすい。いつものことだ」
「ミリーちゃん、あれ」
ラジェが指差す林を見れば、数匹の大きなネズミが茂みから現れた。王都のネズミよりも数倍の大きさだ。そんなネズミたちの牙や爪は鋭く、冒険者たちを威嚇しながら唸り声を上げる。
窓の外を確認した爺さんが鼻で笑う。
「なんじゃい。ただのネズミか」
「普通のネズミより十分大きいと思いますけど……」
「あんなの小物だ。角付き大ネズミともなればお主たちより大きいぞ」
私たちより大きいって……そんなネズミは却下します!
冒険者に飛びかかり、討伐されるネズミを見ながら眉間に皺を寄せた。以前聞いていた蜂もだけど、魔物ってサイズ感がおかしい……
そういえば、魔物の活性化の話は引き続き警戒中だという。なんだか少し不安になり爺さんに尋ねる。
「他にも魔物が出没するのですか?」
「少し――うむ、そうだな。最近では大蛇が現れると聞く。子供なんぞ簡単に食われるぞ」
ニヤニヤしながら言う爺さんをジト目で見る。
「それは嘘ですよね?」
「なんじゃい。つまらん。たまには子供のような態度を取れんのかの。ラジェを見てみよ」
ラジェを見ればホッと一安心をしている。
(爺さん……子供を怖がらせて楽しいかい?)
無事に魔物のネズミたちの討伐が終わると、再び馬車が動き出す。バッグの中のオーツクッキーに手を伸ばすと、ニナの手紙とマリッサから受け取ったステファニーさんの箱が目に入った。
(うーん。この箱には何が入っているんだろう)
気になったので、ピンクのリボンで包まれた箱をバッグの中でコッソリと開ける。すると、中からはいつか無くした赤い珊瑚の宝石玉が入っていた。
(あー、これ、やっぱりステファニーさんの家で無くしていたんだ……)
これは以前魔力を込めることができたので、魔石なのだと思う。
「ミリーちゃん、真剣な顔をしてどうしたの?」
バッグの中に、手を突っ込んだまま停止していた私にラジェが心配そうな声で尋ねた。
「なんでもないよ。オーツクッキーがあるから一緒に食べよう」
「うん! ありがとう」
私とラジェがオーツクッキーを食べるのを眺める爺さんに鼻をひくひくさせながら言う。
「意地悪なお祖父ちゃんにはオーツクッキーはありませーん!」
「誰もクッキーなどいらんわ!」
プッと爺さんの隣に座るキースが噴き出すと、爺さんが隣の席を睨む。
爺さんはその後、読んでいた本に戻ったのでニナの手紙を開く。
ニナの手紙には、可愛い手書きの花とリボンの下で私とラジェが手を繋いで楽しそうに遊ぶ絵が描いてあった。絵の上にはマルクの字で「二人とも楽しんできてね!」と書いてあった。あの二人が仲良くこの手紙を書いている姿を思い浮かべ、口元が緩んだ。
「ラジェ、二人からの手紙だよ」
「これ、ミリーちゃんと僕?」
「そうみたい」
ラジェが少しだけほほを染めながら、手紙を見つめた。
次にステファニーさんの手紙を開くと、小金貨が一枚が同封されていた。手紙には小金貨はステファニーおばあちゃんからの餞別よと書いてあったけど、七歳児にあげる金額ではないと思う。これが貴族の感覚なのか……
(ステファニーさんにもアジュールからお土産を買って帰らないとね)
手紙の残りの文面は当たり障りない内容だったけど、最後の二行を読んでギクリとする。
~ミリアナちゃんが落とした炎の魔石を同封します。次回、お会いした時にお話が必要ね。また会える日を楽しみにしています~
この魔石、炎の魔石だったのか。火と炎の魔法は別なのかな? あの魔石は屋根裏部屋にあった宝石箱の隠し扉に入っていたんだけど、それ以外にお話なんてすることあるのかな……
この件は保留……かな。
ステファニーさんの手紙をまじまじと見つめていると、キースが尋ねる。
「それは、マリッサ様から受け取ったレディスパークからの手紙でしょうか?」
「はい。旅の餞別をいただきました」
小金貨一枚を見せながら言うと、爺さんがため息を吐く。
「七歳の子供への餞別ではないな。貴族は相変わらず金銭感覚がおかしいな」
これに関しては、私も爺さんと同意見だ。でも、爺さんも金の多さに関しては貴族側だと思う。
「よーし、今回の旅の初魔物だ。前衛の数人で狩ってくれ」
え? 魔物?
窓の外をラジェと覗くが何も見えない。
爺さんが読んでいた本から顔を上げ言う。
「心配するでない。この通りは小物の魔物が出やすい。いつものことだ」
「ミリーちゃん、あれ」
ラジェが指差す林を見れば、数匹の大きなネズミが茂みから現れた。王都のネズミよりも数倍の大きさだ。そんなネズミたちの牙や爪は鋭く、冒険者たちを威嚇しながら唸り声を上げる。
窓の外を確認した爺さんが鼻で笑う。
「なんじゃい。ただのネズミか」
「普通のネズミより十分大きいと思いますけど……」
「あんなの小物だ。角付き大ネズミともなればお主たちより大きいぞ」
私たちより大きいって……そんなネズミは却下します!
冒険者に飛びかかり、討伐されるネズミを見ながら眉間に皺を寄せた。以前聞いていた蜂もだけど、魔物ってサイズ感がおかしい……
そういえば、魔物の活性化の話は引き続き警戒中だという。なんだか少し不安になり爺さんに尋ねる。
「他にも魔物が出没するのですか?」
「少し――うむ、そうだな。最近では大蛇が現れると聞く。子供なんぞ簡単に食われるぞ」
ニヤニヤしながら言う爺さんをジト目で見る。
「それは嘘ですよね?」
「なんじゃい。つまらん。たまには子供のような態度を取れんのかの。ラジェを見てみよ」
ラジェを見ればホッと一安心をしている。
(爺さん……子供を怖がらせて楽しいかい?)
無事に魔物のネズミたちの討伐が終わると、再び馬車が動き出す。バッグの中のオーツクッキーに手を伸ばすと、ニナの手紙とマリッサから受け取ったステファニーさんの箱が目に入った。
(うーん。この箱には何が入っているんだろう)
気になったので、ピンクのリボンで包まれた箱をバッグの中でコッソリと開ける。すると、中からはいつか無くした赤い珊瑚の宝石玉が入っていた。
(あー、これ、やっぱりステファニーさんの家で無くしていたんだ……)
これは以前魔力を込めることができたので、魔石なのだと思う。
「ミリーちゃん、真剣な顔をしてどうしたの?」
バッグの中に、手を突っ込んだまま停止していた私にラジェが心配そうな声で尋ねた。
「なんでもないよ。オーツクッキーがあるから一緒に食べよう」
「うん! ありがとう」
私とラジェがオーツクッキーを食べるのを眺める爺さんに鼻をひくひくさせながら言う。
「意地悪なお祖父ちゃんにはオーツクッキーはありませーん!」
「誰もクッキーなどいらんわ!」
プッと爺さんの隣に座るキースが噴き出すと、爺さんが隣の席を睨む。
爺さんはその後、読んでいた本に戻ったのでニナの手紙を開く。
ニナの手紙には、可愛い手書きの花とリボンの下で私とラジェが手を繋いで楽しそうに遊ぶ絵が描いてあった。絵の上にはマルクの字で「二人とも楽しんできてね!」と書いてあった。あの二人が仲良くこの手紙を書いている姿を思い浮かべ、口元が緩んだ。
「ラジェ、二人からの手紙だよ」
「これ、ミリーちゃんと僕?」
「そうみたい」
ラジェが少しだけほほを染めながら、手紙を見つめた。
次にステファニーさんの手紙を開くと、小金貨が一枚が同封されていた。手紙には小金貨はステファニーおばあちゃんからの餞別よと書いてあったけど、七歳児にあげる金額ではないと思う。これが貴族の感覚なのか……
(ステファニーさんにもアジュールからお土産を買って帰らないとね)
手紙の残りの文面は当たり障りない内容だったけど、最後の二行を読んでギクリとする。
~ミリアナちゃんが落とした炎の魔石を同封します。次回、お会いした時にお話が必要ね。また会える日を楽しみにしています~
この魔石、炎の魔石だったのか。火と炎の魔法は別なのかな? あの魔石は屋根裏部屋にあった宝石箱の隠し扉に入っていたんだけど、それ以外にお話なんてすることあるのかな……
この件は保留……かな。
ステファニーさんの手紙をまじまじと見つめていると、キースが尋ねる。
「それは、マリッサ様から受け取ったレディスパークからの手紙でしょうか?」
「はい。旅の餞別をいただきました」
小金貨一枚を見せながら言うと、爺さんがため息を吐く。
「七歳の子供への餞別ではないな。貴族は相変わらず金銭感覚がおかしいな」
これに関しては、私も爺さんと同意見だ。でも、爺さんも金の多さに関しては貴族側だと思う。
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