117 / 125
本編
それぞれの疲労
しおりを挟む
アンヌに預かった指輪を握りしめる。これは、どこか大切に保存しておかないと。
爺さんに貰った対魔法用の魔道具のネックレスを外す。今日の誘拐犯のせいで、散りばめられていた魔石は全て暗くなっていた。魔力を込め、再び魔石を輝かせる。
この魔道具、思ったよりも効果が凄かった。実験した時には感じなかったけど、人に対しては凶器にもなりえる。でもおかげで助かったのも事実だ。
ひとまず、一番安全な場所であるこのネックレスに指輪を通して保管しておこう。これなら服の中にも隠せる。
その後、ソファで一人ゴロゴロしていると、マリッサが夕食を持って上がってくる。
「今日は鶏のパスタよ」
「わーい」
ラジェが寝ているので小声で喜ぶと、マリッサも小声になる。
「ラジェ、寝ているのね」
「うん。今日は疲れたみたい」
「ミリー、夕食の前に破れている服を着替えなさいね」
誘拐犯に襲われ、転んだ時に服の一部が破れてしまっていた。そういえば、マリッサは服の破れに気がついていたんだった。
着替えて、マリッサに破れた服を渡す。
「お母さん、ごめんね」
「あら、怪我をしたの? 服に血が滲んでいるわよ」
「少し擦りむいただけだよ。でも、もう擦り傷は魔法で治したよ」
「そうなのね……今度から気を付けなさい」
「うん!」
マリッサの返事に少し間があったので、怪我をしたやや経緯を疑っているようだ。
とりあえず月光さんが戻り、詳細を聞くまで、今日の事件の話をするのは保留すると決めた。
私のお腹がグーッと大きな音で鳴ったことにマリッサが笑う。
「ミリー、温かい内に食事をしなさい」
「ラジェを起こしてからね」
マリッサがジークの確認に部屋へと向かったので、ソファで熟睡するラジェを軽く揺する。でも、全然起きない。それなら――
「たーらん。たーらん」
「え? サメ?」
サメのテーマソングを小声で歌うと、熟睡していたラジェの目が見開く。
まだ寝ぼけているラジェに、土魔法で作った小さなサメを見せながら言う。
「ラジェ、おはよう」
「サメ……」
「夕食の時間だよ。今日は鶏のパスタだって」
「僕、いつの間に寝ていたの?」
「少しだけだよ。そんなに長くは寝ていないよ。今日は魔法関係で疲れちゃったんだろうね」
ラジェとテーブルに着き、鶏のパスタを頬張る。
魔法をたくさん使い、触れたせいかラジェはいつもよりも多く夕食を食べた。
「ラジェ、パンもっとあるよ。いる?」
「うん。ありがとう、ミリーちゃん」
ラジェがはにかみながらパンを頬張るのを眺め、笑顔になる。
お腹いっぱい食べた後、またウトウトし始めたラジェはそのまま三階へと戻った。
部屋に戻り、一人呟く。
「月光さん……?」
返事はない。どうやらまだ戻ってきていないようだ。それなら、今日は魔力枯渇ができそうだ。
黒魔法で部屋を防音する。
今日のテーマはアリクイだ。ラジェの展開した蟻地獄のような魔法が頭に残っていた。蟻自体は小さいので却下。蟻を大きくするのも却下。
なので、次善の策としてアリクイだ。
とりあえず一体、作ってみる。えーと、ナマケモノに似た――
「こんな感じか」
そこには鼻の長い可愛らしいクマのような生物がいた。とりあえず、もう二体作ってみる。
確か、昔SNSで見たアリクイの威嚇は、抱っこをせがむような体勢だった。
アリクイたちを立ち上がらせ、抱っこお願いポーズをさせる。
「凄く可愛い……」
せっかくなのでアリクイに抱き着いてみるが……
「抱き心地は土でゼロ点だね」
動物のもふもふ部分まで再現できれば百点なのになぁ。
土魔法でリングを作り、アリクイレスリングをさせてみるが失敗する。
なんだかレスリングというよりも、リングでわちゃわちゃするアリクイになってしまった……
レスリングをやめ、今度はアリクイたちにアイリッシュダンスを踊らせる。
「足の長さが足りない……」
仕方ないので、アリクイの足を長くすれば……また気持ちの悪い生物が誕生する。
足が長くなった分、ダンスの動きの動作は簡単になったけど……コレチガウ感が半端なかったので、今日はいろいろ諦める。たぶん、ラジェと同じで私も疲れているんだ。
「早く、寝よ」
アリクイとリングを消し、白魔法を連打してベッドの上に枯渇気絶をする。
おやすみ。
爺さんに貰った対魔法用の魔道具のネックレスを外す。今日の誘拐犯のせいで、散りばめられていた魔石は全て暗くなっていた。魔力を込め、再び魔石を輝かせる。
この魔道具、思ったよりも効果が凄かった。実験した時には感じなかったけど、人に対しては凶器にもなりえる。でもおかげで助かったのも事実だ。
ひとまず、一番安全な場所であるこのネックレスに指輪を通して保管しておこう。これなら服の中にも隠せる。
その後、ソファで一人ゴロゴロしていると、マリッサが夕食を持って上がってくる。
「今日は鶏のパスタよ」
「わーい」
ラジェが寝ているので小声で喜ぶと、マリッサも小声になる。
「ラジェ、寝ているのね」
「うん。今日は疲れたみたい」
「ミリー、夕食の前に破れている服を着替えなさいね」
誘拐犯に襲われ、転んだ時に服の一部が破れてしまっていた。そういえば、マリッサは服の破れに気がついていたんだった。
着替えて、マリッサに破れた服を渡す。
「お母さん、ごめんね」
「あら、怪我をしたの? 服に血が滲んでいるわよ」
「少し擦りむいただけだよ。でも、もう擦り傷は魔法で治したよ」
「そうなのね……今度から気を付けなさい」
「うん!」
マリッサの返事に少し間があったので、怪我をしたやや経緯を疑っているようだ。
とりあえず月光さんが戻り、詳細を聞くまで、今日の事件の話をするのは保留すると決めた。
私のお腹がグーッと大きな音で鳴ったことにマリッサが笑う。
「ミリー、温かい内に食事をしなさい」
「ラジェを起こしてからね」
マリッサがジークの確認に部屋へと向かったので、ソファで熟睡するラジェを軽く揺する。でも、全然起きない。それなら――
「たーらん。たーらん」
「え? サメ?」
サメのテーマソングを小声で歌うと、熟睡していたラジェの目が見開く。
まだ寝ぼけているラジェに、土魔法で作った小さなサメを見せながら言う。
「ラジェ、おはよう」
「サメ……」
「夕食の時間だよ。今日は鶏のパスタだって」
「僕、いつの間に寝ていたの?」
「少しだけだよ。そんなに長くは寝ていないよ。今日は魔法関係で疲れちゃったんだろうね」
ラジェとテーブルに着き、鶏のパスタを頬張る。
魔法をたくさん使い、触れたせいかラジェはいつもよりも多く夕食を食べた。
「ラジェ、パンもっとあるよ。いる?」
「うん。ありがとう、ミリーちゃん」
ラジェがはにかみながらパンを頬張るのを眺め、笑顔になる。
お腹いっぱい食べた後、またウトウトし始めたラジェはそのまま三階へと戻った。
部屋に戻り、一人呟く。
「月光さん……?」
返事はない。どうやらまだ戻ってきていないようだ。それなら、今日は魔力枯渇ができそうだ。
黒魔法で部屋を防音する。
今日のテーマはアリクイだ。ラジェの展開した蟻地獄のような魔法が頭に残っていた。蟻自体は小さいので却下。蟻を大きくするのも却下。
なので、次善の策としてアリクイだ。
とりあえず一体、作ってみる。えーと、ナマケモノに似た――
「こんな感じか」
そこには鼻の長い可愛らしいクマのような生物がいた。とりあえず、もう二体作ってみる。
確か、昔SNSで見たアリクイの威嚇は、抱っこをせがむような体勢だった。
アリクイたちを立ち上がらせ、抱っこお願いポーズをさせる。
「凄く可愛い……」
せっかくなのでアリクイに抱き着いてみるが……
「抱き心地は土でゼロ点だね」
動物のもふもふ部分まで再現できれば百点なのになぁ。
土魔法でリングを作り、アリクイレスリングをさせてみるが失敗する。
なんだかレスリングというよりも、リングでわちゃわちゃするアリクイになってしまった……
レスリングをやめ、今度はアリクイたちにアイリッシュダンスを踊らせる。
「足の長さが足りない……」
仕方ないので、アリクイの足を長くすれば……また気持ちの悪い生物が誕生する。
足が長くなった分、ダンスの動きの動作は簡単になったけど……コレチガウ感が半端なかったので、今日はいろいろ諦める。たぶん、ラジェと同じで私も疲れているんだ。
「早く、寝よ」
アリクイとリングを消し、白魔法を連打してベッドの上に枯渇気絶をする。
おやすみ。
5,035
お気に入りに追加
25,752
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
お姉ちゃん今回も我慢してくれる?
あんころもちです
恋愛
「マリィはお姉ちゃんだろ! 妹のリリィにそのおもちゃ譲りなさい!」
「マリィ君は双子の姉なんだろ? 妹のリリィが困っているなら手伝ってやれよ」
「マリィ? いやいや無理だよ。妹のリリィの方が断然可愛いから結婚するならリリィだろ〜」
私が欲しいものをお姉ちゃんが持っていたら全部貰っていた。
代わりにいらないものは全部押し付けて、お姉ちゃんにプレゼントしてあげていた。
お姉ちゃんの婚約者様も貰ったけど、お姉ちゃんは更に位の高い公爵様との婚約が決まったらしい。
ねぇねぇお姉ちゃん公爵様も私にちょうだい?
お姉ちゃんなんだから何でも譲ってくれるよね?
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。