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本編
それぞれの疲労
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アンヌに預かった指輪を握りしめる。これは、どこか大切に保存しておかないと。
爺さんに貰った対魔法用の魔道具のネックレスを外す。今日の誘拐犯のせいで、散りばめられていた魔石は全て暗くなっていた。魔力を込め、再び魔石を輝かせる。
この魔道具、思ったよりも効果が凄かった。実験した時には感じなかったけど、人に対しては凶器にもなりえる。でもおかげで助かったのも事実だ。
ひとまず、一番安全な場所であるこのネックレスに指輪を通して保管しておこう。これなら服の中にも隠せる。
その後、ソファで一人ゴロゴロしていると、マリッサが夕食を持って上がってくる。
「今日は鶏のパスタよ」
「わーい」
ラジェが寝ているので小声で喜ぶと、マリッサも小声になる。
「ラジェ、寝ているのね」
「うん。今日は疲れたみたい」
「ミリー、夕食の前に破れている服を着替えなさいね」
誘拐犯に襲われ、転んだ時に服の一部が破れてしまっていた。そういえば、マリッサは服の破れに気がついていたんだった。
着替えて、マリッサに破れた服を渡す。
「お母さん、ごめんね」
「あら、怪我をしたの? 服に血が滲んでいるわよ」
「少し擦りむいただけだよ。でも、もう擦り傷は魔法で治したよ」
「そうなのね……今度から気を付けなさい」
「うん!」
マリッサの返事に少し間があったので、怪我をしたやや経緯を疑っているようだ。
とりあえず月光さんが戻り、詳細を聞くまで、今日の事件の話をするのは保留すると決めた。
私のお腹がグーッと大きな音で鳴ったことにマリッサが笑う。
「ミリー、温かい内に食事をしなさい」
「ラジェを起こしてからね」
マリッサがジークの確認に部屋へと向かったので、ソファで熟睡するラジェを軽く揺する。でも、全然起きない。それなら――
「たーらん。たーらん」
「え? サメ?」
サメのテーマソングを小声で歌うと、熟睡していたラジェの目が見開く。
まだ寝ぼけているラジェに、土魔法で作った小さなサメを見せながら言う。
「ラジェ、おはよう」
「サメ……」
「夕食の時間だよ。今日は鶏のパスタだって」
「僕、いつの間に寝ていたの?」
「少しだけだよ。そんなに長くは寝ていないよ。今日は魔法関係で疲れちゃったんだろうね」
ラジェとテーブルに着き、鶏のパスタを頬張る。
魔法をたくさん使い、触れたせいかラジェはいつもよりも多く夕食を食べた。
「ラジェ、パンもっとあるよ。いる?」
「うん。ありがとう、ミリーちゃん」
ラジェがはにかみながらパンを頬張るのを眺め、笑顔になる。
お腹いっぱい食べた後、またウトウトし始めたラジェはそのまま三階へと戻った。
部屋に戻り、一人呟く。
「月光さん……?」
返事はない。どうやらまだ戻ってきていないようだ。それなら、今日は魔力枯渇ができそうだ。
黒魔法で部屋を防音する。
今日のテーマはアリクイだ。ラジェの展開した蟻地獄のような魔法が頭に残っていた。蟻自体は小さいので却下。蟻を大きくするのも却下。
なので、次善の策としてアリクイだ。
とりあえず一体、作ってみる。えーと、ナマケモノに似た――
「こんな感じか」
そこには鼻の長い可愛らしいクマのような生物がいた。とりあえず、もう二体作ってみる。
確か、昔SNSで見たアリクイの威嚇は、抱っこをせがむような体勢だった。
アリクイたちを立ち上がらせ、抱っこお願いポーズをさせる。
「凄く可愛い……」
せっかくなのでアリクイに抱き着いてみるが……
「抱き心地は土でゼロ点だね」
動物のもふもふ部分まで再現できれば百点なのになぁ。
土魔法でリングを作り、アリクイレスリングをさせてみるが失敗する。
なんだかレスリングというよりも、リングでわちゃわちゃするアリクイになってしまった……
レスリングをやめ、今度はアリクイたちにアイリッシュダンスを踊らせる。
「足の長さが足りない……」
仕方ないので、アリクイの足を長くすれば……また気持ちの悪い生物が誕生する。
足が長くなった分、ダンスの動きの動作は簡単になったけど……コレチガウ感が半端なかったので、今日はいろいろ諦める。たぶん、ラジェと同じで私も疲れているんだ。
「早く、寝よ」
アリクイとリングを消し、白魔法を連打してベッドの上に枯渇気絶をする。
おやすみ。
爺さんに貰った対魔法用の魔道具のネックレスを外す。今日の誘拐犯のせいで、散りばめられていた魔石は全て暗くなっていた。魔力を込め、再び魔石を輝かせる。
この魔道具、思ったよりも効果が凄かった。実験した時には感じなかったけど、人に対しては凶器にもなりえる。でもおかげで助かったのも事実だ。
ひとまず、一番安全な場所であるこのネックレスに指輪を通して保管しておこう。これなら服の中にも隠せる。
その後、ソファで一人ゴロゴロしていると、マリッサが夕食を持って上がってくる。
「今日は鶏のパスタよ」
「わーい」
ラジェが寝ているので小声で喜ぶと、マリッサも小声になる。
「ラジェ、寝ているのね」
「うん。今日は疲れたみたい」
「ミリー、夕食の前に破れている服を着替えなさいね」
誘拐犯に襲われ、転んだ時に服の一部が破れてしまっていた。そういえば、マリッサは服の破れに気がついていたんだった。
着替えて、マリッサに破れた服を渡す。
「お母さん、ごめんね」
「あら、怪我をしたの? 服に血が滲んでいるわよ」
「少し擦りむいただけだよ。でも、もう擦り傷は魔法で治したよ」
「そうなのね……今度から気を付けなさい」
「うん!」
マリッサの返事に少し間があったので、怪我をしたやや経緯を疑っているようだ。
とりあえず月光さんが戻り、詳細を聞くまで、今日の事件の話をするのは保留すると決めた。
私のお腹がグーッと大きな音で鳴ったことにマリッサが笑う。
「ミリー、温かい内に食事をしなさい」
「ラジェを起こしてからね」
マリッサがジークの確認に部屋へと向かったので、ソファで熟睡するラジェを軽く揺する。でも、全然起きない。それなら――
「たーらん。たーらん」
「え? サメ?」
サメのテーマソングを小声で歌うと、熟睡していたラジェの目が見開く。
まだ寝ぼけているラジェに、土魔法で作った小さなサメを見せながら言う。
「ラジェ、おはよう」
「サメ……」
「夕食の時間だよ。今日は鶏のパスタだって」
「僕、いつの間に寝ていたの?」
「少しだけだよ。そんなに長くは寝ていないよ。今日は魔法関係で疲れちゃったんだろうね」
ラジェとテーブルに着き、鶏のパスタを頬張る。
魔法をたくさん使い、触れたせいかラジェはいつもよりも多く夕食を食べた。
「ラジェ、パンもっとあるよ。いる?」
「うん。ありがとう、ミリーちゃん」
ラジェがはにかみながらパンを頬張るのを眺め、笑顔になる。
お腹いっぱい食べた後、またウトウトし始めたラジェはそのまま三階へと戻った。
部屋に戻り、一人呟く。
「月光さん……?」
返事はない。どうやらまだ戻ってきていないようだ。それなら、今日は魔力枯渇ができそうだ。
黒魔法で部屋を防音する。
今日のテーマはアリクイだ。ラジェの展開した蟻地獄のような魔法が頭に残っていた。蟻自体は小さいので却下。蟻を大きくするのも却下。
なので、次善の策としてアリクイだ。
とりあえず一体、作ってみる。えーと、ナマケモノに似た――
「こんな感じか」
そこには鼻の長い可愛らしいクマのような生物がいた。とりあえず、もう二体作ってみる。
確か、昔SNSで見たアリクイの威嚇は、抱っこをせがむような体勢だった。
アリクイたちを立ち上がらせ、抱っこお願いポーズをさせる。
「凄く可愛い……」
せっかくなのでアリクイに抱き着いてみるが……
「抱き心地は土でゼロ点だね」
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土魔法でリングを作り、アリクイレスリングをさせてみるが失敗する。
なんだかレスリングというよりも、リングでわちゃわちゃするアリクイになってしまった……
レスリングをやめ、今度はアリクイたちにアイリッシュダンスを踊らせる。
「足の長さが足りない……」
仕方ないので、アリクイの足を長くすれば……また気持ちの悪い生物が誕生する。
足が長くなった分、ダンスの動きの動作は簡単になったけど……コレチガウ感が半端なかったので、今日はいろいろ諦める。たぶん、ラジェと同じで私も疲れているんだ。
「早く、寝よ」
アリクイとリングを消し、白魔法を連打してベッドの上に枯渇気絶をする。
おやすみ。
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