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本編
ブンブン
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文字教室に到着すると、出迎えの神官にキースが止められる。
「親御さんは別室にてお待ちいただけるようにお願いします」
「それは、なぜでしょうか?」
キース、もとい月光さんは笑顔だが目が笑っていない。でも、神官も笑顔を崩さずに毅然とした態度で告げる。
「こちらの施設は広くなく、今日は特に人数が多いのでご理解願いたい」
「そうですか……分かりました。では、私は別室で待つとしよう」
「では、案内します」
キースが振り向き軽くウインクをする。ああ、これは……月光さん、別室で待つ気はさらさらないんだろうな。
「私たちは大丈夫なので、『ちゃんと』待っていてくださいね」
「もちろん『ちゃんと』待ちますよ」
んー。なんか含みのある返事だったけど、月光さんなら上手くやるだろう。
神官に別室に案内されるキースをラジェと一緒に見送り、文字教室の広場へと向かう。
今日は今年最後の文字教室だからか以前訪れた時の倍ほどの子供たちがいた。こんなにたくさんの子供をいっぺんに見るのは初めてかもしれない。
ラジェも子供の多さに圧倒されているようで、静かになっていた。
カンカンと鉄を叩く音が聞こえれば子供たちが一気に教室の席取りを始める。
前の席を取ろうと揉める子供たちを避け、ラジェが後ろの席を陣取る。
「ミリーちゃん、こっちの席が空いているよ」
「ありがと――」
「私がここに座るの」
ラジェが陣取ってくれた場所に座りに行こうとすれば、大きな女の子にラジェが押されるのが見えた。
勢いで地面に倒れたラジェに手を貸し、怪我をしていないか確認する。
「ラジェ、大丈夫?」
「うん。大したことないよ。大丈夫だよ」
怪我はしてないようでよかった。ラジェの服についた土をクリーンして、大きな女の子を見上げる。私たちより一、二歳年上だろうか。小さな花のピンが挿してあった髪を触るその顔はやや気不味い顔をしていた。ああ、まさかラジェが尻もちをつくほど強く押したという自覚がなかったのかな。
女の子がモジモジしながら謝る。
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫だよ。僕も前を見ていなかったから」
ラジェはそう言うと曇りのない笑顔を女の子に向け披露すると、みるみるうちに女の子の頬が赤くなりラジェを見る目が変わったのが分かった。ああ……これは、恋しちゃったかな。ラジェの笑顔をもう一度確認、眩しい笑顔だ。ガレルさんと同じようにラジェも将来はモテモテになるかもしれない。
「あ、あの。私、レイチェルって言うの。あなたは?」
「僕はラジェだよ。よろしくね、レイチェルちゃん」
レイチェルと名乗った子の目は完全にハート型に変わる。これは、完全に恋をしたなぁ。
「ラジェ君、もしよかったら……その、レイチェルと一緒に座ろう」
「ごめんね。僕、今日はミリーちゃんと座るから」
そう言って笑顔で振り向くラジェと対照的にレイチェルの刺さりそうな鋭い視線を感じる。小さくてもニナと同じでもう女なんだよね。ラジェ、罪な子!
明らかにテンションを落としたレイチェルが泣きそうになる。仕方ないな。ラジェ、ごめん。少しだけ犠牲になって!
「さ、三人で座ればいいよ!」
「ミリーちゃんがそう言うなら……」
「うん。ラジェは真ん中に座ってね。絶対」
レイチェルが満足そうにラジェの隣に座ったところで、前回と同じ全身をローブで隠した怪しさ満載のシルヴァンが登場する。
シルヴァンは辺りを見回すと、明らかに私たちがいる方向を見て立ち止まり手を振り始めた。手を振るのを止めないシルヴァンを見ながらラジェが尋ねる。
「み、ミリーちゃん。あれはこっちに手を振っているの?」
「た、たぶん……」
手を振り返すまで手を振るのを止めなさそうだったので、控えめに手を振るとシルヴァンは満足そうに青空教室を始めた。
周りにはジロジロみられるし、ちょっと恥ずかしかった。
「親御さんは別室にてお待ちいただけるようにお願いします」
「それは、なぜでしょうか?」
キース、もとい月光さんは笑顔だが目が笑っていない。でも、神官も笑顔を崩さずに毅然とした態度で告げる。
「こちらの施設は広くなく、今日は特に人数が多いのでご理解願いたい」
「そうですか……分かりました。では、私は別室で待つとしよう」
「では、案内します」
キースが振り向き軽くウインクをする。ああ、これは……月光さん、別室で待つ気はさらさらないんだろうな。
「私たちは大丈夫なので、『ちゃんと』待っていてくださいね」
「もちろん『ちゃんと』待ちますよ」
んー。なんか含みのある返事だったけど、月光さんなら上手くやるだろう。
神官に別室に案内されるキースをラジェと一緒に見送り、文字教室の広場へと向かう。
今日は今年最後の文字教室だからか以前訪れた時の倍ほどの子供たちがいた。こんなにたくさんの子供をいっぺんに見るのは初めてかもしれない。
ラジェも子供の多さに圧倒されているようで、静かになっていた。
カンカンと鉄を叩く音が聞こえれば子供たちが一気に教室の席取りを始める。
前の席を取ろうと揉める子供たちを避け、ラジェが後ろの席を陣取る。
「ミリーちゃん、こっちの席が空いているよ」
「ありがと――」
「私がここに座るの」
ラジェが陣取ってくれた場所に座りに行こうとすれば、大きな女の子にラジェが押されるのが見えた。
勢いで地面に倒れたラジェに手を貸し、怪我をしていないか確認する。
「ラジェ、大丈夫?」
「うん。大したことないよ。大丈夫だよ」
怪我はしてないようでよかった。ラジェの服についた土をクリーンして、大きな女の子を見上げる。私たちより一、二歳年上だろうか。小さな花のピンが挿してあった髪を触るその顔はやや気不味い顔をしていた。ああ、まさかラジェが尻もちをつくほど強く押したという自覚がなかったのかな。
女の子がモジモジしながら謝る。
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫だよ。僕も前を見ていなかったから」
ラジェはそう言うと曇りのない笑顔を女の子に向け披露すると、みるみるうちに女の子の頬が赤くなりラジェを見る目が変わったのが分かった。ああ……これは、恋しちゃったかな。ラジェの笑顔をもう一度確認、眩しい笑顔だ。ガレルさんと同じようにラジェも将来はモテモテになるかもしれない。
「あ、あの。私、レイチェルって言うの。あなたは?」
「僕はラジェだよ。よろしくね、レイチェルちゃん」
レイチェルと名乗った子の目は完全にハート型に変わる。これは、完全に恋をしたなぁ。
「ラジェ君、もしよかったら……その、レイチェルと一緒に座ろう」
「ごめんね。僕、今日はミリーちゃんと座るから」
そう言って笑顔で振り向くラジェと対照的にレイチェルの刺さりそうな鋭い視線を感じる。小さくてもニナと同じでもう女なんだよね。ラジェ、罪な子!
明らかにテンションを落としたレイチェルが泣きそうになる。仕方ないな。ラジェ、ごめん。少しだけ犠牲になって!
「さ、三人で座ればいいよ!」
「ミリーちゃんがそう言うなら……」
「うん。ラジェは真ん中に座ってね。絶対」
レイチェルが満足そうにラジェの隣に座ったところで、前回と同じ全身をローブで隠した怪しさ満載のシルヴァンが登場する。
シルヴァンは辺りを見回すと、明らかに私たちがいる方向を見て立ち止まり手を振り始めた。手を振るのを止めないシルヴァンを見ながらラジェが尋ねる。
「み、ミリーちゃん。あれはこっちに手を振っているの?」
「た、たぶん……」
手を振り返すまで手を振るのを止めなさそうだったので、控えめに手を振るとシルヴァンは満足そうに青空教室を始めた。
周りにはジロジロみられるし、ちょっと恥ずかしかった。
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