転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。

トロ猫

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本編

ラジェの疑問

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 まだ開店していない食堂のテーブルをジョー、マリッサ、ガレルさん、それからラジェと私で囲む。

「声を掛けられただけで何もされてないから、本当に大丈夫だよ」

 今日の市場の知らない女性に声を掛けられた状況を説明するが、マリッサもジョーもなんだか納得のいかない不安を感じているようだ。相手が下町の市場にいるのに裕福な服装をしていたのもだが、どうやら護衛を連れていたのではないかというガレルの話に更にうーんとうなり、二人して黙り込んでしまう。
 少ししてマリッサが不安そうに尋ねる。

「ミリー、その女性は貴族だったの?」
「違うと思う」

 これに関しては本当にそう思う。市場で声を掛けてきた女性は裕福で金銭的には余裕はありそうだったが、貴族かと問われるのなら違うと思う。ジョーのお母さんのような芯から湧きだす上品さは感じなかった。どっちにしても月光さんにあの女性の素性を尋ねれば誰かは分かるだろう。でも、このままだと明日の教室は行けなくなりそう。困りはしないが、なんとなくシルヴァンとの約束を破ることはしたくなかった。助け舟を求め天井をチラっと見上げたが、無反応だった。月光さんめ!

「俺も貴族だとは思わなかった」
「そうなのか? どうしてそう思った?」

 天井に向けてお願いした助け船はガレルさんから来た。ジョーの疑問に答えるガレルさんの洞察力は高く、驚くほど市場で声を掛けてきた女性とその後ろにいた護衛の詳細を覚えていた。ガレルさんが言うには後ろにいた護衛は雇われの短期の冒険者だろうという。

「護衛はまだ若く、警戒心が低かった。装備も中古品で錆びていた。駆け出しの冒険者だ。女は商人だ。服は綺麗だがベルトに財布を結び付けてポケットに入れていた。あれをやるのは商人だけだ。貴族の女は財布など持たない」

 ガレルさん、なんか凄いよ。あんなに片言だった王国語も最近は流ちょうになってきている。錆びとかポケットとか私は全然そんな場所を見ていなかった。目を輝かせながらガレルさんを見上げれば、目が合った瞬間に顔を逸らされる。なんでだろう……私の隣に座っているラジェを見れば、同じようにキラキラした目でガレルさんを見ていた。どうやら、ガレルさんは私たちの尊敬の眼差しに耐えきらずに顔を逸らしたみたいだ。話し合っている内容はシリアスだけど、なんとなくガレルさんを見ながらほのぼのとしてしまう。

「商人か……マリッサ、エンリケさんから何か聞いているか?」
「お祖父さまは何も言っていなかったけれど、急にミリーに従者を付けて出迎えを始めたから不思議には思っていたのよね」

 ジョーとマリッサ二人に加えてガレルさんとラジェも私を見る。

「あー、あー」

 急に話を振られてすぐに答えが出て来ずに目を泳がせていると、ボトっと天井の一部が床に落ち全員の視線がそちらに向かう。マリッサが落ちて来た板を拾いながら天井を見上げる。

「あら、やだ。天井が壊れたの? 板が完全に割れているわね」
「下に誰もいなくて良かったな。あとで大工を呼ぶから、ここは客が通らないようにしないとな」

 急に壊れた天井の件で市場の女性の話や急に私に付いた従者の話は中途半端に終わった。たぶん月光さんの仕業だろう。助かったけど、天井の修理代……。
 とにかく時間は稼げた。また夜にはジョーとマリッサに質問攻めにあうだろうからそれまでに月光さんから事情を聞こう。壊れた天井には布を張り応急処置をして床をクリーンする。天井を凝視するラジェに声を掛ける。

「明日には大工を呼ぶみたいだよ。部屋に戻るけどラジェはどうする?」
「僕も行く」

 ラジェと共に四階へ上がりソファへダイブする。ラジェはお茶の準備をしてくれた。ありがとう、ラジェ。

「お茶ができたよ。どうぞ」
「ありがとう! 今日はラジェも疲れたでしょう? なんか変な人に声掛けられたしね」
「うん……ミリーちゃん、天井にいるのは誰?」

 ラジェの質問に飲んでいたお茶を吹く。
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