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ファレンスの街
紫の渦
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いままで索敵にこんな紫の渦など表示されたことはない。
それにしても、地味に広範囲だな、これ。
紫の渦の周りには魔物も動物の気配もない。まるで、ここの位置を避けているかのように離れた場所に緑の点がポツポツとあるのが見える。
素通りしてもいいのだが……
「念のために確認だけでもしておくか」
紫の渦がある森に入り、草木が生い茂った場所を歩くこと十数分、目的地に到着する。
恐る恐る木陰から、紫の渦を確認して拍子抜けする。
「何もないのか……?」
索敵の紫の渦がある場所はただの行き止まりだった。行き止まりの崖を見上げる。
10メートルほどの高さの垂直な崖だ。
「まさかこの上じゃないよな」
登れないこともないが、わざわざ登る必要を感じない。
「キュイ?」
キモイが行き止まりの前でウロウロしたと思ったら、壁に体当たりして……消えた?
「キモイ!」
索敵で確認するがキモイの表示が見当たらない。どこに行った!
「ピィ!」
サトウが勢いよく鞄から出てくると、壁を凝視した。
「サトウ、キモイがどこに行ったかわかるのか?」
「ピィ!」
そう元気よく返事すると、サトウが壁の中にゆっくりと入っていった。
「は?」
この壁、目眩しなのか? それなら、と勢いよく壁に突進——
「痛ってぇ」
思いっきり壁に頭を打ち、しばらく悶える。
なんだよ。この壁、入れねぇのかよ!
今度はサトウのようにゆっくりと入ろうとしたが、これも失敗する。
壁を叩き叫ぶ。
「おい! キモイ、サトウ!」
索敵には先ほどと同じように紫の渦しか見えない。
まさか、死んだのか?
「いや、そんなはずはない」
急いでテイムの情報を確認、安堵のため息を漏らす。二匹ともまだテイムされている状態なので生きている。
アイテムボックスから作り溜めした粉砂糖を壁の前に盛る。
「キモイ、粉砂糖だぞ!」
反応はない。これは不安だ。
試しに粉砂糖の瓶を壁に投げると、そのまま通り抜け消えていった。
「もしかしたら、人だけを通さないのか?」
試しに石や草を投げ込むと、全て通った。それが分かったのはいいのだが、俺が入れないって状況は変わらない。
どうすればいいんだ?
しばらく考えていたら、勢いよくキモイとサトウが壁から飛び出し抱きついてきた。
「キュイ! キュイ!」
「ピィ! ピィ!」
「お前ら、勝手な行動をすんなよ。心配するだろうが!」
キモイは粉砂糖の瓶をしっかりと食手に持っていたが、壁を見ながら何かを訴えている。サトウもバサバサと羽をバタつかせ興奮しているようだが、なんだ? この渦が危険なのか?
「とりあえず、離れるか」
なんだか無性に嫌な予感がしてその場を後に歩き出すが、すぐに鐘がエコーするような音が耳に響いた。振り向くと、後方の壁に渦のような形が現れるのが見えた。
「逃げるぞ!」
即座にキモイとサトウを抱え走り出すが、暴風に足元を掬われ壁の中へと一気に吸い込まれてしまう。
それにしても、地味に広範囲だな、これ。
紫の渦の周りには魔物も動物の気配もない。まるで、ここの位置を避けているかのように離れた場所に緑の点がポツポツとあるのが見える。
素通りしてもいいのだが……
「念のために確認だけでもしておくか」
紫の渦がある森に入り、草木が生い茂った場所を歩くこと十数分、目的地に到着する。
恐る恐る木陰から、紫の渦を確認して拍子抜けする。
「何もないのか……?」
索敵の紫の渦がある場所はただの行き止まりだった。行き止まりの崖を見上げる。
10メートルほどの高さの垂直な崖だ。
「まさかこの上じゃないよな」
登れないこともないが、わざわざ登る必要を感じない。
「キュイ?」
キモイが行き止まりの前でウロウロしたと思ったら、壁に体当たりして……消えた?
「キモイ!」
索敵で確認するがキモイの表示が見当たらない。どこに行った!
「ピィ!」
サトウが勢いよく鞄から出てくると、壁を凝視した。
「サトウ、キモイがどこに行ったかわかるのか?」
「ピィ!」
そう元気よく返事すると、サトウが壁の中にゆっくりと入っていった。
「は?」
この壁、目眩しなのか? それなら、と勢いよく壁に突進——
「痛ってぇ」
思いっきり壁に頭を打ち、しばらく悶える。
なんだよ。この壁、入れねぇのかよ!
今度はサトウのようにゆっくりと入ろうとしたが、これも失敗する。
壁を叩き叫ぶ。
「おい! キモイ、サトウ!」
索敵には先ほどと同じように紫の渦しか見えない。
まさか、死んだのか?
「いや、そんなはずはない」
急いでテイムの情報を確認、安堵のため息を漏らす。二匹ともまだテイムされている状態なので生きている。
アイテムボックスから作り溜めした粉砂糖を壁の前に盛る。
「キモイ、粉砂糖だぞ!」
反応はない。これは不安だ。
試しに粉砂糖の瓶を壁に投げると、そのまま通り抜け消えていった。
「もしかしたら、人だけを通さないのか?」
試しに石や草を投げ込むと、全て通った。それが分かったのはいいのだが、俺が入れないって状況は変わらない。
どうすればいいんだ?
しばらく考えていたら、勢いよくキモイとサトウが壁から飛び出し抱きついてきた。
「キュイ! キュイ!」
「ピィ! ピィ!」
「お前ら、勝手な行動をすんなよ。心配するだろうが!」
キモイは粉砂糖の瓶をしっかりと食手に持っていたが、壁を見ながら何かを訴えている。サトウもバサバサと羽をバタつかせ興奮しているようだが、なんだ? この渦が危険なのか?
「とりあえず、離れるか」
なんだか無性に嫌な予感がしてその場を後に歩き出すが、すぐに鐘がエコーするような音が耳に響いた。振り向くと、後方の壁に渦のような形が現れるのが見えた。
「逃げるぞ!」
即座にキモイとサトウを抱え走り出すが、暴風に足元を掬われ壁の中へと一気に吸い込まれてしまう。
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コメントありがとうございます!
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おはようございます
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ᐕ)ノ
そう言っていただけて嬉しいです!
ありがとうございます!