スキル調味料は意外と使える

トロ猫

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ファレンスの街

索敵の先

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 ファレンスに向かって歩くこと数時間、辺りが暗くなり始める。

「今日はここまでだな」

 道から外れた林の中に入り腰を下ろす。索敵をかけ続けているが、特に警戒する魔物や人などはいない。
 種族補正のおかげで疲れてはいないのでこのまま歩き続けてもいいのだが、なんせ照明灯などないので夜になると辺りは真っ暗になる。
 キモイは足が遅いので移動中は俺の頭の上に終始いたが、サトウは数十分ほど力強く歩いて今はバッグの中で爆睡中だ。
 焚き火とかの準備はないが、出発前にロコス焼きを十個購入したのでそのうちの一つを食う。

「やっぱ、美味いなこれ」

 結局徒歩になるのなら、野営の準備もしておくべきだったな。せっかく買った米はいまだに調理できていない。

「途中の村で野営の道具を調達できればいいな」
「キュイ?」
「米が炊けたらキモイに一番に食わしてやる」
「キュイ!」
「今は魔物で我慢しろな」

 サトウはまだ爆睡中キモイだけに魔物に粉砂糖をまぶしたものをかける。
 二個目のロコス焼きを食い終わるとサトウがバッグの中でモゾモゾしながら顔を出す。

「ピーッ」
「起きたか。今、餌を切ってやる」

 サトウが満足すると全員で一眠りする。
 
 早朝、まだ薄暗い中、出発。
 手前から馬に乗ったおっさんが手を振ってきたので、振り返す。索敵に赤の反応はないので大丈夫そうだ。

「出会い頭にすまんが、もし余分な塩があるなら分けてくれるか? 金は払う」
「問題ないが、塩を持ってこなかったのか?」
「半日ほど前に興奮した猪の親子に遭ってしまってな。逃げるためにひとつ鞄を捨てたんだが、それに塩を入れててなぁ。戻って探してみたんだがなくてな。幸い食いもんを入れていた鞄は無事なんだがな」
「大変だったな。塩なら余分にある。これくらいで足りるか?」
「助かる助かる」

 おっさんに小瓶に入れた塩を渡すと銅貨五枚をもらう。塩が売られていたのを見たが大きな袋で銅貨二、三枚だったと思う。

「渡しすぎだろ」
「いやいや、この先は村もなくバールまで一日以上かかる。ケチはせんよ」
「そうか。じゃあ遠慮なく受け取る」

 ついでにおっさんに猪の状況を尋ねると、普段は道に出てこないはずなのに運が悪かったと言われた。おっさんから聞いた猪が出没した場所を地図に記録すると別れた。

 それからしばらく歩いていたが、飽きたのでジョギングに切り替え、軽快に風を切った。

 ジョギングすること半日、おっさんの言っていた猪出没地点に到着、眉間に皺を寄せる。

「なんだこれ」

 索敵に映る紫の渦……方向は森の中だが、これは一体なんだ。
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