35 / 41
ファレンスの街
ついてないな
しおりを挟む
バールの街を出発して一日、現在乗り合い馬車の車輪に繋がる一部分が壊れたらしく、御者がなんとか馬車を修理しようとしているが数時間立ち往生している。
馬車に乗っていた全員が修理の間、外で何をすることもなく修理が終わるのを待つ。修理しやすいように馬車を数人で上げたが、それ以上、俺に手伝えることはなかった。
「暇だな。一眠りするか」
昼過ぎの晴天の中、大の字で地面に寝転がる。日本だったらこの時間はあくせく働いていただろうな。昼間から惰眠を貪る。冷えたビールがあれば最高だったな。
あくびをすると、蝶追いかけに飽きたキモイとサトウが俺の腹に飛び乗る。
「キュイ」
「ピーッ」
「オエェェェ。やめろ、昼食ったもんが出てくるだろ!」
飛び跳ねる二匹を腹の上から落とし、横を向きながら一眠りする。
夕方前、サトウの執拗なデコへの突きで目覚める。
「地味に痛いからやめろ」
「ピーッ!!」
「キュイ!!」
地団駄を踏みながら二匹が飯の催促をする。
「腹が減ったのか? 悪い悪い」
アイテムボックスから小型の魔物を取り出す。キモイはそのまま食えるが、サトウは切り分ける必要がある。
「この作業、結構グロいな。これくらいの大きさなら食えるだろ」
切り分けた魔物のピースをサトウに少しずつ与えると嬉しそうに羽をバタつかせた。
「お前、一応飛べる鳥らしいぞ」
バールの街の掃除ギルド長ルーシーに報酬としてもらった魔物図鑑によれば、メタルハーピーイーグルは生後ニ、三ヶ月で飛びはじめるらしい。だが、魔物図鑑の生後二ヶ月のメタルハーピーイーグルの絵とサトウの成長度合いが明らかに違う。
「お前はまだ小さな雛鳥のはずなんだけどな」
サトウを持ち上げれば、3、4キロはある。見かけはまだ雛っぽいが……今後は未知だな。
「ゲフゥ」
「俺の顔に向かってゲップをするとはいい度胸だな」
その後、二匹をしばらく運動させた後にため息を吐く御者に声をかける。
「直すことは無理そうか?」
「ああ、ダメだろうな。馬車は一先ず置いて、馬だけを連れてバールの街に戻る。すまんな」
ついていないな。
乗客はこのままバールに戻るかファレンスに向かうかの選択肢があったが、俺以外の乗客は徒歩の旅の準備をしてないからとバールの街へと引き返す選択をした。
アイテムボックスにそれなりの食材はあるし体力もある。途中に泊まれる村もあるようだし、問題はないだろう。
御者が持っていたファレンスへの道のりの地図を書き写す。道はそう難しくなさそうなのでこれなら大丈夫だろう。
「兄さん、なんにも荷物を持ってないようだが本当に大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
「これ、運賃代だ」
御者に運賃代を返してもらっただけまだマシか。
バールの街に向かう人たちに軽く手を振り別れる。
「よし、少し時間はかかるがファレンスに向かうぞ」
「キュイ!」
「ピーッ!」
馬車に乗っていた全員が修理の間、外で何をすることもなく修理が終わるのを待つ。修理しやすいように馬車を数人で上げたが、それ以上、俺に手伝えることはなかった。
「暇だな。一眠りするか」
昼過ぎの晴天の中、大の字で地面に寝転がる。日本だったらこの時間はあくせく働いていただろうな。昼間から惰眠を貪る。冷えたビールがあれば最高だったな。
あくびをすると、蝶追いかけに飽きたキモイとサトウが俺の腹に飛び乗る。
「キュイ」
「ピーッ」
「オエェェェ。やめろ、昼食ったもんが出てくるだろ!」
飛び跳ねる二匹を腹の上から落とし、横を向きながら一眠りする。
夕方前、サトウの執拗なデコへの突きで目覚める。
「地味に痛いからやめろ」
「ピーッ!!」
「キュイ!!」
地団駄を踏みながら二匹が飯の催促をする。
「腹が減ったのか? 悪い悪い」
アイテムボックスから小型の魔物を取り出す。キモイはそのまま食えるが、サトウは切り分ける必要がある。
「この作業、結構グロいな。これくらいの大きさなら食えるだろ」
切り分けた魔物のピースをサトウに少しずつ与えると嬉しそうに羽をバタつかせた。
「お前、一応飛べる鳥らしいぞ」
バールの街の掃除ギルド長ルーシーに報酬としてもらった魔物図鑑によれば、メタルハーピーイーグルは生後ニ、三ヶ月で飛びはじめるらしい。だが、魔物図鑑の生後二ヶ月のメタルハーピーイーグルの絵とサトウの成長度合いが明らかに違う。
「お前はまだ小さな雛鳥のはずなんだけどな」
サトウを持ち上げれば、3、4キロはある。見かけはまだ雛っぽいが……今後は未知だな。
「ゲフゥ」
「俺の顔に向かってゲップをするとはいい度胸だな」
その後、二匹をしばらく運動させた後にため息を吐く御者に声をかける。
「直すことは無理そうか?」
「ああ、ダメだろうな。馬車は一先ず置いて、馬だけを連れてバールの街に戻る。すまんな」
ついていないな。
乗客はこのままバールに戻るかファレンスに向かうかの選択肢があったが、俺以外の乗客は徒歩の旅の準備をしてないからとバールの街へと引き返す選択をした。
アイテムボックスにそれなりの食材はあるし体力もある。途中に泊まれる村もあるようだし、問題はないだろう。
御者が持っていたファレンスへの道のりの地図を書き写す。道はそう難しくなさそうなのでこれなら大丈夫だろう。
「兄さん、なんにも荷物を持ってないようだが本当に大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
「これ、運賃代だ」
御者に運賃代を返してもらっただけまだマシか。
バールの街に向かう人たちに軽く手を振り別れる。
「よし、少し時間はかかるがファレンスに向かうぞ」
「キュイ!」
「ピーッ!」
763
お気に入りに追加
3,604
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。