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最果ての村リスタ
商人フェリペ
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次の日、カーターの紹介で極小フォレストフロッグの素材を買い取りたいと言う商人と会う。
「コード商会のフェリペと申します。どうぞお見知りおきを」
「リツだ。よろしく頼む」
「リスタの村は、リツさんの噂で持ちきりでしたので実際に時の人と対面できること嬉しい限りです」
「は……はは……」
どの噂かは知らないが、カエルとキッスの話でないことを祈る。
「それでは早速、極小フォレストフロッグの素材を拝見させていただければと」
「ああ。もちろんだ」
袋から出すふりをしてアイテムボックスからカエルの皮、肉、目玉に手足を出すとフェリペが素材をひとつひとつチェックする。
フェリペは三十代半ばの痩せ型の男で、顔にはそこまで特徴がないものの手入れの行き届いたオリーブ色の長い髪を一つにまとめ横に流していた。華奢な身体と髪の長さから遠目の初見では女性と勘違いする人物だった。一応鑑定。
【フェリペ(37)】―良好
―18
(鑑定のレベルが上がりました)
おお。ナイスタイミングだな。
【鑑定Lv5】―対象の名前
―対象の状態
―対象の年齢
―対象のレベル
―対象のスキル(1)
対象のスキル(1)か。ん? 1ってなんだ? もう一度フェリペを鑑定する。
【フェリペ(37)】―良好
―18
―拍手
これ、スキル選びの時に一番くだらないと思ったスキルじゃねぇか。確か【拍手】は大きな拍手ができるとかいう内容だったな。拍手の表示を押すと以前と同じスキルの説明が表示される。
鑑定のスキル(1)ってのはひとつしか見れないってことか。
キモイも鑑定をしておくか。ステータスのテイム表示にはキモイのスキルは出ていなかった。
【キモイ(1)】―良好
―4
―食い意地
これ、スキルじゃねぇだろ。キモイの食い意地が張っているだけだろ。食い意地を押しスキルの説明を読む。
なんでも食べる
……誰かの見えない悪意を感じる。そんなのスキル表示されなくとも知ってるわい! 膝の上で丸くなったキモイを撫でていると素材のチェックが終わったフェリペが笑顔で買い取りの交渉を始める。
「かなり状態の良い素材です。これなら全部で金貨六枚でいかがでしょう?」
「そんなにか?」
通常のフォレストフロッグは大体銀貨二~三枚で取引されると言うので、通常の十倍以上の額だ。ゴブリンジェネラルの死骸が金貨十枚だったと思えば破格だ。
銀貨二~三枚でもこの村で家族がひと月生活できる額だ。道理でカエル狩りにメアリーたちを含め村の人はあんなに嬉しそうにしてたんだな。確かに村の繁忙期だ。
「はい。滅多に市場に出ない素材だけではなく、この目玉は二つとも傷ひとつない。査定額の内訳は目玉が金貨三枚、皮が金貨二枚、手足が銀貨五枚、肉が銀貨五枚です」
「分かった。それで取引を頼む」
交渉成立だ。フェリペから金貨を六枚を受け取る。
フェリペが素材をアイテムバックに入れながら尋ねる。
「どのフォレストフロッグの目玉も通常はくり貫き時に細心の注意を払っても傷がつくものだ。失礼ながら、どのようにくり貫かれたかお尋ねしてもよろしいか?」
「ああ、それはこいつの手柄だ」
キモイを指差しながら言う。カエル狩りの場にはたくさんの冒険者がいた。どうせキモイの話も噂になっている。変に隠しても意味がない。実際フェリペもキモイを見ても驚いた様子はなかった。既に誰かから話を聞いていたのだろう。
「スライムとはまた不思議な魔物に好かれましたね。この個体は通常のスライムとは別種のようだ」
「そうなのか?」
「詳しくは魔物を鑑定できる者に尋ねると良いが、見た目の色だけでも違いが出ている」
確かにキモイはレベルが上がる度に濃い水色になっているような気がしたが、そこまで他のスライムを観察していたわけではなかったので、微々たる違いという認識しかなかった。
フェリペがあまりにも凝視するのでキモイが脇腹へと隠れる。
「おや、逃げられてしまった。心配しなくとも懐いた主人から引きはがそうなどと無謀なことは考えていない」
「そんなことが可能なのか?」
「可能と言えば可能だ。欲の絡んだ権力者が懐いた主人から魔物を奪おうとした昔話の結末は大抵、魔物の抵抗が激しく失敗に終わる。危険だと排除された時代もあるのだが、それによって魔物が暴れ街を半分壊滅した事例もある。以来、国から懐いた魔物には他者は干渉するべきでないという厳重な警告が出ている。まぁ、魔物が懐くなど稀で珍しいから今では幸運と言われているがな」
「ま、街が半分壊滅?」
「ずいぶん昔の話だ。それに、あれは特例中の特例だ。虹色モスという幻覚の類を見せる虫系の魔物だったそうだ。普段は大人しい魔物なのだが……まぁ街中に幻覚を起こす鱗粉を撒き散らかしたせいで街の人が暴徒と化したそうだ」
何が大人しい魔物だ。普通に恐ろしい魔物じぇねぇか。キモイがそうならないようにトラブルはできるだけ避けないとな。それにはレベルを上げが必須だ。
「コード商会のフェリペと申します。どうぞお見知りおきを」
「リツだ。よろしく頼む」
「リスタの村は、リツさんの噂で持ちきりでしたので実際に時の人と対面できること嬉しい限りです」
「は……はは……」
どの噂かは知らないが、カエルとキッスの話でないことを祈る。
「それでは早速、極小フォレストフロッグの素材を拝見させていただければと」
「ああ。もちろんだ」
袋から出すふりをしてアイテムボックスからカエルの皮、肉、目玉に手足を出すとフェリペが素材をひとつひとつチェックする。
フェリペは三十代半ばの痩せ型の男で、顔にはそこまで特徴がないものの手入れの行き届いたオリーブ色の長い髪を一つにまとめ横に流していた。華奢な身体と髪の長さから遠目の初見では女性と勘違いする人物だった。一応鑑定。
【フェリペ(37)】―良好
―18
(鑑定のレベルが上がりました)
おお。ナイスタイミングだな。
【鑑定Lv5】―対象の名前
―対象の状態
―対象の年齢
―対象のレベル
―対象のスキル(1)
対象のスキル(1)か。ん? 1ってなんだ? もう一度フェリペを鑑定する。
【フェリペ(37)】―良好
―18
―拍手
これ、スキル選びの時に一番くだらないと思ったスキルじゃねぇか。確か【拍手】は大きな拍手ができるとかいう内容だったな。拍手の表示を押すと以前と同じスキルの説明が表示される。
鑑定のスキル(1)ってのはひとつしか見れないってことか。
キモイも鑑定をしておくか。ステータスのテイム表示にはキモイのスキルは出ていなかった。
【キモイ(1)】―良好
―4
―食い意地
これ、スキルじゃねぇだろ。キモイの食い意地が張っているだけだろ。食い意地を押しスキルの説明を読む。
なんでも食べる
……誰かの見えない悪意を感じる。そんなのスキル表示されなくとも知ってるわい! 膝の上で丸くなったキモイを撫でていると素材のチェックが終わったフェリペが笑顔で買い取りの交渉を始める。
「かなり状態の良い素材です。これなら全部で金貨六枚でいかがでしょう?」
「そんなにか?」
通常のフォレストフロッグは大体銀貨二~三枚で取引されると言うので、通常の十倍以上の額だ。ゴブリンジェネラルの死骸が金貨十枚だったと思えば破格だ。
銀貨二~三枚でもこの村で家族がひと月生活できる額だ。道理でカエル狩りにメアリーたちを含め村の人はあんなに嬉しそうにしてたんだな。確かに村の繁忙期だ。
「はい。滅多に市場に出ない素材だけではなく、この目玉は二つとも傷ひとつない。査定額の内訳は目玉が金貨三枚、皮が金貨二枚、手足が銀貨五枚、肉が銀貨五枚です」
「分かった。それで取引を頼む」
交渉成立だ。フェリペから金貨を六枚を受け取る。
フェリペが素材をアイテムバックに入れながら尋ねる。
「どのフォレストフロッグの目玉も通常はくり貫き時に細心の注意を払っても傷がつくものだ。失礼ながら、どのようにくり貫かれたかお尋ねしてもよろしいか?」
「ああ、それはこいつの手柄だ」
キモイを指差しながら言う。カエル狩りの場にはたくさんの冒険者がいた。どうせキモイの話も噂になっている。変に隠しても意味がない。実際フェリペもキモイを見ても驚いた様子はなかった。既に誰かから話を聞いていたのだろう。
「スライムとはまた不思議な魔物に好かれましたね。この個体は通常のスライムとは別種のようだ」
「そうなのか?」
「詳しくは魔物を鑑定できる者に尋ねると良いが、見た目の色だけでも違いが出ている」
確かにキモイはレベルが上がる度に濃い水色になっているような気がしたが、そこまで他のスライムを観察していたわけではなかったので、微々たる違いという認識しかなかった。
フェリペがあまりにも凝視するのでキモイが脇腹へと隠れる。
「おや、逃げられてしまった。心配しなくとも懐いた主人から引きはがそうなどと無謀なことは考えていない」
「そんなことが可能なのか?」
「可能と言えば可能だ。欲の絡んだ権力者が懐いた主人から魔物を奪おうとした昔話の結末は大抵、魔物の抵抗が激しく失敗に終わる。危険だと排除された時代もあるのだが、それによって魔物が暴れ街を半分壊滅した事例もある。以来、国から懐いた魔物には他者は干渉するべきでないという厳重な警告が出ている。まぁ、魔物が懐くなど稀で珍しいから今では幸運と言われているがな」
「ま、街が半分壊滅?」
「ずいぶん昔の話だ。それに、あれは特例中の特例だ。虹色モスという幻覚の類を見せる虫系の魔物だったそうだ。普段は大人しい魔物なのだが……まぁ街中に幻覚を起こす鱗粉を撒き散らかしたせいで街の人が暴徒と化したそうだ」
何が大人しい魔物だ。普通に恐ろしい魔物じぇねぇか。キモイがそうならないようにトラブルはできるだけ避けないとな。それにはレベルを上げが必須だ。
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