完結「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」

まほりろ

文字の大きさ
上 下
15 / 31

15話「救いようのない愚かな人たち」

しおりを挟む
「女王陛下発言をお許しください」

「構いませんよアリシア、話しなさい」

「レイモンド様と私の婚約が結ばれる際、父もイエーガー公爵もロビサ様とレイモンド様に事実をお話ししました。どういう訳かロビサ様とレイモンド様は事実を歪曲して解釈していました。その後私が何度説明しても事実を受け入れようとはなさいませんでした」

「そう、救いようのない愚かな人たちなのね」

ロビサ様が私を睨んだ。その顔には余計なことを言うなと書いてありましたが無視しました。

「イエーガー公爵家はフィルタ侯爵家に大恩がある。それなのにあなた方がアリシアにした仕打ちはなんですか?」

ロビサ様と取り巻きの三人は女王陛下から視線を逸らした。

「アリシア丁度よい機会です。あなたがザックス伯爵令嬢とレイモンドにされたことを話しなさい」

「はい、レイモンド様はデートやお茶会、夜会のエスコートや父との会食を当日取り止めにすることが多々ありました。私との予定をキャンセルした日は決まって浮気相手のミランダ・ランド男爵令嬢と宿屋に泊まっていました。

学園で私の良くない噂を流し、放課後私の机をナイフで傷つけ、教科書とノートを破り、お弁当に虫を入れ、人の見ていないところで度々罵倒されました」

会場にいる紳士淑女が互いの顔を見合わせる。レイモンドがそこまで非道な行いをしていたとは知らなかったようだ。

「それからレイモンド様の母親で当時公爵夫人だったロビサ様は、私にお茶会の時間をわざと間違えて教えて遅刻させ『侯爵家の人間は時間も守れない』と叱責。お茶会の間中ソファーの横に立たされ、ネチネチと嫌味を言われました。

古びたドレスを贈ってきてお茶会に着てくることを強要し、古びたドレスを着てお茶会に参加した私を『侯爵家の人間はドレスも買えない』とあざ笑いました」

会場内がざわついた。「信じられない」「なんて陰湿な」という声も聞こえる。 

「アリシアが今話した事は事実です。私がアリシアに貸した影が証明しますわ」

女王陛下の言葉で会場はまた静かになった。女王陛下の影を疑うことは王族を疑うことだ。

王族主催のパーティでそんな愚かな行いをする者はいない。そんなことをするのは目の前で捕らえられている四人の女性ぐらいだ。四人の顔は青から紫に変わっていた。

「それからあなた方は何か勘違いしているようだから教えて差し上げますね。アリシアはイエーガー公爵家とランド男爵家からの慰謝料をびた一文受け取っていませんよ」

「「「「えっ……?」」」」

ロビサ様と取り巻きの目が驚愕に見開かれた。

「ランド男爵家の当主は夜逃げ、ランド男爵家の娘は行方不明なので、ランド男爵家からの慰謝料は貰っていません。

イエーガー公爵家が支払った慰謝料を、アリシアは気分が悪いと言って受け取らず、病院や教会に寄付しました。あのお金は貧しい人たちの治療費や家を借りるお金、炊き出しに使われたのですよ」

「そんなの……嘘だわっ! でしたらアリシアが今日着ている豪華なドレスとイヤリングは何なのですか! 侯爵令嬢ごときが買えるものではありません! それこそがアリシアがイエーガー公爵家からむしり取った慰謝料で贅沢している証拠です!」

ロビサ様がわなわなと体を震わせながら叫んだ。

ロビサ様の発言に会場内がざわつく。女王様の許可なく発言し、女王陛下を嘘つき呼ばわりしたのだから当然だ。

ロビサ様の周りにいた取り巻きも顔を青くした。巻き添えをくらいたくないらしい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの破滅のはじまり

nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。 え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか? あなたを待っているのは破滅ですよ。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。 そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた 。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。 その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。 そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。 そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

処理中です...