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14話「女王の言葉」
しおりを挟む「私への暴言も聞き捨てなりませんが、アリシアについての酷い噂を流すと言ったのが気になるわね。詳しく話して頂戴」
「アリシア様が酷い男好きの【あばずれ】だと吹聴すると」
「まぁ、なんということなの」
女王陛下の顔色が変わる、温厚な女王陛下の逆鱗に触れたようだ。
「アリシアが清廉で貞淑な人間であることは私が保証します。ザックス伯爵令嬢、トーマ子爵夫人、コッホ子爵夫人、ヴァイル男爵夫人、反論はあるかしら?」
女王陛下にねめつけられ、ザックス伯爵令嬢と取り巻き三人は血の気の抜けた顔で首を横に振った。
「会場に集まった皆さんにも伝えておくわね。アリシア・フィルタの人格と純潔は私が保証します。異議のある方は今ここで申し出なさい」
会場がシーンと静まり返った。女王陛下に歯向かい王族に目をつけられたい貴族などいない。
「ザックス伯爵令嬢の言い分を一つずつ訂正していきましょう。会場にいる皆もよく聞くのですよ」
会場にいる紳士淑女が無言で頷く。
「まずは王族に仕える影が買収されることなどありえません。ザックス伯爵令嬢、トーマ子爵夫人、コッホ子爵夫人、ヴァイル男爵夫人、反論があるなら今ここで言いなさい」
ロビサ様と取り巻きの三人は、何も言葉を発しなかった。女王陛下を前に影が買収されたなど言えるはずがない。
「次にイエーガー公爵家の嫡男のレイモンドと、フィルタ侯爵家の長女アリシアの婚約について説明します。
イエーガー公爵領の大凶作の年、イエーガー公爵が商会の運営に失敗、多額の負債を抱えました。
このままではイエーガー公爵家は破産。困ったイエーガー公爵はアリシアの父のフィルタ侯爵に泣きつきました。
アリシアもレイモンドも一人っ子ですが、レイモンドをフィルタ侯爵家の婿養子にするから二人を婚約させて欲しい、婚約を条件に融資をして欲しいと言ってイエーガー公爵はフィルタ侯爵に土下座をしたのです。
フィルタ侯爵家からの融資でイエーガー公爵家は持ち直したのですよ」
ロビサ様と取り巻きの三人が「そんなまさか……!?」と呟いた。
「フィルタ侯爵家にはなんの旨みもない婚約です。フィルタ侯爵は情に脆いところがあるから、イエーガー公爵の泣き落としに負け、一人娘のアリシアとレイモンドの婚約を取り決めたのです。
イエーガー公爵はそのことを妻にも息子にも話していなかったのかしら? レイモンドに一目惚れしたアリシアがフィルタ侯爵にレイモンドと結婚したいと泣きつき、アリシアに泣きつかれたフィルタ侯爵がイエーガー公爵に頼み込んで、アリシアとレイモンドの婚約が成立したという、ありもしない妄想に取り憑かれるなんて」
ロビサ様は唖然呆然として体をブルブルと震わせている。女王陛下から事実を突きつけられ、現実を受け入れる気になったようだ。
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