完結「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」

まほりろ

文字の大きさ
上 下
2 / 31

2話「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!!」

しおりを挟む
「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!! 公爵家に借金があるとか父がフィルタ侯爵に土下座したなど全てお前のでっち上げだ!」

レイモンド様が叫びだしました。理解出来る量を越えると叫びだす、レイモンド様の悪い癖ですね。

「俺が不貞を働いたから婚約の破棄が成立したというが証拠はないのだろう!? ミランダに嫉妬し嫌がらせをしておいて、俺の不貞まで偽装するとはとんでもない女だ!」

ミランダ様という不貞行為の証拠の腰に手を回し、二人揃って昨日と同じ学生服を着て学園に来ておいて、よくそんなことが言えますね。

「いえレイモンド様が不貞を働いた証拠はちゃんとあります、女王陛下が影を貸してくださいましたから」

「なっ、なに……!」

【影】という言葉を聞いてレイモンド様は、ビクリと肩を震わせた。

「嘘だ! 王室がそんな簡単に影を貸すわけが……!」

「本当のことです。先程も申し上げたように私の母は女王陛下と学生時代からの親友、私個人も女王陛下に気に入られておりましたので、快く貸してくださいました」

にっこりと笑って伝えるとレイモンド様は恐怖におののいていた。

「影の方たちは優秀で、レイモンド様が不貞を働いた証拠をすぐに集めて下さいましたよ。それからレイモンド様の不貞行為以外の悪事の証拠も見つけて来て下さいましたよ」

レイモンド様とミランダ様の顔が青白く変わる。レイモンド様に至っては体が小刻みに震えている。どうやら身に覚えがあるようですね。

「レイモンド様が私とのデートを『母の体調が悪い』と言って当日キャンセルした日、夜会のエスコートを直前になって『足を挫いた』と言って破約した日、一ヶ月前から決まっていた父との会食を『急用が出来た』とすっぽかした日、それら全ての日に同じ女性と宿屋に泊まっていたことは分かっています」

その女性というのはミランダ様なのですが。

「私の誕生日に贈り物をしたことは一度もなく、そのくせご自身の誕生日には『最高級品を寄越せ!』と恫喝。私の贈った万年筆が気に入らず、私の部屋に無断で侵入し、アメジストのイヤリングを持ち出しましたね」

影の方たちがレイモンド様がアメジストのイヤリングを盗み出すところを見ていました。

イヤリングが無くなったのは、レイモンド様がフィルタ家の夕食会に参加した直後でした。珍しく夕食会に参加したと思ったら、盗みが目的だったのですね。

あのイヤリングは父が仕事で隣国に行ったときのお土産でしたのに。

「えーあのイヤリング盗品だったの?」

「馬鹿! 余計な事を言うな!」

ミランダ様の言葉をレイモンド様が遮る。

盗んだ物を浮気相手に贈っていたとは、どこまでも性根が腐ってますね。

「婚約者の家の物を俺がどうしようと勝手だろ!」

すごい理屈ですね、婚約者といえど結婚前は他人。その家の物を盗めば泥棒です。

「他にもありますよ。放課後私の机をナイフで傷つけていたこと、私の教科書とノートを破り、お弁当に虫を入れ、鞄を池に投げ捨て、皆が見ていないところで罵詈雑言を吐き私の自尊心を傷つけた」

食堂内がざわつく。皆さんレイモンド様がそこまで卑劣な人だとは知らなかったようですね。

「レイモンド様の行った、不貞行為、器物損壊、窃盗、暴言、その他数々のパワハラ行為は女王陛下が貸して下さった影が全て目撃しております」

器物損壊と窃盗は犯罪です。

「でたらめだ……! 俺はそんなことしてない……!」

いや証人がいるって言いましたよね、何を聞いていたのでしょうか? 阿呆なんですか?

「影が全て見ておりました、言い逃れはできません」

「くっ……!」

レイモンド様は眉根を寄せ唇を噛んだ。













☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


今日(2022/12/07)新作小説を投稿しました!
こちらの作品もよろしくお願いします!

・「義妹を溺愛するヤンデレ公爵令息は、ハニートラップに引っかかり義妹を傷つけたアホ王子を許さない」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/563699054 #アルファポリス
異世界恋愛、義兄妹、ヤンデレ兄、アホ王子ざまぁ、ビッチメイドざまぁ、ハッピーエンドです。

・「私が彼から離れた七つの理由」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/37699061 #アルファポリス
異世界恋愛、幼馴染ざまぁ、ハッピーエンドです。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの破滅のはじまり

nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。 え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか? あなたを待っているのは破滅ですよ。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

ここはあなたの家ではありません

風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」 婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。 わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。 実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。 そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり―― そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね? ※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

処理中です...