11 / 11
11話「巻き戻り前の国王と王太子と国のその後―」最終話・ざまぁ回
しおりを挟む
――巻き戻り前の国王と王太子と国のその後――
――王太子ユーベル・ハイル視点――
隣国メーアト国との戦争に勝利し、領土を拡大することに成功した。
癒やしの力を持つ聖女を失ったのは痛いが、メーアト国の財を手に入れることが出来たので良しとしよう。
メーアト国の財を利用し兵器を作る。メーアト国は音楽や芸術に優れている国だが、僕はそんなものに興味はない。
若い男は徴兵し軍事力を強化する。手先の器用な年寄りはを武器を作る工場で働かせよう、動けない者は殺せばいい。
若い女と子供と見目の良い男は性的な奴隷として他国に売り払い、武器の材料を買う資金にしよう。
これからだ、もっともっと勢力を伸ばし大陸の覇者になってやる。
僕は英雄として歴史に名を残す選ばれた人間だ!
「王太子ユーベル・ハイル! 覚悟ーー!!」
リートを処刑して一年が経過したある夜、城に賊が侵入してきた。
衛兵は次々にやられ王太子の部屋まで押し入ってきた。
賊はすぐに捕らえられたが、僕は右肩から鎖骨にかけて切られた。
医師を呼び直ぐに手当てさせたが、傷口が塞がらず血が止まらない。
医師の話では剣に特殊な毒が塗られていたようだ。
賊はレーベン公爵家の分家の者だった、無実の罪を着せられ殺された親族の恨みを晴らすための犯行だったと自白し、奥歯に仕込んであった毒薬を飲んで自害した。
同時刻、国王である父も賊に襲われていた。父上を襲った賊もその場で捕らえられたが、奥歯に仕込んであった毒を飲み自害した。
父も僕と同じよう右肩から鎖骨にかけて斬られた。
父を襲った賊の剣にも毒が塗られていたらしく、父上の傷口も塞がらないようだ。
城の中に内通者がいると僕は推理した。でなければ国王や王太子の部屋にやすやすと賊が入ってこられるはずがない。
手引きした人間を調べるように命じ、そこで意識が途切れた。
目が覚めたら自分のベッドで寝ていた。
医師がベッドの脇で真っ赤になった包帯を取り替えているのが見えた。
苦しい……苦しい……血が止まらない……熱も出てきた……吐き気がする。
「ぐっ、がほっ……げほぉっ……! リート、リートはどこだ……ぐぁっ……、リートさえ……奴さえ、生かしておけば……こんな怪我……」
医者の話では剣に塗られていたのは、猛毒を持つバジリスクの毒だという。バジリスクの毒に侵された者は絶対に助からない。
幻と言われるユニコーンの角を手に入れるか、奇跡が起きて伝説の聖女が現れない限り、バジリスクの毒は解毒出来ない。
バジリスクの毒に侵された者は一週間以上尋常でない痛みに苦しみ、苦痛に悶え「殺してくれ……!」と泣き叫びながら死んでいくらしい。見かねた家族が患者の首を刎ねることもあるという。
「がぁぁぁっ、ぐはぁぁっ……! ぐぼぉぉっっ……! リートが……リートさえ……げほぉぉっ……、奴が、奴さえいればぁぁぁぁ……!!」
僕はリートに罪を押し付けギロチンにかけたことを後悔した。恐らく父も僕と同じ気持ちだろう。
朦朧とする意識の中で罪をなすりつけ殺した少女の名を呼びながら、僕は息を引き取った。
父も僕とほぼ同じ時刻に亡くなった。
僕と父の死後レーベン公爵家の残党により、僕と父が犯した罪が全て明らかにされた。
貧しい子供を奴隷として他国に売ったこと、メーアト国に戦争を仕掛けたこと、リートを騙し兵士の治療をさせ不死身の軍隊を作りだしたこと。
それら全ての罪が白日のもとに晒され、王族は民の信用を失った。
父上と僕の遺体は王族の霊廟に祀られることもなく、山に捨てられた。
レーベン公爵家の残党がクーデターを起こし、僕の死から十年後、ハイル王国は地図から姿を消し、新たにレーベン王国の名が歴史に刻まれた。
ハイル王家の霊廟が暴かれ、ご先祖様の遺体も野に捨てられた。
あの世でご先祖様に会わせる顔がない。
――終わり――
ご愛読ありがとうございました。
【どうでもいい豆知識】
国王 ウン・ハイル→不幸
王太子 ユーベル→災い
公爵家 レーベン→生命、命
村 アポテーケ→薬局
ヒロイン リート→歌
ヒーロー ビーネ→ミツバチ
という意味がありました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
もしよければブックマークやいいねをしていただけると、嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。
【書籍化のお知らせ】
この度、下記作品が書籍化されることになりました。
「彼女を愛することはない 王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」
著者 / まほりろ
イラスト / 晴
販売元 / レジーナブックス
発売日 / 2025年01月31日
販売形態 / 電子書籍、紙の書籍両方
こちらもよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804
2025年1月16日投稿の新作中編もよろしくお願いします!
「拾った仔犬が王子様!? 未来視のせいで男性不信になった伯爵令嬢は獣耳王子に溺愛される」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/233933527
――王太子ユーベル・ハイル視点――
隣国メーアト国との戦争に勝利し、領土を拡大することに成功した。
癒やしの力を持つ聖女を失ったのは痛いが、メーアト国の財を手に入れることが出来たので良しとしよう。
メーアト国の財を利用し兵器を作る。メーアト国は音楽や芸術に優れている国だが、僕はそんなものに興味はない。
若い男は徴兵し軍事力を強化する。手先の器用な年寄りはを武器を作る工場で働かせよう、動けない者は殺せばいい。
若い女と子供と見目の良い男は性的な奴隷として他国に売り払い、武器の材料を買う資金にしよう。
これからだ、もっともっと勢力を伸ばし大陸の覇者になってやる。
僕は英雄として歴史に名を残す選ばれた人間だ!
「王太子ユーベル・ハイル! 覚悟ーー!!」
リートを処刑して一年が経過したある夜、城に賊が侵入してきた。
衛兵は次々にやられ王太子の部屋まで押し入ってきた。
賊はすぐに捕らえられたが、僕は右肩から鎖骨にかけて切られた。
医師を呼び直ぐに手当てさせたが、傷口が塞がらず血が止まらない。
医師の話では剣に特殊な毒が塗られていたようだ。
賊はレーベン公爵家の分家の者だった、無実の罪を着せられ殺された親族の恨みを晴らすための犯行だったと自白し、奥歯に仕込んであった毒薬を飲んで自害した。
同時刻、国王である父も賊に襲われていた。父上を襲った賊もその場で捕らえられたが、奥歯に仕込んであった毒を飲み自害した。
父も僕と同じよう右肩から鎖骨にかけて斬られた。
父を襲った賊の剣にも毒が塗られていたらしく、父上の傷口も塞がらないようだ。
城の中に内通者がいると僕は推理した。でなければ国王や王太子の部屋にやすやすと賊が入ってこられるはずがない。
手引きした人間を調べるように命じ、そこで意識が途切れた。
目が覚めたら自分のベッドで寝ていた。
医師がベッドの脇で真っ赤になった包帯を取り替えているのが見えた。
苦しい……苦しい……血が止まらない……熱も出てきた……吐き気がする。
「ぐっ、がほっ……げほぉっ……! リート、リートはどこだ……ぐぁっ……、リートさえ……奴さえ、生かしておけば……こんな怪我……」
医者の話では剣に塗られていたのは、猛毒を持つバジリスクの毒だという。バジリスクの毒に侵された者は絶対に助からない。
幻と言われるユニコーンの角を手に入れるか、奇跡が起きて伝説の聖女が現れない限り、バジリスクの毒は解毒出来ない。
バジリスクの毒に侵された者は一週間以上尋常でない痛みに苦しみ、苦痛に悶え「殺してくれ……!」と泣き叫びながら死んでいくらしい。見かねた家族が患者の首を刎ねることもあるという。
「がぁぁぁっ、ぐはぁぁっ……! ぐぼぉぉっっ……! リートが……リートさえ……げほぉぉっ……、奴が、奴さえいればぁぁぁぁ……!!」
僕はリートに罪を押し付けギロチンにかけたことを後悔した。恐らく父も僕と同じ気持ちだろう。
朦朧とする意識の中で罪をなすりつけ殺した少女の名を呼びながら、僕は息を引き取った。
父も僕とほぼ同じ時刻に亡くなった。
僕と父の死後レーベン公爵家の残党により、僕と父が犯した罪が全て明らかにされた。
貧しい子供を奴隷として他国に売ったこと、メーアト国に戦争を仕掛けたこと、リートを騙し兵士の治療をさせ不死身の軍隊を作りだしたこと。
それら全ての罪が白日のもとに晒され、王族は民の信用を失った。
父上と僕の遺体は王族の霊廟に祀られることもなく、山に捨てられた。
レーベン公爵家の残党がクーデターを起こし、僕の死から十年後、ハイル王国は地図から姿を消し、新たにレーベン王国の名が歴史に刻まれた。
ハイル王家の霊廟が暴かれ、ご先祖様の遺体も野に捨てられた。
あの世でご先祖様に会わせる顔がない。
――終わり――
ご愛読ありがとうございました。
【どうでもいい豆知識】
国王 ウン・ハイル→不幸
王太子 ユーベル→災い
公爵家 レーベン→生命、命
村 アポテーケ→薬局
ヒロイン リート→歌
ヒーロー ビーネ→ミツバチ
という意味がありました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
もしよければブックマークやいいねをしていただけると、嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。
【書籍化のお知らせ】
この度、下記作品が書籍化されることになりました。
「彼女を愛することはない 王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」
著者 / まほりろ
イラスト / 晴
販売元 / レジーナブックス
発売日 / 2025年01月31日
販売形態 / 電子書籍、紙の書籍両方
こちらもよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804
2025年1月16日投稿の新作中編もよろしくお願いします!
「拾った仔犬が王子様!? 未来視のせいで男性不信になった伯爵令嬢は獣耳王子に溺愛される」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/233933527
43
お気に入りに追加
2,146
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(22件)
あなたにおすすめの小説
父が転勤中に突如現れた継母子に婚約者も家も王家!?も乗っ取られそうになったので、屋敷ごとさよならすることにしました。どうぞご勝手に。
青の雀
恋愛
何でも欲しがり屋の自称病弱な義妹は、公爵家当主の座も王子様の婚約者も狙う。と似たような話になる予定。ちょっと、違うけど、発想は同じ。
公爵令嬢のジュリアスティは、幼い時から精霊の申し子で、聖女様ではないか?と噂があった令嬢。
父が長期出張中に、なぜか新しい後妻と連れ子の娘が転がり込んできたのだ。
そして、継母と義姉妹はやりたい放題をして、王子様からも婚約破棄されてしまいます。
3人がお出かけした隙に、屋根裏部屋に閉じ込められたジュリアスティは、精霊の手を借り、使用人と屋敷ごと家出を試みます。
長期出張中の父の赴任先に、無事着くと聖女覚醒して、他国の王子様と幸せになるという話ができれば、イイなぁと思って書き始めます。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢は断罪イベントから逃げ出してのんびり暮らしたい
花見 有
恋愛
乙女ゲームの断罪エンドしかない悪役令嬢リスティアに転生してしまった。どうにか断罪イベントを回避すべく努力したが、それも無駄でどうやら断罪イベントは決行される模様。
仕方がないので最終手段として断罪イベントから逃げ出します!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】え、お嬢様が婚約破棄されたって本当ですか?
瑞紀
恋愛
「フェリシア・ボールドウィン。お前は王太子である俺の妃には相応しくない。よって婚約破棄する!」
婚約を公表する手はずの夜会で、突然婚約破棄された公爵令嬢、フェリシア。父公爵に勘当まで受け、絶体絶命の大ピンチ……のはずが、彼女はなぜか平然としている。
部屋まで押しかけてくる王太子(元婚約者)とその恋人。なぜか始まる和気あいあいとした会話。さらに、親子の縁を切ったはずの公爵夫妻まで現れて……。
フェリシアの執事(的存在)、デイヴィットの視点でお送りする、ラブコメディー。
ざまぁなしのハッピーエンド!
※8/6 16:10で完結しました。
※HOTランキング(女性向け)52位,お気に入り登録 220↑,24hポイント4万↑ ありがとうございます。
※お気に入り登録、感想も本当に嬉しいです。ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
辺境伯は王女から婚約破棄される
高坂ナツキ
恋愛
「ハリス・ワイマール、貴男との婚約をここに破棄いたしますわ」
会場中にラライザ王国第一王女であるエリス・ラライザの宣言が響く。
王宮の大ホールで行われている高等学校の卒業記念パーティーには高等学校の卒業生やその婚約者、あるいは既に在学中に婚姻を済ませている伴侶が集まっていた。
彼らの大半はこれから領地に戻ったり王宮に仕官する見習いのために爵位を継いではいない状態、つまりは親の癪の優劣以外にはまだ地位の上下が明確にはなっていないものばかりだ。
だからこそ、第一王女という絶大な権力を有するエリスを止められるものはいなかった。
婚約破棄の宣言から始まる物語。
ただし、婚約の破棄を宣言したのは王子ではなく王女。
辺境伯領の田舎者とは結婚したくないと相手を罵る。
だが、辺境伯側にも言い分はあって……。
男性側からの婚約破棄物はよく目にするが、女性側からのはあまり見ない。
それだけを原動力にした作品。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
as様
感想ありがとうございます!顔
その辺は難しいところですね(^_^;)💦やりすぎという人もいるでしょうし、加減が難しいですね。
東堂明美様
感想ありがとうございます!(^^)
そうですね王家の為に国民を癒やしていたのに、王家にも国民にも裏切られるなんてあんまりですよね。リートがやり直し後の人生で幸せになってくれて嬉しいです(^^)
キリン様
感想ありがとうございます。
神視点とても苦手なのです。なので王太子の死後も王太子の一人称で書いてしまいました。
ビーネの家族の話は、友人や探偵を使って調べて貰った、もしくは自分で見に行った、家族から手紙が届いた……という設定だったほうがよかったかもしれませんね。