【完結】「癒やしの力を持つ聖女は王太子に嵌められ民衆の恨みを買い処刑され時を巻き戻る〜二度目の人生は誰も救いません」

まほりろ

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11話「巻き戻り前の国王と王太子と国のその後―」最終話・ざまぁ回

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――巻き戻り前の国王と王太子と国のその後――



――王太子ユーベル・ハイル視点――



隣国メーアト国との戦争に勝利し、領土を拡大することに成功した。

癒やしの力を持つ聖女を失ったのは痛いが、メーアト国の財を手に入れることが出来たので良しとしよう。

メーアト国の財を利用し兵器を作る。メーアト国は音楽や芸術に優れている国だが、僕はそんなものに興味はない。

若い男は徴兵し軍事力を強化する。手先の器用な年寄りはを武器を作る工場で働かせよう、動けない者は殺せばいい。

若い女と子供と見目の良い男は性的な奴隷として他国に売り払い、武器の材料を買う資金にしよう。

これからだ、もっともっと勢力を伸ばし大陸の覇者になってやる。

僕は英雄として歴史に名を残す選ばれた人間だ!

「王太子ユーベル・ハイル! 覚悟ーー!!」

リートを処刑して一年が経過したある夜、城に賊が侵入してきた。

衛兵は次々にやられ王太子の部屋まで押し入ってきた。

賊はすぐに捕らえられたが、僕は右肩から鎖骨にかけて切られた。

医師を呼び直ぐに手当てさせたが、傷口が塞がらず血が止まらない。

医師の話では剣に特殊な毒が塗られていたようだ。

賊はレーベン公爵家の分家の者だった、無実の罪を着せられ殺された親族の恨みを晴らすための犯行だったと自白し、奥歯に仕込んであった毒薬を飲んで自害した。

同時刻、国王である父も賊に襲われていた。父上を襲った賊もその場で捕らえられたが、奥歯に仕込んであった毒を飲み自害した。

父も僕と同じよう右肩から鎖骨にかけて斬られた。

父を襲った賊の剣にも毒が塗られていたらしく、父上の傷口も塞がらないようだ。

城の中に内通者がいると僕は推理した。でなければ国王や王太子の部屋にやすやすと賊が入ってこられるはずがない。

手引きした人間を調べるように命じ、そこで意識が途切れた。

目が覚めたら自分のベッドで寝ていた。

医師がベッドの脇で真っ赤になった包帯を取り替えているのが見えた。

苦しい……苦しい……血が止まらない……熱も出てきた……吐き気がする。

「ぐっ、がほっ……げほぉっ……! リート、リートはどこだ……ぐぁっ……、リートさえ……奴さえ、生かしておけば……こんな怪我……」

医者の話では剣に塗られていたのは、猛毒を持つバジリスクの毒だという。バジリスクの毒に侵された者は絶対に助からない。

幻と言われるユニコーンの角を手に入れるか、奇跡が起きて伝説の聖女が現れない限り、バジリスクの毒は解毒出来ない。

バジリスクの毒に侵された者は一週間以上尋常でない痛みに苦しみ、苦痛に悶え「殺してくれ……!」と泣き叫びながら死んでいくらしい。見かねた家族が患者の首をねることもあるという。

「がぁぁぁっ、ぐはぁぁっ……! ぐぼぉぉっっ……! リートが……リートさえ……げほぉぉっ……、奴が、奴さえいればぁぁぁぁ……!!」

僕はリートに罪を押し付けギロチンにかけたことを後悔した。恐らく父も僕と同じ気持ちだろう。

朦朧もうろうとする意識の中で罪をなすりつけ殺した少女の名を呼びながら、僕は息を引き取った。

父も僕とほぼ同じ時刻に亡くなった。

僕と父の死後レーベン公爵家の残党により、僕と父が犯した罪が全て明らかにされた。

貧しい子供を奴隷として他国に売ったこと、メーアト国に戦争を仕掛けたこと、リートを騙し兵士の治療をさせ不死身の軍隊を作りだしたこと。

それら全ての罪が白日のもとに晒され、王族は民の信用を失った。

父上と僕の遺体は王族の霊廟に祀られることもなく、山に捨てられた。

レーベン公爵家の残党がクーデターを起こし、僕の死から十年後、ハイル王国は地図から姿を消し、新たにレーベン王国の名が歴史に刻まれた。

ハイル王家の霊廟が暴かれ、ご先祖様の遺体も野に捨てられた。

あの世でご先祖様に会わせる顔がない。







――終わり――










ご愛読ありがとうございました。

【どうでもいい豆知識】
国王 ウン・ハイル→不幸
王太子 ユーベル→災い
公爵家 レーベン→生命、命
村 アポテーケ→薬局
ヒロイン リート→歌
ヒーロー ビーネ→ミツバチ

という意味がありました。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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どうぞよろしくお願いします。

【書籍化のお知らせ】
この度、下記作品が書籍化されることになりました。

「彼女を愛することはない 王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」
著者 / まほりろ 
イラスト / 晴
販売元 / レジーナブックス
発売日 / 2025年01月31日
販売形態 / 電子書籍、紙の書籍両方 

こちらもよろしくお願いします。


https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804



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「拾った仔犬が王子様!? 未来視のせいで男性不信になった伯爵令嬢は獣耳王子に溺愛される」
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みんなの感想(22件)

as
2021.08.01 as
ネタバレ含む
まほりろ
2021.08.01 まほりろ

as様
感想ありがとうございます!顔
その辺は難しいところですね(^_^;)💦やりすぎという人もいるでしょうし、加減が難しいですね。

解除
東堂明美
2021.07.28 東堂明美
ネタバレ含む
まほりろ
2021.07.29 まほりろ

東堂明美様
感想ありがとうございます!(^^)
そうですね王家の為に国民を癒やしていたのに、王家にも国民にも裏切られるなんてあんまりですよね。リートがやり直し後の人生で幸せになってくれて嬉しいです(^^)

解除
キリン
2021.07.27 キリン
ネタバレ含む
まほりろ
2021.07.27 まほりろ

キリン様
感想ありがとうございます。
神視点とても苦手なのです。なので王太子の死後も王太子の一人称で書いてしまいました。

ビーネの家族の話は、友人や探偵を使って調べて貰った、もしくは自分で見に行った、家族から手紙が届いた……という設定だったほうがよかったかもしれませんね。

解除

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