34 / 58
二章・19話「塔でのスローライフ、毒殺と王子様と間接キスと 6」シンデレラ視点
しおりを挟む―塔での生活ニ日目・朝―
「シンデレラ、シンデレラ」
誰かが呼んでいる。
「……すみません、お継母様許してください……」
きっと、お継母様か義理のお姉様方だ……。
「シンデレラ食事の時間だ」
食事の時間……?
大変だ! 寝坊した!
「すみませんお継母様! いますぐ食事の用意を……!」
布団から飛び起きた。
「んっ……?」
目に入ってきたのは屋根裏部屋の薄汚れた天井ではなく、ベッドの豪華な天蓋(てんがい)と、ベッドの回りのレースのカーテンだった。
目の前にいるのはいじわるな継母ではなく、美しい王子様。
あまいろの髪に青みを含んだ上品な黒い瞳の、ドS変態王子様……。
「おはようシンデレラ、悪い夢でも見たのかな?」
フィリップ王子が、整った顔に涼やかな笑みを浮かべる。
「いま見てる最中だよ……」
どびきりの悪夢をな。
ここは屋根裏部屋ではなく、塔という名の華美(かび)な牢獄(ろうごく)。
どうやら昨日は、あのまま眠ってしまったらしい。
フィリップ王子が来る前に、起きようと思っていたのに。
はっ、まさか……! 寝ている間に性的なイタズラをされたかも……?!
オレはあわてて身体を確認する。
魔法使いが出してくれた青いドレスは、もとのボロい服に変わっていた。
夜中の十二時を過ぎ、魔法が溶けたらしい
とりあえず着衣に乱れはなく、服や体に変な液もついてない、尻も痛くない。
オレはホッと息をつく。
「心配しなくても、寝込みを襲ったりはしないよ」
王子が苦笑いを浮かべる。
「信用できるか、そんなもん!」
キッとフィリップ王子をにらむ。
「君は信じないだろうが、もう襲わない、襲う必要もないんでね」
それはどういう意味だ?
処女以外には、興味がないって意味だろうか?
処女を喪失したオレには、もう魅力を感じないのだろう。
相手は王子様だ、相手には不自由しないよな。
オレの初めてを力ずくで奪って弄(もてあそ)んでおいて、処女じゃなくなったら興味すらないってか?
王子の発言にちょっと、イラッとしていた。
いや、イライラする必要なんてない。王子に犯されるリスクがなくなったんだ。むしろ良かったじゃないか。
なのに、なんでこんなに胸の奥がムカムカしているんだろう。
「もっとも君がお尻でしかイけない体になって、『私はもうお尻でしかイけない体になってしまいました。どうかフィリップ王子様の、太くて長い棒を私のお尻に入れ、最奥を突いてくださいっ!! お願いします!』と瞳を涙でうるませ、上目遣いで懇願(こんがん)するなら、考えるけどね」
王子が妖艶な顔でいじわるく笑う!
「死んでも言うか! アホッッ!!」
嫌なやつ!
オレはまだ、前だけでイける!
おまえの貧相な棒なんかいらない!!
0
お気に入りに追加
976
あなたにおすすめの小説
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
弟枠でも一番近くにいられるならまあいいか……なんて思っていた時期もありました
大森deばふ
BL
ユランは、幼馴染みのエイダールが小さい頃から大好き。 保護者気分のエイダール(六歳年上)に彼の恋心は届くのか。
基本は思い込み空回り系コメディ。
他の男にかっ攫われそうになったり、事件に巻き込まれたりしつつ、のろのろと愛を育んで……濃密なあれやこれやは、行間を読むしか。←
魔法ありのゆるゆる異世界、設定も勿論ゆるゆる。
長くなったので短編から長編に表示変更、R18は行方をくらましたのでR15に。
【第1部完結】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~
ちくわぱん
BL
【11/28第1部完結・12/8幕間完結】(第2部開始は年明け後の予定です)ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。
僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
裏切られた腹いせで自殺しようとしたのに隣国の王子に溺愛されてるの、なぁぜなぁぜ?
柴傘
BL
「俺の新しい婚約者は、フランシスだ」
輝かしい美貌を振りまきながら堂々と宣言する彼は、僕の恋人。その隣には、彼とはまた違う美しさを持つ青年が立っていた。
あぁやっぱり、僕は捨てられたんだ。分かってはいたけど、やっぱり心はずきりと痛む。
今でもやっぱり君が好き。だから、僕の所為で一生苦しんでね。
挨拶周りのとき、僕は彼の目の前で毒を飲み血を吐いた。薄れ行く意識の中で、彼の怯えた顔がはっきりと見える。
ざまぁみろ、君が僕を殺したんだ。ふふ、だぁいすきだよ。
「アレックス…!」
最後に聞こえてきた声は、見知らぬ誰かのものだった。
スパダリ溺愛攻め×死にたがり不憫受け
最初だけ暗めだけど中盤からただのラブコメ、シリアス要素ほぼ皆無。
誰でも妊娠できる世界、頭よわよわハピエン万歳。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる