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10話「異母妹をはめる」
しおりを挟む翌日。
私はクロリスから旅行のパンフレットを貰い、伯爵家の本邸に向かった。
「お義姉様、それなぁに?」
「旅行のパンフレットよ。
卒業旅行で行こうと思っているの。
もちろん相手はアデル様よ。
美しい湖の周りにお花畑がある大きなホテルに泊まるのよ。
食事も豪華だし、温泉やエステもあるの。
平民のあなたでは逆立ちしたって泊まれないでしょうね」
私がわざと嫌味ったらしく言うと、ミランダは眉間にしわを寄せた。
「お義姉様って哀れね!
アデル様に愛されていないのに結婚という形にしがみついて、あたしにマウントを取ってくるなんて!」
よしよし、食いついてきた!
私は心の中でガッツポーズをした。
「愛なんかいらないわ。
彼とは政略結婚ですもの」
「そんなのアデル様が可哀想よ!
結婚相手に愛されないなんて!」
そう思うなら、アデルと浮気するなアホ。
結婚前から異母妹と浮気するモラハラ男を愛せる女なんかいるか。
「アデル様の愛を得て私に勝ったつもり?
あなたが勝ち誇っていられるのも今のうちよ。
アデル様と結婚したらあなたにはこの家を出て行って貰うから」
「なんですって!」
「当然でしょう?
愛人とひとつ屋根の下で暮らすなんて真っ平ですもの」
「そんなことアデル様が許さないわ……!」
「それはどうかしらね?
子爵夫妻は『学生の間の火遊びは仕方ない』とおっしゃっていましたが、アデル様の卒業後は『息子の行動に責任を持たせる』とおっしゃっていたわ。
子爵夫妻もあなたをこの屋敷から追い出すことにきっと賛成してくれるはず。
アデル様はご両親のいいなり、当然あなたの処遇についても……ねぇ?」
私がわざと挑発するような言い方をすると、異母妹が桃色の瞳を吊り上げ鬼のような形相で睨んできた。
異母妹は感情表現がわかりやすくて助かる。
「でも……結婚は家と家との結びつき。
私との結婚前にあなたとアデル様との間に子供ができたら……。
子爵夫妻も考えを改めるかもしれないわね」
私は「子爵夫妻が考えを改める」とは言ったが、「ミランダに子供が出来たら、子爵夫妻がミランダとアデルの結婚を認める」とは一言も言ってない。
ミランダは伯爵家の血を引いてないただの平民。アデルをミランダと結婚させても子爵家の利益にはならない。
そんな旨味ゼロの結婚を子爵夫妻が許すはずがない。
「お義姉様、あたしに勝ったつもりでいるなら甘いわよ!
あなたに目にものを見せてやるんだから!」
ミランダはテーブルの上に置いてあったパンフレットを持って、部屋を出ていった。
ミランダが部屋を出ていったのを確認し、私はホッと息をついた。
上手く行ったわ。
これで異母妹はアデルを旅行に誘うはず。
二人で仲良く破滅しなさい。
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