【完結】「ゲスな婚約者と、姉の婚約者に手を出す節操のない妹を切り捨てたら、元クラスメイトの貴公子に溺愛されました」

まほりろ

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9話「細工は流々仕上げを御覧じろ」

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「でも問題はアデル様がミランダをホテルに連れ込むか、よね?
 お菓子とか買って無駄遣いされたら困るわ」

アデルなら「食べきれないほどのショートケーキとマカロンに囲まれるのが夢だったんだ!」とか言ってケーキ屋を貸し切りにしかねない。

「それもちゃんと考えてあるわ。
 ゲルラッハ子爵令息がホテルに泊まりたくなるように誘導するのよ。
 ミランダを使ってね」

「ミランダを使う?
 どうやって?」

「ミランダのあなたへの対抗意識は相当な物よ。
 それを利用するの。
 ミランダに高級ホテルのパンフレットを見せて、
『婚前旅行でアデル様と泊まるホテルよ。
 平民のあなたじゃ逆立ちしたってこんな高級ホテルには泊まれないでしょうね』
 と言ってミランダ様をあざ笑い、彼女のプライドを傷つけるのよ」

「なるほど、それはいい作戦ね!
 でもそれだけじゃ……」

あの子の動かすにはまだ弱い気がする。

「さらに、
『アデル様と結婚したらあなたにはこの家を出て行って貰うわ。
 愛人と同じ家で暮らすなんて真っ平だもの。
 学生の間の火遊びは仕方ないと思って見逃して来たけど、これ以上は容認できないわ。
 子爵夫妻もアデル様の卒業後は、彼の行動に責任をもたせると言っていたし、あなたをこの屋敷から追い出すことに賛成してくれるわ』
 と言って彼女の危機感とプライドを煽るのよ」

「うわっ、凄い! なんか私悪女っぽい!」

アデルと縁がきれるなら悪女の振りでもなんでもするわ!

「最後にこう言うのよ!
『でも……結婚は家と家との結びつき。
 私との結婚前にあなたとアデル様との間に子供ができたら……もしかしたら子爵夫妻も考えを改めるかもしれないわね』
 こう言えばミランダ様はゲルラッハ子爵令息との既成事実を作ろうと躍起になるはずよ!」

「凄い! 完璧だわ!」

私の悩みが一瞬にして解決した!

さっすが親友! 頼りになる!

「でも、子爵夫妻が伯爵家の問題に口出しできるの?
 伯爵家に誰を住まわせるかはうちの問題で、いくらアデル様の親とはいえ介入できないんじゃ?」

「言い方は悪いけど、ミランダ様はアホだからそんなに深く考えないわ」

「なるほど」

確かにミランダにそこまで回る頭はない。

「確かにこの作戦は使えるわね。
 問題は高級ホテルの予約が取れるかと、ホテルのシーツなどを証拠として押さえられるかね」

街の安宿なら、宿屋ごと買い取って証拠のシーツを回首できるけど、高級ホテルとなると難しい。

「それなら大丈夫よ。
 公爵家が経営してるホテルが郊外にあるの。
 大きな湖があって星がとても綺麗に見えるのよ。
 ゲルラッハ子爵令息もしくは彼の使いの者がホテルを予約したとき、ロイヤルスイートルームにキャンセルが出た事にして、格安で泊まらせるわ。
 ロイヤルスイートルームに格安で泊まれる機会なんてめったにないから、絶対に宿泊するはずよ。
 うちが経営しているホテルだから、ゲルラッハ子爵令息の恥ずかしい液のついたシーツも、証拠として押さえられるわ」

持つべきものは金と権力を持ってて賢い親友!

「ありがとうクロリス!
 これでアデルとの婚約を彼の有責で破棄できそうだわ!」

「どういたしまして」

私がクロリスに手を差し出すと、彼女も握手に応じてくれた。

クロリスは病弱なので季節を問わず白い手袋をしている。

手袋越しに触れたクロリスの手は、思っていたよりもがっしりとしていた。

もしかしたらクロリスは、手がゴツゴツしていることにコンプレックスを持っているのかも?

だから一年中手袋をして隠している?

うん、そうとしか考えられない。

「カトリーナ、どうかした?」

「なんでもないわ、クロリス」

彼女の手がゴツかったことは、墓場まで秘密にしよう。

「それならよかった。
 今日はクッキーとカヌレを焼いてきたの、召し上がれ」

「ありがとう、クロリス!」

クロリスの作ってくるお菓子はどれも美味しい。

彼女の作ってくれたアップルパイもパウンドケーキもマドレーヌもクッキーもシュークリームも大好き!!

「はぁ~~~~美味しい。
 疲れが取れるわ~~」

クロリスの作ってくれたカヌレを食べるのは初めてだ。

外はもっちり中はしっとりしていて、ほっぺが落ちそうになるほど美味しい。

カヌレを一口食べただけで、アデルと異母妹に与えられたストレスによる疲労が吹っ飛んでしまった。

「こんなに美味しいお菓子を作れるんですもの、クロリスは引く手あまたね。
 私がクロリスをお嫁にしたいくらいだわ」

私は冗談のつもりで呟いたつもりだった。

「……いいよ」

「えっ?」

「カトリーナのお嫁さんになら、なってもいいよ」

クロリスに手を掴まれ、真っ直ぐに見つめられた。

相手が同性だとわかっていても、美少女に見つめられると照れてしまう。

「やっ、クロリス……!
 い、今のは冗談だから!」

私はクロリスに掴まれた手を振りほどいた。

「わかってるわ。
 わたしくしも冗談で言ったのよ」

クロリスがいたずらっぽくほほ笑む。

「だ、だよね~~!
 やだ、私本気にしちゃった!
 アハハハハ……!」

私は笑って気まずい雰囲気をごまかした。

はぁ~~~~やばかった。

親友に見つめられてときめくなんてどうかしてる!!

きっと疲れが溜まってるせいね!

今日は早めに休まなくては!

「冗談でしか言えないよ。
 今はね……」

少しだけ普段より低い声で発せられたクロリスの言葉は、私の耳には届かなかった。


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