【完結】「ゲスな婚約者と、姉の婚約者に手を出す節操のない妹を切り捨てたら、元クラスメイトの貴公子に溺愛されました」

まほりろ

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6話「モラハラ婚約者と盗み癖のある異母妹が、浮気をしている現場を目撃してしまった!」

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私は頭を抱えながら、アデルが待っているというガゼボに向かった。

しかしそこには「婚約者様をいつまで待たせるんだ!」と怒りちらしている、いつものアデルはいなかった。

アデルは満面の笑みを浮かべ、異母妹と仲睦まじくお茶を飲んでいる。

私はとっさに物陰に隠れ二人の様子を伺った。

私の勘が告げている……異母妹を利用すれば、アデルとの婚約を解消できるかもしれないと。

私は物陰に隠れ、二人の会話に聞き耳を立てた。

「伯爵家に君みたいな可愛い子がいるなんて、今日まで知らなかったよ」

「あたしもお義姉様の婚約者が、こんな素敵な人だなんて知りませんでした。
 アデル様を初めて見たとき、王子様かと勘違いしちゃったくらいです」

「やだなぁ、そんなにストレートに褒められたら照れるよ。
 それにしてもどうして僕は今まで、君を見たことがなかったんだろう?
 カトリーナの口からも、妹がいるなんて聞いたことないし……」

「前妻とお義姉様に意地悪されて、あたしとお母様は市井での暮らしを強要されたんです」

「それはさぞ辛かっただろう!」

「でも先の奥様が亡くなって、お母様がお父様と再婚したので、堂々とこのお屋敷で暮らせるようになりました。
 今身に着けているドレスとアクセサリーも、お父様に買って貰った物なんですよ」

「君のその桃色の髪と瞳に、そのレモンイエローのドレスはよく似合っているよ」

「うふふ、嬉しいです。
 偶然ですがこのドレス、アデル様の瞳の色と同じですね」

「君みたいな愛らしい子に、僕の瞳の色のドレスを着てもらえて嬉しいよ」

異母妹が今着ているドレスは、使用人が間違えて注文して一度も着なかったドレスだ。

婚約者の髪や瞳の色のドレスをまとうのは、「私はあなたのもの」という意味がある。

アデルの瞳の色のドレスなんて気持ち悪くて着れない。

切り刻んでハンカチにして、教会に寄付しようと思ってクローゼットの奥にしまっておいたのだ。

あれだけは異母妹に盗まれても、一ミリも惜しいと思わなかった。

「でもお義姉様ったら酷いんですよ。
 あたしがお父様から買って貰ったドレスを、『自分の物だから返せ!』って言ってあたしを泥棒扱いしたんです!」

「それは酷いな!
 カトリーナの奴、地味で不細工なだけじゃなく心まで醜かったのか!」

「アデル様はあたしの為に怒ってくださるんですか?」

「もちろんだ! 
 君みたいな可愛い女の子に意地悪するなんて許せない!
 今度会ったら僕がカトリーナをとっちめてやるよ!」

「嬉しいわ! アデル様!」

「ああ、地味なカトリーナではなく、君のような清楚で可憐な子が僕の婚約者だったらよかったのに……!」

「あたしも伯爵であるお父様の血を引いています!
 お義姉様の代わりに、あたしがアデル様の婚約者になってあげる!」

「そうもいかないんだ。
 カトリーナと僕の婚約は亡き祖父が決めたものだからね。
 両親がカトリーナとの婚約の解消に応じてくれないんだ」

「可哀想なアデル様、愛してもいないお義姉様と結婚しなくてはいけないなんて……!」

「僕の為に泣いてくれるのかい?
 ミランダはなんて優しい子なんだ!
 わかった!
 カトリーナとの婚約を解消して、君と婚約できるように努力してみるよ!」

「嬉しいわ! アデル様!」

「だが直ぐには難しい。
 何故か僕の両親はカトリーナのことを気に入っているからね。
 簡単には奴との婚約を解消できない」

「ならどうすればいいの?」

「君はカトリーナにされた酷い仕打ちをノートに書き留めるんだ。
 泥棒の濡れ衣を着せられたとかね。
 ノートがいっぱいになるまで、カトリーナの悪事を書き溜めたら、僕の両親に見せよう。
 両親だって、ノートいっぱいに書き溜められたカトリーナの悪事を見せられたら、カトリーナに対する見方が変わるよ」

「ノートいっぱいにお義姉様の悪事を書き込む……時間がかかりそうだわ」

「心配いらないよ。
 カトリーナは嫌な女だからね。
 奴の悪事なんて直ぐにノートいっぱい集まるさ」

「そうね」

「その間は秘密の恋人関係を楽しもう」

「秘密の恋人関係……なんだかロマンチック」

「まずは二人で庭園を散策しよう」

「素敵ね」

二人は手を繋ぎながら、ガゼボを去っていった。

伯爵家で堂々と手を繋いでおいて、どこが秘密の関係なのかしら?

二人の会話は突っ込みたいところだらけだったが、ひとまず置いておこう。

アデルとミランダが恋に落ち、子爵夫妻に内緒で浮気をする。

私にとってはアデルとの婚約を解消する、またとない口実ができた。

しかもアデルの浮気ならアデルの有責で婚約解消、いや婚約破棄ができる。

子爵家から今までの精神的苦痛に対する慰謝料をふんだくる、またとない機会だわ!

父と父の愛人と異母妹の三人を死の荒野や、灼熱の砂漠に捨ててこなくても済みそうだ。

さっそくアデルの浮気を子爵夫妻に報告を……。

いやだめよ! 早すぎるわ!

手を繋いだくらいでは、浮気の証拠としては弱すぎる!

また子爵夫妻に「アデルはカロリーナの妹と仲良くしようとしただけよ」「カトリーナがアデルを愛しているのはわかるが嫉妬は良くないな」とのらりくらりと躱されてしまう。

アデルとミランダの浮気の決定的な証拠、つまりは二人が肉体関係を結んだ証拠を押さえなくては!

キスなんてぬるいものではなく、二人がホテルでイチャイチャした証拠を押さえるのよ!

それまでは二人を泳がせておくわ!

二人が肉体関係を結んだら、その証拠をしっかり押さえてアデルの有責で婚約を破棄して、子爵家からがっつり慰謝料をふんだくってやる!

それまではミランダのノートがいっぱいにならないように、大人しくしておきましょう。



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