5 / 21
5話「愚かな父」
しおりを挟む父は伯爵家の金を自由に使えると思っていたが、母が生きていたときと変わらずお小遣い制なのに憤慨。
仕事もせずに愛人を連れ込んだろくでなしなど、今すぐ追い出してもよいところだ。
むしろろくでなしの父に、住むところと食べ物を提供し、お小遣いまで上げている私の心の広さに感謝してほしいくらいだ。
異母妹は父にドレスを買ってもらえないとわかると、私の留守中に部屋に入り込み、ドレスやアクセサリーを盗んでいった。
しかもあろうことか「お義姉様いいでしょう? これお父様に買ってもらったのよ」と私に自慢してきた。
私は「私の部屋から盗んだのね、返しなさい」と異母妹を責めた。
すると異母妹は、
「お父様に買っていただいたものを取り上げようとするなんてお義姉様ひどいわ!
あたしがお義姉様よりお父様から愛されているから、嫉妬しているのね!
だからあたしのドレスやアクセサリーを取りあげた上に、あたしを泥棒扱いするのね!」と泣き出した。
そこに父の愛人も加わり母娘でギャーギャー喚き立てられ、私のストレスはマックス。
それでも私は父の愛人と異母妹に、
「父は伯爵家の当主ではなく婿養子です。
前当主である母が亡くなった今、父は伯爵家の居候に過ぎません。
伯爵家の居候にすぎない父に、高価なドレスやアクセサリーを買えるお金などありません」
と根気よく何度も説明した。
しかし二人には最後まで理解して貰えなかった。
二時間ほど説明したあと、私は「こいつらはまともではない、説明するだけ無駄だ」という結論に達した。
その数日後。
思ったより贅沢な暮らしができないと知った父と愛人が、伯爵家の調度品を持ち出して売り始めたので、私は貴重品を持って離れに引っ越した。
そして離れの警備を厳重にし、そこで執務をこなすことにした。
本邸にあるのはイミテーションばかり。それらを売ったところで、大したお金にはならないだろう。
しかし泥棒は泥棒なので、彼らが何を持ち出し何を売ったのか、監視をつけてしっかりと記録に残させた。
証拠も揃ったし、この泥棒たちをいつ役所に突き出してやろうか?
しかし、血縁から泥棒がでるなど家名の恥だ。ここは内々に済ませ、三人まとめて荒野か砂漠に捨ててきた方が良いだろうか?
私がどちらがいいか思案していたとき……。
使用人が先触れもなしにアデルがやってきたと告げた。
アデルは月に一回のお茶会はすっぽかすくせに、こうして思いつきで先触れもなしに訪ねて来ることがあった。
そういうときのアデルの態度は「先触れもなしに急に訪ねてきてすまない」なんて殊勝なものではなく、
「婚約者様が会いに来てやったんだ! 手厚くもてなせ!」という横柄なものだった。
アデルは本当に自分を何様だと思っているのだろうか?
元々悪かった態度が、前当主である母が亡くなってからますます悪くなった。
それはつまり現当主である私が、アデルにも子爵夫妻にも舐められているということだ! 悔しい!
もっとも、アデルが私が伯爵家の現当主だと理解しているか怪しいが。
アデルのことだから婿養子の父が伯爵で母は伯爵夫人、伯爵家の一人娘である私と結婚したら自分が次の伯爵になれる……と勘違いしたままな可能性もある。
子爵夫妻は「アデルにはよく言って聞かせますから」「己の立場を理解させますから」と言っていたが、あの夫妻の言葉はあてにならない。
私が「お茶会をすっぽかさないようアデル様に言ってください」「先触れもなく急に訪ねて来られては困ります」と子爵夫妻に苦情を言ったときも、
子爵夫妻は「アデルにはきちんと説明しておきますから」と言っていたのだ。
それなのにアデルはこうして先触れもなく伯爵家を訪れている。
これが、私が子爵夫妻の言葉を信用出来ない理由だ。
こっちは貴族の娘としてのマナーの勉強に、伯爵としての勉強と領地経営で忙しいのだ。
来年は学園に入学するから、そのための準備もある。
父と父の愛人と異母妹のことだけでも頭が痛いのに、この上モラハラな婚約者まで加わったらたまらない!
120
お気に入りに追加
1,840
あなたにおすすめの小説
【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語
【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。
凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた--
「私はシファナと共にありたい。」
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
(私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。)
妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。
しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。
そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。
それとは逆に、妹は--
※全11話構成です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。
そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。
木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。
彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。
スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。
婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。
父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
【本編完結】はい、かしこまりました。婚約破棄了承いたします。
はゆりか
恋愛
「お前との婚約は破棄させもらう」
「破棄…ですか?マルク様が望んだ婚約だったと思いますが?」
「お前のその人形の様な態度は懲り懲りだ。俺は真実の愛に目覚めたのだ。だからこの婚約は無かったことにする」
「ああ…なるほど。わかりました」
皆が賑わう昼食時の学食。
私、カロリーナ・ミスドナはこの国の第2王子で婚約者のマルク様から婚約破棄を言い渡された。
マルク様は自分のやっている事に酔っているみたいですが、貴方がこれから経験する未来は地獄ですよ。
全くこの人は…
全て仕組まれた事だと知らずに幸せものですね。
【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~
キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。
事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。
イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる
どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。
当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。
どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。
そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。
報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。
こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる